第39話 逃走
俺は肉体操作(身体機能を操作する超能力)を自身に掛け、全身の身体能力を強化し、澪を抱えて天守台を飛び出し着地、広い芝生を全力疾走した。
「あっ…」とかいう声がした後、男がまだ何か叫んでいた様だが全て無視した。
何故俺がテレポートをしなかったかというと、もしテレポートをして自宅まで帰っても、万が一同じ能力を持っていて自宅まで付いて来られたら逃げ場が無いからだ。
あの男も俺達が天守台に登った時に漸くこちらが能力者である事に気付いた様なので、仲間が居ないという前提ではあるが、ある程度の距離をとれば大丈夫なハズだ…。
しかし、よくよく考えれば自分で言うのもなんだが、俺みたいなチート級能力者が沢山居たら、もう逃げ切れなくないか?
予知使えるし、過去知使えるし、テレパス使えるし、サイコメトリー使えるし、テレポート使えるし、タイムリープ使えるし…
もう何でもアリじゃねーか、本気で追い掛けられたら逃げ切れる気がしねー…
…仕方ない、もうクヨクヨ考えるのは止めよう、何を考えても無駄な気がする、成るように成れだ。
しかし今日はこの辺の散策は止めておこう、あの男とまた出くわしたら面倒だ、澪を起こして別の場所に行くか帰るか…
澪に決めてもらおう。
皇居周辺をひたすら走りながら周囲の安全を確認すると、ふと立ち止まらずにはいられない立派な佇まいの洋館があった。
その向かい側に、お堀に面している公園があったため一旦休もうとベンチを探したが見当たらない。
仕方がないので、公園内の手すりに澪を抱えたまま腰を掛けた。
更に安全確認のため周囲を見渡すと、俺達が通行人から注目されている様な気がした。
…もう追手が来たか…と身構えたが、その中で女性が2人会話しているのが聞こえた。
「わぁ…超イケメンが美女をお姫様抱っこしてるわ…」
「素敵ぃ〜、何かの撮影かしら…あぁ、私もあんな超絶イケメンに抱っこして欲しいわぁ…たまらん!あっ…鼻血が…」
「ちょっと、マジぇ…アンタ大丈夫!?」
……どうやら俺の事では無い様だ。
あぁ、そういえば澪を起こさないと。
「澪…澪…起きれるか?」
「……うっ…うーん…あら…ここは…?」
澪はボーッとしながらも付近を見回した時に自分がお姫様抱っこをされている状況を理解したのか、ハッとした表情の後、顔を真っ赤にしてアタフタし始めた。
「なっ…どっ…どういう状況なのかしら、私の記憶では天守台に居た筈だけれど…」
「あそこでパーカーのフードを被った不審な男が居たのを憶えているか?」
「確か…フッフッフッ…とか笑った後、何か厨二病みたいな事をブツブツ言っていた様な…」
「そうだ、アイツは急に厨二病みたいな事を言いながら俺達に近付いて来たんだ、変質者だ!
それで澪は恐怖を感じたのか急に意識を失い倒れたので、俺が抱えてここまで逃げて来たんだ。」
「そうなの…ごめんなさい、貴方には大変迷惑を掛けたわね…。
…ここはイギリス大使館の向かい側ね、本当にここまで重かったでしょう、ありがとう…。」
「イヤ、全然軽かったぞ、それより全く地理が判らないまま勝手に突っ走って来てしまった、済まない。
それで、これからどうする?この辺はさっきの変質者が居ると危ないから、違う場所に移動した方がいいと思うんだが。
それとも澪の身体が心配だから、今日はもう帰るか?」
「…あの…その前に、私を降ろしてもらってもいいかしら…近い…。」
澪は恥ずかしいのか、両掌で顔を隠していた。
自称最強の超能力を持つ俺には何故か平穏が訪れない YUKI @yuki-19921218
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