第八夜 どくそう
しばらく走ると、山に着いた。木はない岩山だが、ここに隠れる、もとい、籠もることにした。
登っていくと、何故か都があった。木を隠すなら森の中だ。躊躇いなくその中に入った。路地裏でこそこそとしている乞食達と似たような格好をして、唾で作った泥を塗って、ここは何処なのか、と聞いた。
乞食たちは、今日は祭司どもが騒がしいからよそに行け、と、言った。祭司、という言葉を聞いて、ここにいるのもよくないかも、と、思ったその瞬間。
乞食の一人が、がっしりと腕を掴んだ。
「すみません、この通りの托鉢で―――。」
「お、お、おら、きいた。びよきでもないのに、かみがない、そ、そ、そいつが、はん、はんぎゃくしゃ、だって!」
すると、今までモゾモゾしていた布の塊が、どどどっと土石流のように押し倒していた。
「やった! やった!! 今年の
「突き出せ、突き出せ!!」
どうなっているか分からないが、反論する前に、押し合い圧し合い、引っ張られながら何処かに連れて行かれた。
乞食の一人が、門番のような男に早口でまくしたてる。しかし、門番は大爆笑した。
「ハハハ!!! そうかそうか、確かにそいつはギリシャ人ですらない外人だな。若いのに髪もヒゲもない。だが反逆者は今、裁判中だ。そいつは偽物だよ。」
「う、うそだ! お、お、おら、は、はんぎゃくしゃ、の、とくちょ、きいた!」
「そうかそうか。だが残念だな、反逆者は子どもだったよ。大先生さまが見分けられたんだから、間違いない。」
全身の血が、毛穴から飛び出していくようだった。
そうだ。
自分が襲撃された時、助けてくれたのは、避難先を教えてくれたのは、子どもだ!
「ま、ま、まて! まあ待ちなよ! あんた達、よっぽど頭がニワトリなんだな!」
わかりやすく煽ってやると、外人にバカにされた、と、ギロリと睨まれる。だが、アメ公のように睨まれてもなんともない。湿っぽく仄暗い、あの目つきよりも恐ろしくはない。
よく分からないところに来てしまったが、とりあえず、外人というものはどこも同じように凄むらしい。なら逆にやりやすいというものだ。
「お前ら、子どもの反逆者を捕らえるのにどれくらいかかったんだ? 一日で見つけられない以前に、逃げられるなんて兵士の風上にもおけねえな! 気に入らねえ女ならその場で犯して廃人にすればいいし、子どもならその場で殺すか、奴隷として売れば良い。それこそアレだ。アレ、あれ…。子ども相手は、
よくもまあ、自分でもぺらぺらと言えるものだ。案外自分は、戦争というものに対して、思うところがあるようだった。
「おい、外人。ここを何処だと弁える。」
「知らないねェ!! ここはどこなんだ? 天皇陛下の御所か? いーや違うね! 天皇陛下はこんなごリッパな建物には住んでなかった。だが俺は見たことあるぞ、こういうの。南蛮被れの見栄っ張りが住みたがるんだよ、こういう家! 中身のない猿真似を、馬鹿にされてることも知らない、恥知らずな、バカの家だ!!」
バカ、という声を、思いっきり強く発音した。半分以上は恐らく単語がわかっているないようだったが、バーカ、バーカ、うすのろまぬけばーかと、子どものように繰り返していると、三回目の『バー』で、耐えられなくなったらしく、兵士が乞食たちから自分の首を掴んで引き寄せた。握力が思ったより強いが、キレるのが早い。
「おおっと、俺を殺して良いのかい? 反逆者の子どもを長ーく甚振って遊んでやりたいだろう? 俺は子どもと一緒にいたんだぜ、子どもは俺に懐いてる。」
「反逆者に仲間がいたなんて情報、来ていないぞ。」
「どうでもいい!! そんなに奴隷になりたいなら、もろともぶち込め!! 神と契約したイスラエルを侮辱することがどういうことか、大先生さまに直接叩き込まれてこい!!!」
よし、潜入成功。
と言っても、自分は文字通りの徒手空拳だ。爪に毒を塗る暇もない。とにかく、今は慈雨の元にいなければ。
………。
…いや、本当にどうするんだ? この後。
Alleluia MOEluia BLuia! アプリーリス・ウナーストン2〜ホモバレしてヤケになった結果タイムスリップした先で救世主になる流れになったんだが俺は仏僧です〜 PAULA0125 @paula0125
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