【資料】詠貧士其一・詠貧士其一

詠貧士其一


萬族各有託  

孤雲獨無依  

曖曖空中滅  

何時見餘暉  

朝霞開宿霧  

衆鳥相與飛  

遲遲出林鳥  

未夕復來歸  

量力守故轍  

豈不寒與飢  

知音苟不存  

已矣何所悲  



詠貧士其二


淒厲歳云暮  

擁褐曝前軒  

南圃無遺秀  

枯條盈北園  

傾壺絶餘粒  

伺竈不見煙  

詩書塞座外  

日昃不遑研  

閑居非陳阨  

竊有慍見言  

何以慰吾懷  

頼古多此賢  


加藤敏「陶淵明『詠貧士七首』小論」中国文化 『研究と教育』70巻 2012年 pp42-55.より原文のみ抜粋。


で、この加藤論文によるとそれまで「貧士」というのは貧しくて苦しいというものから「死んだら富める者も貧しい者も同じこと」として詩に遊ぶという「貧しい」というイメージを180度ひっくり返したというのです。


ただ漢詩というのは横書きではレ点が使えませんのでレ点を省略することをご了承ください。


ところが日本はこの陶淵明『詠貧士七首』を『貧窮問答歌』として貧しくて苦しいだけのものと解釈したり「武士は食わずとも高楊枝」という「やせ我慢」の意味として間違って浸透してしまったようです。つまり「お金より時間」という意味が平安時代頃に伝わったにも関わらず意味が分かって無い、あるいは「建前」としてスルーしてしまったということです。そうなんです。陶淵明の「貧士」というのは「スローライフ」の事を言っていたのです。


これはのちに20世紀後半にイタリアでも「スローフード・スローライフ」という形で始まり西洋からも我が国に「貧士」思想がもう一回伝わってくるのですがなぜか日本では「ロハス」とか「シンプルライフ」とか「スローライフ」を金持ちの道楽という間違った意味で伝わっていきます。


やはり日本人は本質的に「心が貧しい」のかなって言わざるを得ません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【創作に役立てて!】「貧士」という言葉の使い方 らんた @lantan2024

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ