第6話 バブ公
暫く走行するが何もない。ひたすら野っ原だ。なんか目立つ木でも無いのかよ。
すると遠くに1本だけやけに目立つ大木らしき物を見つけた。
「異世界不思議発見」と一人突っ込みを展開。
そちらへ車を走らせる。その木を近くで見た感想は結構大きくて熱帯性植物のバオバブの木みたいだ。
車で近づいてみる。うん、近くで見ると魅力的でセクシーな木だ。
気分転換に外へ出て一服した。旨い、俺は生きてるって感じだ。な、バブ公。
そうだよ、バブの木のクリソツだからさ。今からお前の名前はバブ公だよ。
俺はバブ公へ話しかけたが返事はない。当り前か。返事の代りにバブの木と葉が揺らいだように思えた。何だよバブ公、種とか飛ばすなよな。
その瞬間、ピストルに似た複数の発砲音が、いや数十発の発射音か。
パンパンパンパン...鳴り響く音と同時にバブ公から多数の黒い種が俺めがけて襲ってきた。
襲ってきたけど、なぜか襲い来る多数の種が俺には確認できた。発砲音の割にスピードは遅い。
これなら避けれる。黒い種は合計30発もありそうな数なのに全て避けれた。
俺ってこんなに動体視力と運動神経良かったかなぁ?
が、その弾だか種だか俺の手前で,,,曲がった?いま曲がったよね。すれ違った筈の弾が俺の身体の横で曲がった!
曲がった弾は全て避けたつもりも、油断したところへ右の肩口と同じく右の腕へ2発の着弾。
「何なんだよ、黒い弾は意思を持ってたのか?自己操作できたってオマエはセックス・ピストルズか!」
「それにしたって、ツイてんねーなぁ。一難去ったばかりでまた一難かよ!」
ってイテーッ!なぜか遅れてきた痛みに顔が歪む。
気が遠くなるも鈍い痛みで我に返る。ピストルのお世話になったことは無いがきっとこんな感じだろう。
クラウンへ乗り込み、バブ公からの次弾を警戒した俺はこの場から逃げ出した。
肩口に受けた黒い種を引っ張り出しながら急いで車に乗る。
穿るようにして取った肩口の弾を見るとその正体は思った通りバブ公の種だ。
種を放り投げ、肩口の傷に触れる。ちょっと凹んでいるだけでダメージはない。
不思議と2発も喰らった傷からの出血もない。しかも先程の痛みも消えている。
バブ公から離れた位置で右腕と肩口の傷の様子を伺う。
肩口のは侵食されずに処置が早かったせいか無事だが右の腕から芽?バブ公の芽がもう生えてきてる!
「やめてくれ、寄生されちまうじゃねーか。オマエは右ィかよっ!」
バブ公の種を処置できた右肩は問題ないが、徐々に痺れ始め痛みも鈍くなってきた右腕の方は、短時間の間に皮膚と肉内部に癒着して引っ張っても取れなくなっていた。
「種に腕が、いや身体を侵食されて、、どうなる?!木のバケモノに変身?!ざけんな!」
クラウンのダッシュボードにあったカッターナイフを取り出し、ライターの火で消毒したカッターナイフを左手で持ち、種の芽を歯で引っ張り固定すると一気に種の周りを抉る。右腕が痺れて痛覚が鈍い分、派手に穿るように深く抉る。
ちょっぴり外科医の気持ちが分るぜ。
歯で引っ張りながら適当なところで指で芽を穿り返す。指の消毒液はアルコールだ。コロナで消毒液だけは車の中に数本持参してる。営業車だしな。
う・ま・く・いったぜ。なんとか取れたっぽい。傷口を見るとポッカリと穴が。
不思議と血は滲む程度で出血はない。よかった。血液の換えというか、この世界に輸血なんかありゃしないだろうし。
摘出した種から芽をカッターナイフで分離し、ダッシュボードへ種を仕舞う。
以前ネット知識で得た手法で簡易手術をやるしかないか。
ポッカリ空いた腕の傷口をアルコールで消毒し、コンビニ弁当添付の爪楊枝にタオル繊維を巻きつけ傷口を縫うと手持ちのアロンアルファとガムテープで仕上げ、傷をタオルで巻いた。割と上手くできた。ネット様々だぜ。
「ネット?そういやスマホが使えるか試してなかったな」
そのとき頭の中で意味不の文字が日本語表記となって再び脳内に現れた。
アクセルカウンター/パッシブオンオフ スロウアタック/パッシブオンオフと。
「お、おお、うぁ...」
俺の口から言葉にならん言葉が出た。
「な、な、な、な、ナニこれ...」
「アクセル?スロウ?何かの能力?何の?」
両方のオンとオフが点滅している。つまり選べと言うことか。迷わずオンを選んでみる。すると脳内の表示も消えた、、つまり、、成功したのか?
車外へ出て能力を試してみる。しかしなにも起こらなかった。ここでは試す相手がいないから、だろうな。
試すったってバブ公しかいないよな。もしバブ公に近づいても発動しなきゃ命がけだよなぁ、、というのは建前でやってやるぜ。第2ラウンド開始だ。待ってろよバブ公。
が、待て待て。武器無いじゃん。しかも俺片手。ヤバイよヤバイ。武器はカッターと簡易折りたたみ式スコップと拳銃とブツだがどれもバブ公に役に立つとは思えない。
都合よく除草剤なんて持ってないし、塩もない。
「木だから、、燃やすか!」
クラウンのトランクに携行缶20Lガソリンタンクがある。仕事柄ガス欠防止の為満タンだ。
ガソリンタンクの中身をバブ公に振り掛け、火で燃やしてやる。作戦は決めた。後は実行するのみだ。
さて、バブ公に挨拶しに行くとするか。お礼参りは倍返しだ。釣りは取っとけ。
クラウンでバブ公のテリトリーまで戻る。待たせたなとバブ公に告げ、車から降り、トランクからガソリン満タンの20ℓタンクを取り出す。バブ公も俺に会えてなんだか嬉しそうだ。クラウンのトランクから20L入りガソリンタンクと折りたたみ式スコップを提げてバブ公へと歩き出す。
バブ公って名前が気に入らなかったなら謝るよ。だからって俺に攻撃したきたのは別口だけどさ。さぁそろそろさっきの位置だ。バブ公、お前の射程距離だ。
パンパンパンパン、さっきと同様、拳銃に似た発砲音が鳴り響く。アクセル+スロウは発動するのか?
発動した!能力射程内に入ったのか弾の種が止まって、止まってるように見えた。驚いたね。アクセルとスロウの相乗効果なのか、バブ公の攻撃が止まって見える程だ。見方によっては時が止まっているみたいだ。俺の動きが残像となって、まるで何人もの俺が合わせ鏡の中にいるようだ。
「残像となって?」
これは昼過ぎに殺死合をした熊ゴリ公の能力じゃ無いか?ヤツから受け継いだの?
何で?考えたって分からないが、同じだとしたら敵に約10m近づいた範囲での能力解放か。
俺の方へ曲がろうとする種の弾を掻い潜りながら俺はバブ公へ近づくとバブ公の攻撃が止んだ。
「弾、いや種切れかバブ公」
好都合だぜと、バブ公の根の周りを折りたたみスコップで掘る。
ガソリンをブチ捲く前にバブ公へ挨拶しとくか、バブ公へ触ってみた、最初で最後だ。バブ公へ片手と膝でガソリンタンクを器用に操り中身をプレゼント。ゆっくり土に吸収されるであろう根の周りに溜まったガソリンへライターで火を付ける。
「じゃーな!」
炎に包まれていくバブ公。俺は炎が届かない場所へと避難する。
アクセルとスロウの範囲外へ避難するとオート機能は自動的にオフになった。
バブ公は燃え続けた。乾燥した空気と熱気が相俟ってよく燃えた。俺はバブ公の本体と根っこが炭のようになるまでガソリン攻撃を繰り返した。
バブ公の幹が黒焦げになったのを確認した俺は左手でクラウンを器用に操りこの場を離れた。バブ公がどうなったのか、退治できたのかはどうでもいい。黒焦げになったたバブ公を見て俺の復讐心も癒えた。
ホッとしたら喉の乾きと同時に腹も減った。うん間違いなく脱水症状に近いわコレ。熱波と汗とでダウン寸前。水だ水、ペットボトルのミネラル水をの飲む。
水もお湯になって美味しくない。暑さで喉を潤せないのは死ぬほど辛いぜ。
永遠の∞オピウムクイーン ぶるーすにゃんこ @yazawakun
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