この作品凄みは、冒頭から読者を異世界へと誘い込み、ページをめくる手が止まらなくなるところにある。
主人公のナッツは、いかにも今風の若者といった風情だが、仲間との絆を胸に、己の全てを賭して魔王に立ち向かう。その純粋さ、潔さに惹かれずにはいられない。
緻密に組み立てられた戦略と、予想外の展開の連続に、読む者は息をのむ。
そして、ラストに待ち受ける悲劇。それは読者の心に深い傷跡を残すだろう。しかしながら、それこそがこの物語の真髄である。
現代社会に生きる若者の姿を残酷なまでにリアルに映し出した書きぶり。
これぞ正にファンタジー小説と言っても過言ではない。