第63話 不調のお二方

「うーん……」

「なんでしょうね?」


 なんだか様子のおかしなルミリアさんとデレアーデさん。


「どうしました?」

「いやな、なんとも力が出ないのじゃ」

「そう。どうにも不調なんだ。おっかしーなー」


 不調と言うルミリアさんとデレアーデさん。

 確かに本契約していることでなんとなく力を把握できるのだが、どうにもか弱くなっている。


「どうしたんですか? 何かありましたか?」

「いいや。普段と先ほどまでは変わらなかったのじゃが、急に力だけ抑え込まれているようでな」

「ルカラくんがプレンズちゃんの力を確かめ出してから力が出なくて」

「そうですか……」


 二人にも心当たりはなさそうだ。もちろん俺もない。


「それじゃあ試しに俺に魔法を撃ってみてくれませんか?」


 これには二人、顔を見合わせてうなずいた。

 まるでこの時を待っていたかのように、二人は両手を伸ばして手をつなぎ、俺をまっすぐ見てきた。


「「カオス・インフェルノ!!」」


 対邪神戦で使うようなレベルの聖属性、魔属性をかけ合わせた魔法。

 今の二人からなら余裕で吸収できるはずだが、やはり少し心臓に悪い。


「……」


 なんとなく身構えてしまってから二人を見つめているが、魔法が放たれ俺へと向かってくる様子はない。

 MPが足りないようだ……?


「え、えっと。それじゃあ、組み手にしましょうか」


 気を取り直して再度構える。

 二人とも軽くストレッチして準備はよさそうだ。


「いいですよ」


 走り出す二人、この時点で様子がおかしかった。

 どうにも動きにキレがない。そして、遅い。


 アカリやプレンズ、ユイシャ、この誰とやるよりも緊張感がない。

 目をつぶっていても避けられるほど能力が落ちているようだ。


 その辺で女の子を捕まえてきてもきっと似たような結果になるだろう。そんなレベル。


「なるほど。わかりました」


 正直、今の二人の能力が把握できても、この現象に関しては全く思い当たる節がない。

 世界がバグって能力がリセットでもされたってんならあり得るのだろうが、それこそゲームと違ってそんなことはないだろうし、そもそもゲームでもそんなことはなかった。


「すまぬ。今のような大事な時期に、このような情けないことになってしまい」

「ごめんね。力になれなくなっちゃって」

「いえ、まだ試していないことがありますから。ちょっと力を貸してください」

「そうか!」

「あたしたちが戦えなくてもルカラくんの力なら!」


 ルカラとしてのユニークスキルを使えば、本来のルミリアさん、デレアーデさんの力を扱えるかもしれない。

 そうなれば、今までと変わらず俺が戦うだけだ。


 俺は瞬時に魔法で作った剣を準備した。

 そして、


「オーラ・エンチャント!」


 剣に二人の力を宿らせようとしたが、スキルは発動しなかった。


「なっ」


 これは、ゲームでは使われなかった邪神のデバフか?

 状態異常は邪神の得意技ではあるが、こんな弱体化は俺も知らない。どういう仕組みかわからない以上、おそらくプレンズでも治せない。


 プレンズを邪神が倒されるより先に治し、プレンズの力を使わせたから呪いの解除がバレたのか。

 それで、すでに聖獣、魔獣が仲間になっていたから、その中でも力の強いルミリアさん、デレアーデさんの力を封じた……。

 ありえそうな話だ。二人とも強力なだけあり、封じ続けるのにも力が必要だろうし、推定あと二発の呪いをここで使ってきたのだろう。

 邪神のダメージを与えるのに必要な存在を封じてきた。ピンポイントなのはそういうことか。代わりに治せないが、きっとこれ以上は無理だという……。


 実際、タロやジローは今も元気そうにしている。四方八方に魔法を放ちながら追いかけっこをしているようで、飛んだり跳ねたりしている姿が見える。どう見てもピンピンしている。


「だいたいの見当はつきました」

「どういうことじゃ?」

「おそらく、これも邪神の仕業です」

「そっか、あたし達が不甲斐ないばっかりに」

「いえ、そうじゃありません。邪神と言えど相手は神です。起こせる奇跡の回数は限られていても、自分たちで防げるものではありません。これは本にも書いていたこと、仕方ないですよ」

「ありがとなのじゃ」

「うん。励ましてもらっちゃった」

「いえいえ」


 だが、戦力は大幅減。

 いくら、人の姿になれるようになったとはいえ、タロとジローの今の実力では、俺の力と合わせて戦っても実力不足の可能性がある。

 先が読めない以上はできることは全てやっておくべきだ。

 これは、しっかり魔王討伐後の解放される施設を使っていくしかないな。


「プレンズ! ちょっと来てくれ」

「は、はい! 何なりとお申し付けください」


 わざわざ走ってきてもらって悪いが、今プレンズに頼みたいことは、プレンズに頼んでもらうことだ。


「プレンズ頼みたいことがある」

「な、なんですか?」


 何かを待つように見上げてくるプレンズ。

 難しいことではないが、王様から直接いいと言われたわけじゃないから、俺が使えるかはわからない。


「国王陛下に頼んでほしいんだが」

「お父様でしたら、ワタクシが頼めば大丈夫だと思いますが、何を頼むのですか?」




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「ピンチの美少女に憑依して勝手にバズらせていたら助けた美少女に住所特定されたんだが」

https://kakuyomu.jp/works/16817330666934961959


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破滅不可避の悪役獣使いに転生したが肉塊になりたくないので聖獣娘、魔獣娘に媚びを売る〜怪我してるところを手当てして嫌われないようにしていただけなのになぜか逆に聖獣、魔獣の長たちになつかれている件〜 川野マグロ(マグローK) @magurok

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