第10話 怒られる勇者 【side:ゴーヨック】


 俺たちは魔力封じの腕輪を装備させられ、城へと連行された。

 兵士たちに乱暴に引きずられて、身体はボロボロだ。


「はぁ……まったく、君のような男が今代の勇者だなんてな……頭が痛いよ」


 偉そうに椅子に座った王様が、俺を見て大きなため息をついた。

 ムカつく野郎だぜ。

 俺は勇者だから、王様よりも重要な存在なんだぞ?


「ゴーヨック……君は自分がしたことを、わかっているのか?」

「は? 俺は俺のやりたいようにやるだけだが?」

「それでは困るのだよ……君はもっと勇者として自覚してほしい」


 俺は勇者として、これ以上ないほど自覚しているつもりだ。

 だからこそ、世界のために物資を頂戴してやったのだ。


「俺は勇者だぞ? 一般人が俺に逆らうほうが悪いんじゃないのか?」

「はぁ……私はもはや君を勇者とは思わないよ……」


 王様は、俺のことを心底見下した目で見てくる。

 こいつら散々俺のことを持ち上げていたくせに……。

 手のひら返しが早すぎる!


「いいかいゴーヨック。大きな力には大きな責任が不随するものだよ? そしてその力が大きければ大きいほど、力に溺れたときに、浮き上がるのが難しくなる……。私は王として生きてきて、そのことを嫌というほど理解した。だからこその忠告だ」


 王様は知ったような口ぶりで、俺を見透かしたように言う。

 そういう態度がムカつくんだ……!

 まるであの、シンのやろうみたいに……!

 

「俺はアンタなんかとは一線を画す男だぜ? 勇者になるべくしてなった男だ。そんな力に溺れるようなタマじゃない」

「そうかな? 私にはもうすでに、君は溺れて自分の力じゃ浮き上がれなくなっているように見えるがね……」


 ふん……わからずやめ。

 魔王がいよいよ本気を出して来たら、俺に頼ることしかできない無能のくせにな。

 俺はいずれ魔王を滅ぼす男だ。

 神からそう任命されたのだ。

 そのときになって、後悔するがいい……!


「おいおい、俺を勇者に任命したのはあんたら国のほうだぜ? それなのに、俺に好き勝手されたら困るのかよ?」


 すると王の横に立っていた神官が口を開いた。


「…………たしかに、私はあなたを勇者に任命しました。それは神からの命だったからです。ですが、それと国民の感情とは別です。あなたがこのまま好き勝手振舞っていたら、いずれ誰もがあなたを信用しなくなるでしょう」

「だからどうしたというんだ?」

「来たるべき魔王との決戦のとき、そのときになって、皆が一つになれないと困るのです」

「俺は勇者だから一人でも戦える!」


 歴代の勇者がどうだったかは知らないが、俺はそもそもパーティーのエースリーダー級でもあったんだ。

 そこに勇者固有の力が加われば、敵なしだ!


「あなたは何かにとりつかれているようだ……。コンプレックス……か、それとも……。なにか物凄い憎しみを背負っている」


 神官はまた、見透かしたように俺を決め付ける。

 俺にコンプレックスだと?

 そんなもの、あるわけがない。


「あなたが勇者であることを理由に、今回のことは現在、数人のものしか知りません。ですが……ことをおおやけにすれば、あなたは犯罪者ですよ? なのでどうか、大人しくしておいてくれませんか? 魔王との決戦が始まるまで……」

「クソ……!」


 俺を脅そうというわけか。

 いい度胸してやがる。


「ここにお金を用意しました。あなたはこれが欲しかったのでしょう? 正直に言ってくれれば、金銭の支援くらいしましたのに……」

「ふん……俺は勇者だぞ? そんな乞食みたいなこと言えるかよ」


 だが、この金はありがたくもらっておくとしよう。

 くれるというものを断る理由はない。


「正直今のあなたは、大きすぎる力を手に入れて暴走しているようにしかみえない。あなたは勇者の器ではないように思える」

「は? うるせえよ。何が言いたい?」


 俺は神官の言いようにムカついて、ガンを飛ばす。


「あなたの力だけは、頼りなのですから……しっかりしてもらいたいのです、勇者殿」

「ふん……。だったらせいぜい、俺のことを邪魔しないでくれよな」


 その後、俺たちの拘束が解かれた。


「あなたが勇者であることに免じて、今回は見逃します。お金も渡したので、今後は大人しくしておいてください」

「ああ、わかったよ……っち」


 まるで首輪をつけられたようだ。

 勇者というからもっと自由な冒険を楽しめるかと思っていたが……。

 これじゃあスポンサーとその広告塔みたいなもんだ。

 これだったら勇者なんかに選ばれず、普通に活動していたほうが楽しかったかもしれない。


 それにしても――あなたの力だけは、頼りなのですから。

 だとさ……。


 俺に求められているのは、俺の勇者の力だけなのか?

 アカネにマーリー……こいつらが俺について来てくれるのも、俺が勇者だからなのか?

 そう考えると、途端にむなしくなってくる。


 結局みんな、俺のことなんてどうでもいいんだな……!

 だったら俺も、勇者の使命なんかしらねえ!

 この力を利用して!好きに生きてやるぜ!


「ゴーヨック……お金もらったんだし、はやくホテルにいきましょう?」


 アカネがそう言いながら、俺に腕を絡ませてくる。


「うるせえよ。俺は今そういう気分じゃないんだ」

「あ、ちょっと……!」


 俺は女二人を置き去りに、速足で先を行く。

 ついてくるなら勝手についてこい……。

 俺は、自由に生きるんだ!




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名前 ゴーヨック・ハツメルス

職業 戦士(タンク)

男 16歳


レベル  50

体力   3251

魔力   1855

攻撃力  3310

防御力  3152

魔法攻撃 1213

魔法耐性 2787

敏捷   2113

運    2781

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