がらくた……
奈那美
第1話
「また、そんながらくた拾ってきて!」
ママの金切り声が聞こえる。
また、パパが海岸で何か拾ってきたらしい。
木切れだったり、石ころだったり。
ガラス瓶のかけらを拾ってきたことも あった。
そういう【漂着物】を拾ってくるのがパパの趣味らしいけど。
今日は、なにを拾ってきたんだろう??
私は部屋を出てガレージにむかった。
うちのガレージは結構広めに作ってある。
パパの通勤用の普通車とママの通勤用の軽自動車と私の通学用の自転車を置いてもまだスペースが空いている。
そのスペースをパーテーションで区切って、パパの趣味の部屋に改造してある。
作業台と金属製のラックとがおいてあって、ラックには拾ってきたものや何に使うのかよくわからない道具が置いてある。
「パパ?またママ怒ってたけど、今日は何を拾ってきたの?」
「うん?今日はこれ」
そう言って見せてくれたものは、壊れた釣り竿と破れた網。
あと、なんだかわからないプラスチックの破片。
これは、ママじゃなくても「がらくた」って言っちゃうよ。
「ねえ、パパ。こんなの拾ってきてどうするの?これって海岸に落ちてたゴミだよね?」
「お前には、ゴミに見えるのか?」
「だって、壊れてるじゃない」
「そうだなあ。どう言ったらいいんだか」
パパはしばらく考えて、スマホを取りだして何やら操作していた。
しばらくしてある画面を私に見せてくれた。
そこには“海洋ごみ~漂着物
「前にたまたまこのサイトを見かけてね、作ってみようかなと思ったんだ」
「ふうん」
そこには確かにパパが拾ってきているようなゴミっぽいものを使った工作物の写真が並んでいる。
「この、パパが拾ってくるものは海洋生物たちにとっては迷惑な“嫌われ者”なんだよ。海洋プラスチック問題って聞いたことないか?」
そういえば、捨てられたプラスチックごみが細かくなったものを魚や海鳥が餌と間違えて食べて、深刻な問題になっていると学校で聞いたことがあるような……。
「だから、そういった問題が少しでも少なくなるように“漂着物アート”まあ、“リサイクルアート”を作ってみようと思ったんだよ」
「ふうん。で、できあがった作品はあるの?」
「いや。まだ。なかなかアイデアが出なくってね」
まだまだ、先は長そう……。
パパとママの攻防は当分続くんだろうな。
がらくた…… 奈那美 @mike7691
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