第9話 スポーンコア


 壁トラップをアンロックしたことで、さらに安全にダンジョンを進みやすくなった。

 壁トラップで死角を作りながら、ダミートラップを駆使することで、俺はモンスターに見つからずにダンジョンを進む。

 まるでお城に忍び込んだ盗賊のように、俺はステルスでダンジョンを進んでいく。

 壁トラップで死角を作っては、掘削トラップで壁に穴を開け、ショートカット。

 俺はモンスターと一切戦闘することなく、どんどんダンジョンを進んでいく。


 しばらくダンジョンを進んで、隅々まで探索し、

 そして俺はついに――。

 スポーンコアを発見する。


「あった……! スポーンコアだ!」


 スポーンコアとは、モンスターを生成するコアのことだ。

 ダンジョンコアとはまた別で、ダンジョンコアの子供のようなもの。

 スポーンコアからは、定期的に新しいモンスターが生み出される。

 スポーンコアのあるエリアは、モンスターハウスなどと呼ばれていて、ダンジョンを埋め尽くすほどのモンスターがいる。

 モンスターハウスを攻略するには、このスポーンコアを止めなければ終わらないというわけだ。


 俺はこのスポーンコアを見つけるために、ダンジョンに入ったのだった。

 このスポーンコアを利用して、とんでもないことをやろうと考えついたのだ。


「まずはこのスポーンコアを制圧しなきゃな」


 スポーンコアを利用するためには、まずそれを制圧して自分のものにしなければならない。

 スポーンコアの裏側にあるスイッチを押し、スポーンコアをオフにしないと、モンスターが出てきてしまうからな。

 俺は壁トラップとダミートラップを使って、なんとかスポーンコアの裏側に回り込む。

 スポーンコアからは、今もモンスターが新たに生み出され続けていた。

 もしここでモンスターに見つかったら、大量のモンスターに囲まれてジエンドだ。


「よし、これでスポーンコアをオフに……っと」


 俺はスポーンコアの装置を切った。

 その瞬間、エリア内にいたモンスターたちが一斉に消滅する。

 スポーンコアを制圧すると、モンスターハウスを攻略したことになるのだ。

 スポーンコアとモンスターはリンクしていて、こうしてスイッチをオフにすることで、モンスターも消滅する。


「ふぅ……制圧完了、これでスポーンコアを有効活用できるな」


 俺はスポーンコアをアイテムボックスにしまった。

 スポーンコアは、普通持って帰って売ったりする。

 スポーンコアの素材は特別な魔法鉱石でできているので、かなり高い価値がつくのだ。

 もしくは、俺みたいになにかに有効活用することもできるな。

 モンスターといつでも戦えるようにして、修行に使ったりする者もいる。

 まあ、俺はあいにくそんなマッチョなことはやらないが。


「さて、目的は達成したから、一度街に戻るか」


 俺はダンジョンを抜け出した。





 スポーンコアを手に入れて、俺は冒険者ギルドに向かった。

 最寄りの街、カルカッソまでやってきた。

 カルカッソには、いつも使っている大き目の冒険者ギルドがある。

 冒険者ギルドにやってきたのは、わけがある。


 スポーンコアは、悪用しようと思えば、いくらでも可能な、危険な代物だ。

 モンスターを好きな場所に大量発生できる装置だからな。

 そんな危険なものであるスポーンコアは、所持するのに特別な許可がいる。

 スポーンコアを手に入れたら、まず冒険者ギルドにいって、スポーンコアを登録しなきゃいけないのだ。

 そうすることで、スポーンコアの悪用を防いでいる。


「スポーンコアの登録申請に来ました」

「あ、シンさんラピ。お久しぶりラピ」


 俺はなじみの受付嬢さんに話しかける。

 受付嬢のラピナちゃんだ。

 ラピナちゃんは受付嬢でありながら、男たちからアイドル的な人気がある。

 冒険者ギルド内で、定期的にコンサートなんかも開いていて、大人気だ。

 その人気の秘訣は、その大きなお胸にあると、俺は考えている。


「今日はお一人ラピか? ゴーヨックさんたちはどうしたんラピか?」

「ああ、それが……俺はパーティを追放されたんです」


 俺は受付嬢さんに、正直にことの経緯を話した。

 ラピナちゃんにはいつも俺たちのパーティ【強欲の剣】がいつもお世話になっていた。

 俺が追放されたことを話すと、ラピナちゃんは目を丸くして驚いた。


「えぇえぇっ……!?!?! し、シンさんを追放したんラピか……!?!?!? う、嘘でしょう……!?」

「え、そうですけど……」

「【強欲の剣】の皆さんはいったいなにを考えているんラピね!? シンさんがいなかったら、パーティは回らないっていうのに……」

「そうですよねぇ……まあ……でも、俺はそんな大層なもんじゃないですよ。なんだかんだで、俺がいなくてもなんとかなるんじゃないですかね」


 ラピナちゃんは、ちゃんと俺がパーティでどのくらい活躍していたかを理解してくれているようだ。

 ゴーヨックたちにはいくら言っても理解してもらえなかったけどな。

 それにしても、ラピナちゃんは俺を過大評価している気もする。

 ゴーヨックたちだって、あれでも一応大人なんだ。

 別に俺がいなくても、それなりにやれるだろう。


「シンさんの罠があるからこそ、雑魚で馬鹿なゴーヨックさんでも活躍できていたというのに……。シンさんがいなくなったら、ゴーヨックさんはただの雑魚で馬鹿な無能になるじゃないラピか……」

「はは……そこまで言いますか……」

「だって、シンさんがいなかったら、あの人たちきっとなんにもできないラピよ? 困って、きっと犯罪にでも走るくらいしかできないんじゃないラピかね」

「まあ、そうかもしれませんねぇ」


 やはりラピナちゃんの目から見ても、ゴーヨックはかなりアレなようだ。

 ラピナちゃんは俺の罠をちゃんと評価してくれていて、ありがたい。

 やはり、見る目のある人はちゃんと見てくれているものなんだな。


「これからどうするんラピか? 他のパーティに入ったりするんラピか? きっとシンさんほどの有能な人材なら、どこでも引く手あまたラピよ」

「いや、俺はしばらくはソロでやりますよ。事情がありましてね」

「そうなんラピね。まあ、シンさんならきっとソロでも上手く行くラピよ! 最強のソロ冒険者になって、ゴーヨックさんたちをぎゃふんと言わせちゃってくださいラピ!」

「はは、がんばります」


 俺はそんな世間話をして、スポーンコアの登録を済ませた。

 これで、俺は自由にスポーンコアを利用できる。もちろん、人の迷惑にならない範囲で、だ。


「とりあえずは、シンさんはパーティを抜けて、自由になったんラピよね。勇者だとかのしがらみもなく」

「ええ、まあそうですね。正直、勇者パーティだのなんだのは面倒だったので、俺はせいせいしてますよ」

「じゃあ、またなにかお仕事とかあったら、シンさんにお願いしてもいいラピか? きっと、シンさんの罠はいろんなところで必要とされますラピから」

「ええ、いつでも、頼ってください」


 ラピナちゃんはいい人だなやっぱり。

 俺に仕事まで振ってくれるとは。

 罠を買うために、また金が必要になるだろうから、仕事はいくらあってもいい。

 それから、ギルドを去ろうとすると、ラピナちゃんに呼び止められた。


「あの……シンさん、最後に、いいラピか?」

「なんでしょう?」

「その、この後、お食事でもどうラピか?」

「え……? お、俺とですか……?」

「いつもパーティの皆さんと一緒だったから、誘いにくかったんラピけど、正直、私シンさんのこと気になってたんラピ。ちょうど今日はお一人なので、よかったら……」

「も、もちろんです……!」


 なんと、俺は幸運にも、ラピナちゃんとのデートに誘われた。

 俺は二つ返事でOKした。

 今日は、なんて幸運なんだ。




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名前 シン・ラトップ

職業 罠師(サポート)

男 16歳


レベル  13

体力   398

魔力   284

攻撃力  63

防御力  65

魔法攻撃 71

魔法耐性 67

敏捷   73

運    81


スキル一覧

・針山トラップ

・トラバサミトラップ

・経験値貯蓄トラップ

・掘削トラップ

・トラップドア

・毒餌トラップ

・スライム床 

・ダミートラップ

・壁トラップ

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