居場所の無い君達へ

愛野ニナ

第1話




「居場所が無い」と言ってよく病んでる人、または病んでるフリをしている人。

 今日は私ニナおねえちゃんが本当に「居場所が無い」とはどういうことなのか語ってみようと思う。




 最初に断っておくがこれは決して不幸自慢では無い。

 私はあまり自分の境遇を人に話したことはないのだが、この際だから少し話してみることにする。




 私の両親は大学の同級生だった。どのような事情か知らないが二人して大学を辞めて上京し、東京でフリーターをしながら同棲していた。

 私と一つ下の妹が生まれても籍は入れず、母はシングルマザーのままだった。

 まもなくして両親は別れたらしいので、私は幼すぎて父親の記憶が全くない。私にとって父親とは、はじめからいない人だった。




 物心ついた頃、すでに貧しかった。2Kのアパートの寝室では母親、母親の彼氏、私、妹の四人で寝ていた。自分の部屋などあるわけもなく、文字通り「居場所が無い」のである。

 一人でゆっくり考えたり、安心してぐっすり眠ったりする場所がない。

 貧しかったので部活動や習い事はさせてもらえなかった。本やゲームも買ってもらえなかった。

 でも、何よりも嫌なのは夜。こんな状況ではいつもよく眠れないことだった。




 私も一つ下の妹も中学生になったくらいから、意味もなく深夜徘徊をするようになった。(今に例えるならば、トー横界隈の子達のようなものだろうか…)

 夜の街には、私と同じような居場所の無い子達がさまよっていた。そこで知り合った人達と朝まで遊んだり、泊まり歩いたりしていた。

 そんな日々もそれなりに楽しかった。でも、そこが居場所かと問われたらぜんぜん違う。お互い干渉しすぎず、深入りせずに、刹那的に騒いで過ごすだけ。

 夜が明けて空が白み始めた頃、疲れとともにいつもただ虚しさだけが残った。




 ある日、こんなことがあった。

 おせっかいな補導員につかまり、全寮制のフリースクールのような所に連れていかれたことがある。そこで暮らしながら、高卒資格をとるとかなんとか。そこに体験で入ったのだが。

 私は耐えられず、一日で脱走した。

 何が嫌だったかといえば、夕飯の時に円卓を囲み、みんなで歌を歌わされたことだ。

 私のような子は家庭の暖かさに飢えているに違いない、と決めつけられ、押し付けられたアットホーム。それが、本当に吐き気がするほど気持ち悪かったのだ。




 結局、私が「居場所」を手に入れたのは高校生の頃、家を出て一人暮らしを始めてからだ。アルバイトでの自活はきつかったが、それでもはじめて手に入れた自分の部屋で、私はようやく安眠できるようになった。

 因みに妹も私と同様に、十代で一人暮らしを始めた。そして私とまったく同じように、やっと居場所ができたと思ったそうだ。


 


 ここまで話して、だから何だ?と思ったかもしれない。

 私が言いたいのは真に「居場所が無い」というのは、物理的に居場所が無いことなのだ。

 人の生き方は自由である。実家が太く親がそれを許容しているのであれば、ニートでもひきこもりでも本人の自由である。

 でもね、学校が嫌だ職場が嫌だといって逃げ込める部屋があるのに「居場所が無い」と言うのは甘い。

 安心して眠れる自分専用の部屋があるでしょ。働かずにゲームやアニメに逃避しても、生活の心配をしなくていいだけの経済力がある親もいるわけだ。

 え?親そんなに太くないって?…いやいや、無職の子供を養えるわけだから、少なくとも貧乏では無い。

 家が貧乏ではひきこもる部屋さえ無いのだ。

 親は自分のことを理解してくれない、だと?

 だったら家を出て自活したらいい。

 親子であれ兄弟であれ人は皆「個」なのだ。百パーセント理解しあうというのは絶対に不可能だ。




 今回は少し辛辣だったかもしれない。

 だけど世の中は綺麗事だけで成り立っているわけではない。

「居場所が無い」とか簡単に言うな、ということだ。

 そしてテンプレのように「居場所が無ければ作ればいい」とか適当にいう人も、私はムカつくのだが…まあそれはそれで一理あるのかもな。

 世の中は平等では無い。

 だからといって自分の境遇を呪っていたところで何ひとついいことは無い。

 大切なのはそこから自分なりにどう生きていくか、である。

 …という私もまだまだだけどね。



 

 居場所の無い君達へ。

 今一度あらためて自分が何処にいて何をしているかよく考えてみるといい。

 そうしたらきっと見えてくるものがあるはずだからね。

 応援してるよ!



 ちょっと偉そうになってしまったが、苦情は受け付けません(笑)

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