第2話 経験値貯蓄トラップ


「はぁ……で、こっから一人でどうすっかな」


 ていうか、ゴーヨックのやつマジで的外れもいいとこだな。

 罠師って、罠で戦う職業だから、そりゃあ金なくて罠買えなかったらレベルなんて上がらねえに決まってんだよなぁ……。

 クソ、なんか俺が悪いみたいに言われるの腹が立ってきたな。

 なんで俺のせいにされるんだ……?

 ま、どうでもいいけど、せっかくだから俺ももう少しレベルを上げてやるか。


 だが、罠師はレベルを上げにくいのも事実だ。

 罠師は攻撃手段をもたない受け身の職業だ。

 ソロでレベル上げなんてできっこない。


 特に罠師は、ソロで活動するには不向きな職だ。

 さすがにこれは、俺も転職したほうがいいだろうか。

 だが、転職に必要なオーブもないんだよなぁ……。

 ソロで罠師とか、きいたこともないぞ。

 そもそも罠師は連携が大事な職なんだ。

 

 まあ一応、スキルツリーでも確認しておくか。

 今後の育成方針を固めよう。


 俺は、ステータスオープンと唱え、スキルツリーの項目を開いた。


 スキルツリーには、様々な罠の種類が並んでいた。

 レベルを上げ、スキルツリーから罠を解放することで、罠師はいろんな罠が使えるのだ。

 だが、俺はレベルがろくに上げられず、金もないので、ろくな罠を持っていない。

 罠はスキルツリーで種類を解放し、さらに金を使って補充する。

 金もレベルもないんじゃ、そりゃあ罠師は活躍できない。


「あれ……? なんだこれは……?」


 スキルツリーを眺めていると、ふと見たことのない項目を見つける。

 今までに、こんな項目あったかな……?

 そこには、こう書かれていた。


【ソロ専用スキルツリー】


 なんだこれは……?

 ソロ専用スキルツリーだって……?

 罠師にこんなスキルツリーがあるなんて、きいたこともない。

 ていうか、ソロとパーティとでスキルツリーが変わる職なんて、きいたことがないぞ。

 これは俺だけのものなのか……?


 そもそも、罠師でソロになることなんて、まずないからな。

 だから、今まで誰にも知られていなかったのかもしれない。

 これは、ソロで罠師をやるための救済措置的ななにかなのだろうか。

 とりあえず、詳しく見てみる必要がありそうだ。


「罠師でソロ用のスキルとかきいたことない……。そもそもソロで罠師をやる人がいないからなぁ……」


 だが……これは試してみる価値があるな。

 俺がそのソロ専用スキルツリーとやらを開くと、そこには見たこともない罠が並んでいた。



===============

◆経験値貯蓄トラップ 1SPスキルポイント

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 ソロ専用スキルツリーの中でも、まず最初に表示されていたのが、経験値貯蓄トラップとやらだ。

 なんだこの罠は……?

 きいたこともないぞ。

 説明には、経験値を貯めるトラップとだけ書かれている。

 ものは試しだな。

 俺はちょうど余っていたスキルポイントを、その経験貯蓄トラップに振ってみることにした。


「これでよし……っと」


 よし、これで経験値貯蓄トラップがアンロックされたぞ。

 試しに、俺は金で、経験値貯蓄トラップを1つ買ってみる。

 罠師は、金を払うことで、アンロックされた中から罠を選んで買うことができるのだ。

 

 ゴーヨックから追放されたときに、俺は荷物をそのまま持ってきた。

 まあ、返せと言われなかったので当然だ。

 パーティの主な荷物は、唯一のアイテムボックス持ちである俺が管理していた。

 だから、罠を買う金も持っていた。


 ちなみに、罠師はたくさんの罠を持っておかなければならない。

 だから、俺のこのアイテムボックスは、罠師の職業ともかなり相性がよかった。

 そういうのもあって、俺は罠師の職を選ばされたんだったっけな。

 まあ、罠師は無能だとか言われて追放されちゃったけど。


「それで……これはどう使うんだ……?」


 経験値貯蓄トラップを眺めてみるが、一向に使い方がわからない。

 買ってはみたはいいものの、これがどういう挙動をするトラップなのか、さっぱりだ。


「ま、いいか。とりあえずその辺に置いておこう」


 もう日も暮れてきた。とりあえず今日はこの辺で野宿だな。

 街に行きたいが、近くの街だと、またゴーヨックたちに出くわす可能性もある。

 ゴーヨックの顔なんか、もう見たくもないからな。

 俺は寝る前に、寝具の周りにトラップを設置する。


 針床のトラップと、トラバサミトラップを、いくつか周りに置いておく。

 こうすることで、寝ている間にモンスターに襲われずに済むというわけだ。

 まあ、この辺はそんなに危険なモンスターも出ないから、この程度で十分だろう。

 俺は経験値貯蓄トラップも横に置いて、寝ることにした。



 ◆



 そして、翌日。


「なんだこれ……?」


 経験値貯蓄トラップに、なにやら数字が表示されている。


「1329……? なんの数字だ? これ……」


 俺はとりあえず、恐る恐るその数字にタップして触れてみる。

 すると――。


「うわ……!?」


 数字が、まるで俺の指から吸い取られるようにして、俺の身体に流れ込む。

 数値がどんどん減っていき、しまいにはゼロになった。

 すると――。


「レベルアップしました! シンは、レベル5から6に進化しました!」


 と、アナウンスが鳴った。

 え……? 今、俺レベルアップしたの……?


「ってことは……さっきの数字は経験値か……!?」


 もしかして、経験値貯蓄トラップってそういうこと……?

 経験値が溜まる……文字通りのトラップだったってことか。

 でもこれっぽちじゃな……。

 なにか経験値がたまる法則とかあるのか?

 もっと効率よくためるにはどうすれば?

 わからない……。

 とにかく、この経験値貯蓄トラップについては、もっと検証が必要だ。

 もしかしたら、ものすごい可能性を秘めたトラップかもしれないぞ……!


 

 ◆

 


 そういえば、ゴーヨックたちは今頃どうしているだろうか。

 返せって言われなかったし、アイテムボックスの中身そのまま持ってきちゃったけど、大丈夫かな。

 まあ、別にあいつらがどうなってもいいか。

 もはや俺の知ったことじゃない。




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名前 シン・ラトップ

職業 罠師(サポート)

男 16歳


レベル  6

体力   172

魔力   84

攻撃力  27

防御力  31

魔法攻撃 39

魔法耐性 28

敏捷   41

運    44


スキル一覧

・針山トラップ

・トラバサミトラップ

・経験値貯蓄トラップ

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