婚約破棄っ、エレガント姫騎士令嬢は、エレガントに舞う。

touhu・kinugosi

第1話、婚約破棄っ、エレガント姫騎士令嬢は、エレガントに舞う。

「エレガント公爵令嬢、おまえとの婚約を破棄する」

 プレーン王太子が、大声で告げた。

 貴族学校の卒業式のパーティーである。


 エレガント公爵令嬢は、な女騎士だった。

 王陛下から、この国の女性騎士の最高の称号、”姫騎士”を賜っている。

 実力もばっちりだ。


「なぜですか」


「真実に目覚めたのだ」


「それで……、婚約破棄をなさると」

 ”エレガント”が、エレガントに首を左右に振る。


 立て巻きロールの豊かな金髪が、無遠慮に周りに光をばらまいた。

 

 エメラルドグリーンの瞳が王太子を見据える。


「くっ」

 王太子が、醜く顔を歪める。


「“ノブシー辺境伯令嬢”と結婚するっ」

 黒髪、黒い目の小柄な女性の肩を抱いた。

 王太子と身長は変わらない。


「ぷれいん様」

 ノブシーが、東方なまりの発音で王太子を呼んだ。


「政略結婚のはずです。 王陛下はご存じなのですか?」


 ガチャリ


 エレガントが立ち上がった。

 王太子と比べて、頭二つ分くらい背が高い。


 金色こんじきの、“エレガント姫騎士アーマー”が、微かな音と光を、周りにまき散らした。


 ”姫騎士”の称号を持つものしか装備することは許されない。


 ブワアア


 エレガントが無意識に、威圧の剣気オーラを周りに放つ。


「ひうっ」

 気の弱い令息や令嬢が、剣気に当てられバタバタと倒れた。

 彼女と婚約した6歳の時から、剣気を浴びせられ続けた王太子は、腰がぬけそうになったがなんとか耐えた。


「そこまでです」

 ノブシーが静かに王太子の前に立った。

 剣気に対してこゆるぎもしない。

 薄い桜色をした卒業式用の着物と袴が、彼女によく似合っていた。

   

 カチャリ 

  

 ノブシーは、腰の愛刀、”にっかり青江”の鯉口を切った。


「なぜ婚約破棄されたか、わかりませんか?」

 ノブシーが糸目をエレガントに向ける。


「ええっ、わかりませんねえ」

 左手で腰の、”エクセレント姫騎士ソード”をゆっくりと抜く。

 右手の、“ブリリアント姫騎士シールド”を構えた。


「ただ、私に剣を抜いた相手がいる以外はっ」


「くうっ、まただ、もう嫌だ」

 王太子がつぶやきながら下がっていく。

 王太子の取り巻きたちも、慣れたようにパーティーの参加者を避難させていた。


「そういうところですっ」


「電光石火っ」

 ノブシーの攻撃。

 “縮地”からの居合抜きっ。


 ガキイン


「フシュウウウ」

 エレガントが口から白い息を吐く。

 “ブリリアント姫騎士シールド”で刀を受け止めた。

 

 ノブシーの流れる様な連続攻撃。

 

 キン


「どうしてっ」


 キン


「卒業パーティーにっ」


 キン


「国難級特別装備でっ」(姫騎士装備のこと)


 キン


「来てるんですかっっ」


 キイイン

 ギリギリ


 刀と盾で押し合いになった。


「龍でも倒しに行くつもりですかっ」


「いやあ」

 ふわりとエレガントなバックステップ。

「出るかもしれないだろ」


 ――嘘だっ、着たかっただけだっ

 長い付き合いの王太子が心の中で叫んだ。


「まさかっ、無許可なのですかっっ」(姫騎士装備の使用は、王陛下の許可がいる)


「ピュ、ピュ~、ピュウウ〜〜」

 エレガントは、エレガントな口笛を吹いた。


「……ごまかしてるつもりですか?」

 

 ピキッ


 ノブシーの剣気(殺気?)が膨れ上がる。

 ついでに額に青筋も。


「い、いいじゃないか、晴れの舞台なんだしい」


「くっ、奥義っ、”七突七斬”っ」

 突進しながらの七回連続攻撃。


「やばいっ、“エレガント姫騎士ラ〜ンブ”」

 エレガントの体がブレる。

 七体の分身を作ってノブシーの攻撃を受け止める。


「せいやっ」

 

 ドグオン


 最後は、大振りの攻撃でノブシーを吹き飛ばす。


「きゃああ」

 ノブシーが飛ばされた。


 パパパパパン


 ついでにエレガントより前にあるガラスが、剣圧でエレガントに砕け散った。



 プレイン王太子が、へたり込んでいるノブシーの肩を抱きながら無言でエレガントを睨む。

 

「ご、ごめん、ちょっとやりすぎた」

 エレガントが頭の後ろをかいた。


「……」

 プレインが、会場の片付けの指示を出した後である。


「大変ですっ」


「城の裏山に、”龍“がでましたっ」


 兵士がガラスの割れたパーティー会場に走り込んできた。


「なっ」

 プレインが緊迫した声を出す。


「そうか」

 エレガントだ。

 ほっとした様な声だ。


「そうかあ」

 エレガントが周りに剣気を撒き散らした。


「行ってきますっ」

 エレガントが嬉しそうに言った。


 エレガントがいそいそと、エレガントに走り去った。




 しばらくした後、プレイン王太子は、王太子のくらいを自ら降り、ノブシーを妻に娶った。



 プレインは、ドラゴンスレイヤーとなったエレガント女王の側近になる。


 破天荒な彼女を、妻のノブシーと(時には物理で)支え、死ぬまで王国に仕えたという。


 了

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婚約破棄っ、エレガント姫騎士令嬢は、エレガントに舞う。 touhu・kinugosi @touhukinugosi

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