これが最後の物語

 僕はもう間もなく消えるようだ。

 僕は魂の状態であの事故現場に浮かんでいるのだと思い込んでいたけれど、それはどうやら間違いだったみたいだ。

 僕は神宮寺カノンの心臓になり、彼女の体に溶け込んだ。僕の意識の断片のようなものが彼女の意識の奥底で繋がり、それが事故現場の夢という形で具現化されていたのだ。

 僕は彼女の夢の中で、彼女と会話をしていたのだ。


 不確かなことはいくつもあるが、それらは大して問題ではないだろう。これは推理小説ではない。物語ではなかったのだ。深く考えても答えは出せない。知らないことは分からないのだ。そもそも僕の愛読書のライトノベルにこんな展開は一つもなかった。


 死んだらみんなすぐに異世界転生するもんだって思い込んでいたけれど、どうやら現実は違うらしい。


 四十九日、七回目の審判の日。

 どうやら僕は今までの審判を欠席し続けたようだ。


 僕は何度も嘘をついたし、良い人にはなれなかったと思う。

 ライトノベルで読んだ異世界転生なんてものはどこにも待ってくれないだろう。


 六道のどこに飛ばされるかは分からない。そもそもその存在すら知らなかったのだ。


 僕はただ受け入れることしか出来ない。



 願わくば神宮寺カノンとまた巡り会いたい。

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主人公じゃないっ!? 奇跡いのる @akiko_f

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