近未来では資源が足りない!

夕日ゆうや

嫌われ者は未来を視る

「本気ですか! この美術品をリサイクルするというのは!」

「すべては新しい子どもたちのために。古いものは新しい世界のために利用されるべきだ」

 資源の少ないこの世界。

 青銅や和紙などは貴重な素材だ。

「しかし!」

 館長が苛立った様子でこちらを見やる。

「嫌われ者は強くなくてはな」

「所長、やりすぎでは?」

 部下の佐伯さえきが耳打ちしてくる。

「いいや、この改革は未来の子どもたちを救う」

「所長。そればかりです」

 佐伯は苦笑いを零す。

 美術品をリサイクルし始めて、一ヶ月経った。

 みんなからの視線が痛い。

 館長は美術館で客を入れたまま、所長を迎え入れていた。

「これとこれをリサイクルするぞ」

「これはゴッ〇の書いた作品で、とても希少価値の高いものです」

「そうだ。そうだ!」

 お客の声もかなり否定的だ。

「だが、子どもためだ。しかたない」

「何を言っているんだ! その子どもたちに残すべきものは美術だろ!」

「それで、食っていけるって? 今はAIによる美術品の製造がある。儲からない職業を子どもたちにつかせることはできない!」

 俺はそう答えると、美術品をトラックに積み込む。

 パァンと、乾いた炸裂音がする。

 よく見ると俺の脇腹が血で染まっている。

「お、俺は…………」

 崩れ落ちる俺を支えようとする佐伯。

 もうろうとする意識の中、俺は自分の子どもである麻衣まいを思い浮かべる。

 ただ一人の娘。

 まだ家のローンもあるというのに……。

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