第4話 レベル上げ

 

 経験値貯蓄トラップ――それはものすごい可能性を秘めたチートアイテムかもしれない。

 罠師は、なかなか経験値が溜まらない職業だ。

 その理由として、罠でモンスターを倒しても、本人には経験値が入らないのだ。

 だから、罠師がレベルアップしようと思ったら、味方との連携や強力が必須になる。

 まあもちろん、ゴーヨックたちが俺に協力などするはずもなく……。


 だが、この経験値貯蓄トラップは、どういうわけか、俺でも経験値が得られた。

 この経験値貯蓄トラップを使えば、俺でもソロでレベル上げができるのかもしれない。

 ただ、その仕組みはまだよくわからないままだ。

 これはいくつか検証が必要だな。


 ということで、俺は朝起きて、当たりを散策する。

 すると、昨夜仕掛けたトラップが、いくつか発動していることがわかった。

 トラバサミトラップに、ネズミモンスターのナイトメアラットが引っ掛かって死んでいる。

 針山トラップには、ウサギモンスターのラビリンスラビットが引っ掛かって死んでいた。

 その死んでいたモンスターの経験値を合算すると、ちょうど1329になる。

 朝経験値貯蓄トラップに溜まっていた経験値と、同じだ。


「ってことは、このトラップで死んだモンスターの経験値が、経験値貯蓄トラップに記録されてたってことなのか」


 つまり、経験値貯蓄トラップは、周囲で死んだモンスターの経験値を、集めてくれるものらしい。

 普通であれば、罠でモンスターを倒しても、経験値は得られない。

 だけど、この経験値貯蓄トラップと他の罠を合わせれば、罠だけで経験値が得られるってことだ!

 これはすごいぞ……!

 これさえあれば、罠をつかったレベル上げができる!


「ふふ……これなら、俺でもソロでレベル上げできるじゃん!」


 俺にも、希望が見えてきたな。

 どうやら経験値貯蓄トラップは、周囲で死んだモンスターの経験値を吸収してためてくれるもののようだ。

 俺は、そう結論づけた。

 まてよ……ってことは……。


「ってことは……他のパーティから経験値を横取りできるんじゃないか?」

 

 俺はそう考えた。

 周囲のモンスターの経験値を、吸収して集めるのなら、なにも自分で罠で倒さなくてもいい。

 他のパーティに寄生すれば、経験値を集め放題なんじゃないか……?

 ちょっとずるい手だけど、試さないわけにはいかない。


 ということで、俺は街に戻ってパーティを組もうと考えた。

 だがしかし、俺のその考えは失敗に終わる。

 なんと、パーティを組むと、ソロ専用スキルツリーの罠は使えなくなってしまうみたいだった。

 つまり、経験値貯蓄トラップが使えない。

 これは文字通りソロでしか使えない、専用罠のようだ。


「やっぱりそう上手くはいかないかぁ……」


 それから、パーティに寄生しようにも、後ろからついていくわけにもいかない。

 経験値トラップの範囲はかなり狭いし、どう考えても怪しまれる……。

 経験値貯蓄トラップを使うには、やっぱり自分で罠を仕掛けて組み合わせるのが一番のようだ。

 だが問題は、なんの罠と組み合わせるかだな。


 トラバサミトラップと針山トラップじゃ、運にかなり左右されてしまう。

 もっと効率のいい稼ぎ方はないだろうか。

 

 それに、このまま野営するのは危険だ。

 この心もとない罠のまま野営するには、このあたりの雑魚モンスターしか出ないエリアじゃないととてもじゃないが危険すぎる。

 もっとレベル上げするには、もっと危険なモンスターも狩らなくちゃいけない。

 まずは安全を確保しなきゃだ。


「そうだ、ちょうどレベルも6に上がったことだし、せっかくだから新しいトラップを見てみるか」


 俺はまた、スキルツリーを開いた。

 さっき罠に引っ掛かってたモンスターの死骸から、ジェムも少しは手に入ったしな。

 ジェムというのは、モンスターが死ぬと落とすアイテムだ。

 俺はさっき街に寄ったついでに、ジェムを換金しておいた。

 少ないが、少しは罠を買う足しにはなる。

 

 俺に現在使える罠は、針山トラップ、トラバサミトラップ、経験値貯蓄トラップの3つだ。

 ここに新しい罠を組み合わせて、経験値稼ぎに効率のいい方法を考えよう。


 

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掘削トラップ 5SPスキルポイント

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「掘削トラップか……これなんか面白そうだな、よし!」


 掘削トラップというのは、文字通り、山や壁に穴を開けるもののようだ。

 ダンジョンの形を自在に変えたり、洞穴を作ったりができる。落とし穴にも使えるかもな。

 俺はこれを見て、ある作戦を思いついたのだった。


「それから、これも必要だな」


 

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トラップドア 3SPスキルポイント

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 俺はその二つのトラップを新たにアンロックし、それをいくつか購入した。

 そして経験値稼ぎのために、ある程度強いモンスターが出るエリアまで移動する。

 正直、この辺のモンスターに襲われたらひとたまりもない。

 モンスターが蠢く危険な夜になる前に、罠を整えよう。

 

 まずは掘削トラップで、壁に穴を開ける。

 人一人が入れるくらいの穴になれば十分だ。

 そしてそこに、トラップドアを設置する。

 トラップドアは、単純に言えばドアだ。

 スイッチでの遠隔操作で開け閉めができて、落とし穴のギミックにも使える。

 今回はそのトラップドアを、普通にドアとして使う。


「よし、これで完成だ!」


 俺の洞窟住居が完成した。

 ただの洞穴に、扉を付けただけだ。

 だが、これは案外完璧な要塞だ。

 周りが壁だから、襲われる心配もない。

 入口はドアの部分だけ。

 俺は今晩、ここで寝るつもりだ。


「そして、トラップドアの周りに、トラバサミトラップと針山トラップをこれでもかと設置だ!」


 モンスターが俺を襲おうと思ったら、トラップドアを破らなければならない。

 だが、その周りにはたくさんの罠が仕掛けられているというわけだ。

 つまり、俺は自分自身を餌にして、モンスターを釣ろうというわけだ。

 あとは経験値貯蓄トラップも置いて、これで完璧だ!


 夜になり、俺は壁に埋もれるようにして、就寝した。

 朝になって生きてることを祈ろう。



 ◆



「おっしゃああああああ!!!!」


 そして朝。

 俺がトラップドアを開け、外に出ると――。

 そこには、罠に引っ掛かって死んでいるモンスターが大量にいた。


「おおおおおお! これで経験値ゲットだぜ……!」


 俺の作戦通り、ちゃんとモンスターは罠に引っ掛かっていた。

 しかも掘削トラップとトラップドアの住居のおかげで、俺は安全に夜を過ごせた。

 これは完璧な罠装置構成だな……!

 我ながら、ナイスな思い付きだ。


「さてさて、肝心の経験値貯蓄トラップのほうはっと……」


 経験値貯蓄トラップを確認すると、そこには37820もの経験値が溜まっていた。


「シンはレベル6から8にレベルアップしました!」


 そんなアナウンスが流れる。


「やったぁあああああ!!!! またレベルアップだ!」


 誰だよ、罠師がソロでレベル上げ不可能とか言ったやつは。

 この調子で、どんどん強くなっていこう……!


 

 ◆

 


 そういえば、ゴーヨックたち、俺の罠がなくて大丈夫なんだろうか。

 俺の罠がなければ、モンスターたちは後ろから近づき放題だ。

 俺の罠があったおかげで、これまでモンスターたちに牽制し、動きを封じていた。

 罠がなければ、モンスターたちは自由に動けるし、果敢に向かってくるだろう。

 罠を恐れ、モンスターたちは攻撃をためらったりして、そのおかげでこっちも攻撃の隙ができていた。

 だが、罠がなければ、モンスターたちも攻撃し放題だ。


 それに、夜野宿するときは、どうするつもりだろうか。

 俺の罠がなければ、寝ている間にモンスターに襲われたりして、大変なことになるだろう。


「ま、俺が心配することじゃないか……」


 俺はもうあのパーティを追放されたのだ。

 心配してやる義理はない。




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名前 シン・ラトップ

職業 罠師(サポート)

男 16歳


レベル  8

体力   232

魔力   111

攻撃力  39

防御力  41

魔法攻撃 49

魔法耐性 39

敏捷   51

運    61


スキル一覧

・針山トラップ

・トラバサミトラップ

・経験値貯蓄トラップ

・掘削トラップ

・トラップドア

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