極太ブレス大噴火

ちゃむ

第1話

「よし、ひとまずこれで完成だ」

 俺の名前はザクロ。巨大な翼と長い尻尾を持つ、最強最大の獄炎龍だ。つい先程、炎の力を増強させる薬を完成させたところだ。


 少し前、俺にちょっかいをかけてきた人間を得意のブレスで国ごと消し炭にしたときだった。ふと、あるものが目についたのだ。それは、能力を一時的に上げる効果のある薬について記された書物だった。俺はそれを読み、薬を作るために動き出したのだった。


 効力を一つの物体に集めて形にするという点では、魔石と同じような物だと思ったが、書物では薬と呼んでいたのでそれに倣った。


 早速効力を試すために薬を飲んだ。すると、体内の炎が激しく燃え盛り始め、身体中から溢れんばかりの力が湧き上がってきた。

「おおっ!良いぞ。うまく作れたようだ!」


 しかし、炎の勢いはぐんぐん強くなり、俺の身体から蒸気が噴き出してきた。

「ぐおおぉぉぉ……。これはまずい!」


 俺は急いで外に向かった。その間にも炎はどんどん強くなっていき、すでに口から漏れ始めていた。

 俺は外に出た瞬間、空へ顔を向けて口を開け、体内では収まりそうにない炎を放った!


 ドガアアアァァァァーーーン!!!


 凄まじい轟音と共に、極太の火炎ブレスが雲を突き抜けて天高く伸びていった。その衝撃で周囲の小石や塵が全て吹き飛び、大地は大きく揺れていた。その光景を見た周囲の魔物達は慌てて逃げ出していた。

 ブレスは俺が普段撃ってるものより遥かに強力で、自分の放った攻撃でありながら驚いた。

「凄い……! ここまで威力が上がるとはな」


 それにしても、相当な量の炎を吐いているというのに、体内の炎は衰える様子はない。それどころか、まだまだ湧き上がってくる。

「ええい、こうなったら思う存分やってやる! グオオオォォォォォァァァア!」

 俺は雄叫びをあげ、力のリミッターを外した!


 ドッゴオオオォォォォォーーーーン!!


 放っていたブレスは一気に巨大化し、俺の視界を埋め尽くすほどの特大火炎放射となった。凄まじい轟音が鳴り響き、衝撃波が遥か遠くまで広がっていった。さらに発射の反動で地面が大きく陥没し、隕石が落ちたかのような巨大なクレーターが出来上がっていた。


 これでなんとか増幅と放出がほぼ同じになったところか。しかし、これだけの量の炎が絶えず生成され続けているのか。絶大な効力を持つ薬を作ってしまったな。


 一方俺は、視界を遮るほどの特大ブレスに魅力や快感を覚えつつあった。ブレスは今まで見たこともないような美しい紅蓮色をしていて、あまりの熱量により空気が歪み、まるで陽炎のように揺らめいている。そんな巨大火山の大噴火のようなブレスを、今俺は自分の口から放っているのだ。この力はまさに獄炎龍の名に相応しい。


 しかし、少しでも気を抜くと体制を崩してしまいそうだ。もしそうなれば、今は空に向かっているブレスの軌道が変わり、山を、いや、もしかしたら地球さえも破壊しかねない。


 それから、獄炎の極太ブレスは数時間ほど発射され続け、次第に収まっていった。

「ハアッ、ハアッ……さすがに少し疲れたぜ……」

 俺は息を切らしつつ、ブレスの快感の余韻に浸っていた。まだ身体の奥では炎が燃え盛っているが、俺の体内に収めることが出来る程度には弱まっていた。


 もし周りに木々や草花があれば、辺り一面焼け野原になったであろう。何もない岩山で暮らしていて本当に良かった。俺は少し焦げてしまった鱗を撫でながら思った。


 まったく、薬を作ったのは俺だが、凄まじい効力だ。こんなものが世に出回ってしまったら大変なことになるだろう。

 だから、この薬のことは誰にも言わないように決めた。幸いはことに、ここには俺しかいないからな。


 ……だが、本気でムカついたやつがいたら使ってみるか。

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極太ブレス大噴火 ちゃむ @BulkieCharge

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