カクヨム出身零細作家へのインボイス制度の影響
新巻へもん
いろいろ調べて休みが一日潰れちゃった
ども。
新巻へもんです。
KADOKAWA様(以下K社様)からお手紙が来ました。用件はインボイス制度について。ついに来たかという感じです。新巻は一応二冊本を出しており印税を頂いています。それには消費税が含まれているわけでして、当然インボイス制度は影響があります。なんだよ、書籍化マウントか、と言わずに将来に向けてのお勉強と思って読んでいってくださいな。
さて、インボイス制度について話す前に消費税の仕組みについておさらいしておきましょう。食料品など軽減税率が適用されるもの以外は物の購入時に10%(2023年2月現在)が加算されます。できれば払いたくないと心の中で誰もが思っているだろう消費税ですが、これはどのようにして国に納められているのでしょうか?
ここで新巻が本体価格が1万円する木の椅子を家具屋さんで購入するケースで考えてみましょう。家具屋さんはメーカーから税別8千円で仕入れており、メーカーは木材を材木屋さんから税別5千円で購入しているとします。新巻は家具屋さんで1万1千円を払います。消費税額は千円。では、この千円はどのように納付されるか。
家具屋さんはメーカーに8千円の10%である800円を消費税として支払っています。なので、新巻から受け取った千円から8百円を引いた2百円の納税義務があります。同様にメーカーは3百円の納税義務となります。材木屋さんは木材を切り出すのに本来は経費がかかりますが、便宜上ここでは超能力で切り出せることにします。この場合は消費税として5百円納めなくてはならないことになります。
ここで問題になるのが材木屋さんの売上です。今までは一千万円以下だと消費税を納めなくて良かったんですね。つまり新巻の払った千円のうち、5百円が材木屋さんの懐に消えていたわけです。許せねえ。新巻もそう思っていましたよ。本を出すまではね。
新巻の『酔っぱらい盗賊、奴隷の少女を買う』が売れて、その印税が10万円だったとします。話はそれますが、印税という名前ですけど税金とは関係ありません。K社様はなんと11万円払ってくれます。実際は所得税を源泉徴収されるのですが、そこは割愛します。
もちろん新巻は超売れっ子作家ではないので、消費税の納税義務はありません。合法的に1万円はポッケナイナイされてビール代と消えます。今まで払ってきた消費税が帰ってきた気分。多少の後ろめたさを感じながらも、そういう制度だしと思っていましたが、そこに正義の鉄槌インボイス制度が立ちはだかります。
長くなりましたが、やっとここでインボイスが登場です。インボイスとは請求書のことなのですが、消費税に関連する場合は「適格請求書」を意味します。この「適格請求書」は消費税を納めている事業者(課税事業者)でないと発行できません。先ほどの例でいうと材木屋さんや新巻は発行できないのです。
それで誰が困るかというと先ほどの例では家具メーカーです。今までは3百円で良かったのですが、5百円分の消費税を払った証明書となる「適格請求書」がないので、今まで通りの取引を続けるとしたら家具メーカーが8百円を支払わなければなりません。
ただ、材木屋さんもこれからは消費税を納税する課税事業者になりますという届出をすることはできます。もちろん、売り上げが1千万円以下でもきちんと納税しなければならなくなりますが。課税事業者になれば家具メーカーとの契約も今までどおりで済みます。
もし材木屋さんが課税事業者にならなかった場合、家具メーカーさんも契約変更を要求してくるでしょう。納税してないんだったら消費税相当分は値下げできるでしょ、という感じで。それか別の課税事業者の材木屋さんに切り替える選択をするかもしれません。
さて、この話を零細作家の新巻に当てはめてみましょう。新巻の選択肢としては、このままでいくか、課税事業者となるかの二択です。K社様は大手なのでこのままにしても、「よっしゃよっしゃ消費税ぐらいはこっちで負担したる、このままポッケナイナイでええで」と言ってくれるかもしれません。
まあ、無いですね。既刊分について淡々と支払いつつ、続刊や別タイトルのオファーが無くなると思われます。だって、新巻はそこまで大事な取引相手ではないですから。ううう。揉み手をしながら、「へへへ。これからは課税事業者になります。登録番号はこちらなんで、ひとつよろしく」というのが唯一の最善手でしょう。
まあ、令和5年から令和8年までの4年間は納めるべき消費税の80%は免除してくれることになるようなので、しばらくは余分にビールが飲めそうです。注意すべき点としてはカクヨムロイヤルティプログラムでの支払いを受けている場合はその分の消費税の合算を忘れないことでしょうか。明細みると内訳に消費税と入っているので気を付けましょう。
ということで、K社様、新巻へもんを末永くよろしくお願いします。
カクヨム出身零細作家へのインボイス制度の影響 新巻へもん @shakesama
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