魔女のエマ

夢月みつき

第1話「魔女のエマ」

見習い魔女、エマはお師匠様のキリに頼まれて

病や傷に効く薬を、町に売りに行く途中で、いつも通る館の窓から顔を出す。


きれいな金髪の男の子の姿をみるのが、楽しみでした。

その想いは日に日につのっていき、憧れから恋心になるのに時間はかかりませんでした。



◇ ◇ ◇



ある日、キリに事の次第を相談しました。

キリは、話を聞きエマに言いました。

「エマ……おまえの気持ちはわかるが。あの館のお方は、やめた方がいい」

「どうしてですか!?お師匠様っ」


エマは叫びました。

「あの方は、伯爵様のご長男。かたやおまえは、しがない平民で魔女。身分が違いすぎるのだよ」

「そんな……わたしはずっと、あの人を見ていました」

「そうか、でもな。エマ。おまえが、あの方をずっと見ていたように、オレもおまえをずっと、みていたのだよ」

「明るくて、ひたむきなお前がずっと、すきだった」


エマは、師匠の真っ直ぐな瞳に頬を染めあわてふためいた。

「おっ、おししょうさまっ?そんな。でもっ、ごめんなさいお師匠様。それでも私は、あの人が好きです」

「そうか……それでは、オレはお前のこれからの悲しみが軽くなるように一緒にいてやるよ」



キリはエマを軽く抱き寄せた。

「お師匠様……ありがとうございます」

エマはひとすじの涙を流した。

・・・・・・・・・・・・・・・

お読みいただきありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔女のエマ 夢月みつき @ca8000k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ