第3話 荷物持ちという罠 【side:ゴーヨック】


 俺様の名は、ゴーヨック・ハツメルスだ。

 超最強の冒険者パーティ【強欲の剣】の偉大なるパーティリーダーでもある。

 そして俺は、王様から勇者に選ばれた、超絶エリートでもあるのだ。

 そんな俺は、女魔術師のアカネと、女回復術師のマーリーと共に毎日楽しく冒険している。

 今日、パーティから無能なクソゴミ野郎を追放してやった。


 罠師とかいう、クソの役にも立たねえ職業の奴だ。

 えーっと、名前はなんだったけな。そうだ、シン・ラトップとかいう名前のゴミだったな。

 あんなウンコ野郎、名前を憶えておくような価値もねえなw。

 てなわけで、無能がパーティから抜けてくれたおかげで、俺様は気分がいい。

 男なんて、元々俺のパーティに必要なかったんだ。

 これからは俺様のハーレムパーティで楽しくやっていくぜ。


 シンを追放して、最初の日――。

 俺たちは、いつものように冒険をしていた。

 クソ無能なキメェ罠野郎がいないおかげで、冒険も快適だぜ。

 そう思っていたのだが――。


「さあ、今日はとびきりいい宿を取ろうか。せっかくゴミを追放して、俺様のハーレムパーティになったんだ。今夜は楽しもうぜ」


 俺がそう言うと、アカネが不思議そうな顔でこちらを見た。


「ていうか、そんなお金あったっけ? お金ってたしか、あのクソ男のシンが管理していたでしょ?」

「は……?」

「まさか、追放する前に返してもらってないの?」


 え……?

 なん……だと……?

 そんな馬鹿な。


「ちょっと待て、あいつはなにも持っていなかったぞ?」

「あたりまえでしょ。シンのスキル《アイテムボックス》で異空間にしまってあるんだから……。まさか、理解してなかったの? 嘘でしょ!? パーティリーダーなのに!? これまでずっとそうしてきたのに?」


 あ……?

 なんだか話が妙なことになってきたぞ。

 ちょっと待て、俺はなにかとんでもない見落としをしていたのか?


「ということはアレか? 俺たちの予備の装備も、戦利品も、錬金素材もなにもかもが……シンと共に消え去ったということか……?」

「え……? マジで言ってんの……? まさか、本当に返してもらわずに追放したの? 私はてっきり、荷物は取り返してあるものだと思ってたんだけど……」

「あああああああああああああああ!!!!????」


 俺は道端で叫びだした。

 今までに集めたレアアイテムや、協力な装備品の数々がぁ!

 だが、パーティリーダーである俺がこんなことで取り乱すわけにはいかない。


「ま、まあいいだろう……そんな物くらいくれてやる。俺は有名な冒険者パーティの優秀なリーダーで、勇者様だからな。宿くらい、頼めば無料でなんとでもなるさ」

「そ、そうよね……! 私たちなら、またいくらでもすぐに手に入れられるしね!」

「あ、ああ。そうだぞ! なにも不安に思うことはない。なんていったって、この俺様のパーティなんだからな! それにあのクズゴミを切り捨てたから、これからはもっと上手く行くさ!」


 そして俺たちは、超高級なホテル街へ向かった――。

 この沈んだ気持ちを、ホテルで発散して癒されたいぜ。





 だが――。

 ホテルに行き、無料で泊めるように言うと、あろうことか、ホテルのボーイは俺様にとんでもないことを言い出した。


「その……ゴーヨックさま、さすがにお金がありませんと……」

「は? 俺は有名な冒険者なんだが? 俺に野宿しろと……? 今までにもこのホテルに泊まってやったことあるよなぁ……? なのになんで追い返すんだ? このクソゴミが! 仕事できねえのかよ!」

「で、ですがその……そのような特別扱いは……出来かねます」

「はぁ……?」


 驚いたことにこのホテルの従業員は、この俺を追い返そうとしている。

 

「ですがその……こればかりは決まりですので」


 世間知らずの若造のくせに、この俺様にたてつくとは……。

 どうやらこのホテルは潰れたいらしいな。


「は? お前じゃ話にならないよ。支配人を呼んでくれ」


 数秒待って、支配人らしき男がやってくる。

 こいつはまともな、話のわかる大人だといいが……。


「俺は将来勇者になる男なんだ。この世界を救ってやるというのだぞ? だからタダで泊めてくれるよなぁ?」

「ああそうかい。ぜひこの世界を救ってくれ。だがな、それとうちのホテルが損をしなきゃいけないのと、どう関係があるんだ?」

「……は?」

「別に明日すぐ世界が滅びるわけじゃないんだ。確かに勇者あんたのことは応援しているがね。それとこれとは別だ。世界の命運なんかより、今月の売り上げのほうが、俺にとっては重要な案件ってだけだ。それに、うちは客には困ってないんでね。乞食を泊めたとなっちゃ、うちの格が落ちるってもんだ。それとも未来の勇者様は、乞食に成り下がったっていうのかい?」

「っち……! 話のわからん奴め。このホテルが魔王軍に襲われても、助けてやらないからな」

「ああ、構わんよ。どのみちこの街まで進軍されたら、ただでは済まないだろうさ。そうなる前にアンタら冒険者が止めてくれるんだろう?」

「クソ……!」


 というわけで、俺たちは優秀な冒険者パーティであるにもかかわらず、森の中で野宿する羽目になった。

 しかも、一文無しでだ。

 装備もろくなものがないし、狩をするにも道具がいる。

 また明日からアイテムを集めたり、一からやり直しだ。

 

「すべてはあのシンのせいだ……!」


 俺は腹いせに、そのへんにあった木を殴りつける。


「まあまあ、別にいいじゃないの。明日から取り戻せばさ。私たちが優秀な冒険者パーティであることには変わりないんだし」


 と、アカネが俺を慰める。

 

「……ああ、そうだな。いずれ皆もわかるだろう。俺の価値がいかに高いかがな……!」

 

 

 ◆



 シンを追放したことで、とんだ目にあったゴーヨック。

 だが、これは破滅の序章にすぎなかった。

 シンを追放したことで、彼らはさらなる泥沼にはまっていく――。




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名前 ゴーヨック・ハツメルス

職業 戦士(タンク)

男 16歳


レベル  50

体力   3251

魔力   1855

攻撃力  3310

防御力  3152

魔法攻撃 1213

魔法耐性 2787

敏捷   2113

運    2781

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