第20話とある神様、初詣でハッスル

 とある山奥の、とある古い神社に、とある神様が独りで住んでいた


今日は元旦、神様の稼ぎ時である

神社の中央にある賽銭箱の手前に神様、いつもよりも豪華な神様衣装で立っている

賽銭箱の前まで、ずら~っと人が並んでいる

ええと、ずら~っと並んでいるとはいえ、よく見ると、人が十人ほど並んでいるだけ

まぁ、ここの神社、山奥だし、毎年、こんなものである


それでもめげずに、神様、神様衣装に身を包み、神々しき乙女の姿で参拝客をもてなす


ただいま午前10時、この神社の初詣、解禁時間である

神様が起きるのが、いつも遅いのでこんな時間

なにごとも、ゆとりが大切とはよく言ったもの


「私は神である。今年もよい年にするぞい。さぁ、願いを言え」

というと、神様、うやうやしく一礼する

ここまでは神様っぽいな


まず最初のお客、隣村の老人である

「神様~、わしの老眼鏡知らんかね?」

神様、最初のお客の願いに、うぷっと笑いそうになったがこらえる

「うむ、では占ってやろう。ちちんぷいぷい、ぽ~ん」

というと、神様、一回転して、演出する。なにごとも見映えが肝心

「はい、でました~。眼鏡はそのポケットの中じゃ」

神様にそう言われて、老人、ポケットに手をいれると、なんと眼鏡があった

「おお、奇跡じゃ、これこそ、神のお力じゃ」

と言うと、老人、神様に何回もお辞儀をし、泣いて喜んで帰っていった

「うん、ちょろい願いであった」

神様、そう言うと、嬉しそう


「では、次の者」

そう言って、神様、次々にちょろい願いを叶えていく

飼っている犬のポチの行方を教えてくれだの

息子がバカなので、バカでも入れる高校ないですか?とか

嫁が推しにハマって家事をしません、なんとかしてください、とか

まぁ、ここに来る参拝客の願い、どれもちょろかった

でも、神様、神通力を使って、まじめに願いをかなえていく


だがしかし、最後の参拝客の娘の願いはすごかった

その娘、神様の前に来るとこう叫んだ

「神様、彼氏と相思相愛すぎて、勉強に身が入りません。どうすればいいですか?」

神様、それを聞くと、たじろいだ。神様、恋愛相談が一番苦手だったりするからだ

う~ん、なんだこののろけ話?神様、さすがにそう思ったが、

お賽銭に三千円ももらったから、まじめに考えてみた

神様、しばらく固まっていたが、ぴ~んとひらめいた

「私の知り合いの神様でガリ勉君という神がいるので、そやつに勉強を見てもらえ」

「ええ?そんなこと、タダでいいのですか?」

「誰がタダだと言った?ガリ勉君には毎回夕食のお弁当を渡してくれ。お母さんに頼め」

というと、神様、ガリ勉君に念話で了解を得ると参拝客の願いを全部かなえた


「ふぃ~、今年も忙しかったな」

というと、神様、神社の奥にひっこみ、お茶を飲んで一服

なお、この神社、初詣は元旦のみ、

神様の働き方改革は時代の先を行っているのであった



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とある神様の日常 ポンポコ @ad1245ad

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