呪いの装備。
音佐りんご。
エモノルティカピオ!
◆◇◇◆
勇者が装備品店の開け放たれた扉をノックする。
勇者:失礼! 店主殿はおられるか?
店主:私ならいますよぉ。ささ、どうぞお入りになって。
勇者:失礼する。
勇者、店内に入る。
店主:ノックなんていいのに。それで、お客さんどうなさったんですか? 見たところ冒険者……。
勇者:いえ、店主殿にお願いがあって参りましたので。
店主:お願い? こんなクソボロい装備品店の店主に?
勇者:く、クソボロいだなんて……そんな。
店主:ふふ、それはもしや、あなた様が右手に持ってる『ソレ』に関わるお願いですかな?
勇者:……! 分かるのですか!?
店主:ええ、仕事柄ね。
勇者:申し遅れました、僕はエルト・アレクリッドと申します。
店主:エルト……。ふふ、どうぞ奥へ。勇者様?
勇者:僕が勇者だとご存知で。
店主:ええ、仕事柄、ね。
二人、店の奥へ。
勇者:…………。
店主:どうなさいました?
勇者:いえ、なんというか、その、この部屋は個性的な内装ですね。店の方はクソボ……質素な雰囲気なのに。
店主:ええ、良い趣味でしょう?
勇者:……はい。
店主:あなた様がその右手に握りしめているものと同じくね。
勇者:……それはつまりこの部屋にある物は全部。
店主:お察しの通りそうですよ。私、自慢の品々です。
勇者:……良い趣味ですね。
店主:でしょう?
勇者:……それで店主殿、お願いというのは、
店主:ああ、失礼。名乗ってませんでしたね勇者エルト様。
勇者:あ、いえ。
店主:私、しがない各種装備品店を営んでおります、アスカで通ってます。
勇者:それでアスカ殿、お願いが。
店主:真名はアスカ・ゲパルム・テリオレ・オーゾ・クラヘム。エルト様がご用なのはこちらの私でしょう?
勇者:は、はい。
店主:ふふ、そんな身構えなくても良いですよ。こちらは私のお師匠に頂いた名前でしてね。本業の方と同じくアスカとお呼び下さい。
勇者:は、はあ。
店主:ちなみにどちらで?
勇者:アスカ殿のことはラーゼンフォルグの武器屋、ギラルさんから伺いました。
店主:ほう、懐かしい名前ですね。昔はよく語り合ったものです。
勇者:ご友人なんですか?
店主:同門、兄弟みたいなものです。
勇者:兄弟……。
店主:ええ。彼は武器屋のクセに呪いの防具を集めていましてね。
勇者:変わってますね……。
店主:ギギィ・リンラル・ギレリオ・バムス・テルホール・ランパート・ルゥル・サワディ・ハフ・モリス・タォ・ビレオレンガイト――
勇者:え、え?! な、何ですか? 詠唱!?
店主:真名ですよ、彼の。
勇者:ま、真名ですか。長いですね。
店主:まだまだ続きますよ。
勇者:そうなんですか……。
店主:ビレオレンガイトから四十節続きます。
勇者:そんなに!? アスカ殿のでも長いのに!
店主:まぁ、真名の長さには個人差がありますからね。彼の場合、真名そのものの意味に加えて、全体が五十二節であることにも意味があるのです。
勇者:へ、へー。ちなみにどういう意味があるんですか?
店主:おや? 知りたいですか? 長くなりますよ? こちら側に興味がおありで? それは素敵ですね? どうです? エルト様?
勇者:あ、いや、えっと……またの機会に。
店主:ええ、いつでもどうぞ。さて、お楽しみの時か……本題に入りましょうか。
勇者:お楽しみなんですね……。
店主:ええ、それはもう。
勇者:認めるんですね。
店主:私、欲望に正直なのです。
勇者:そうですか。
店主:そうなのです。では、その布を外して頂けますか?
勇者:は、はい。
店主:ふふふふふふふ。
勇者:…………ッ!
勇者、右手の布を外す。
握られたむき身の剣が露わになる。
店主:おぉ……これはこれは……! とても素敵な剣ですねぇ……!
勇者:アスカ殿。お願いというのは、この剣をどうにかして欲しいというものなのです。教会やら、その筋の人間に色々見て貰いましたが打つ手無しで……それであなたに。
店主:ふむ。分かりますよぉ、この私には、えぇ、いやぁこれは完璧に呪われてますねぇ。
勇者:お恥ずかしながら、呪われていて手放すことが出来ないのです。
店主:それはそれは、ご愁傷様ですねぇ。お気の毒ですねぇ。大変ですねぇ、いやぁ羨ましいですねぇ。
勇者:……嬉しそうですね。
店主:いえいえ、そんなことはもちろんありますよぉ。
勇者:あるんですね。
店主:そりゃぁ、ありますよぉ。私を誰だと思ってるんですかぁ?
勇者:……この人なんか、駄目そう。
店主:えぇ、こんなすごい物見てしまうと私、駄目になってしまいますよぉ。もう、蕩けてしまいそう……!
勇者:そ、そうなんですか?
店主:そうなのです、ええ、そうなのですよ勇者さま。何故ならこれはそうそうお目にかかれない逸品ですからねぇ?
勇者:すごいんですか? いや、呪われてみて、確かにひしひしとヤバさを感じるのですけど、どういう物なのかよく分かんなくて。
店主:ほう? それが一体どんな感覚なのか詳しくお聞きしてみたいところですが、まずは調べて参りましょうかぁ。
勇者:よ、よろしくお願い致します。
店主:さ、焦らさないで、もっとよく見せて下さい?
勇者:ち、近いですね……。
店主:近付かないと分からないでしょぉ? ふむふむ……うふふふふ、なるほど。
勇者:な、なんか恥ずかしいです……。
店主:…………ふふふ、あぁ、これはこれは。
勇者:なにか分かりましたか、アスカ殿。
店主:これは結構複雑で素敵な呪いですねぇ。
勇者:素敵なんですか……?
店主:それはもう……! 遠い昔の初恋のようですぅ……ふふふ。
勇者:初恋……。
店主:でもそうですねぇ、この段階ではちょっと解き方が想像つきませんねぇ。
勇者:そ、そんな!? どうにもならないんですか!
店主:いやぁ、わたし、この仕事と界隈を始めて四百年は経ちますけどぉ、これは初めて見るタイプですねぇ。
勇者:え、四百年? 人間ですよね? え、冗談ですよねそんなに若々しいのに?
店主:ふふふ、人間ですよぉ? 嘘じゃありません。
勇者:人ってそんなに長生きできるんですね……。
店主:若さの秘訣を知りたいですか?
勇者:え、遠慮しておきます……。ぼ、僕が知りたいのはこの呪いの解き方なので!
店主:おや、それは残念。……ふむ、そうですねぇ。このリシュリペの基礎構築のアルペナを見るに、たぶんビーファルモルタ王朝記以前、いぇ、もっと以前の超古代……そうですねぇ、ベルネファス紀以前、ひょっとすると近ゼネファス紀からルオネファス紀のアロチナーバ辺りにルバンダを持つ文明の呪い的アボスですね。
勇者:リシュ……アルペ……ルバンダ……アボス……?
店主:ふふふ。……これは歴史的発見かもしれませんねぇ。
勇者:そ、そうなんですか……?
店主:ええ、ここのアルペナを見て下さい勇者さま?
勇者:アルペ、何ですって?
店主:ほら、マフィナオ・レ・ベトリカのフランベートがアルペノナヴィス式に変化してる。
勇者:え、すすみません、なんですか!?
店主:いやぁ、すごいリシュリペ・ガリム・デロ・アパルパトゥ・ノーリヴですね。
勇者:それは何なんですかアスカ殿!
店主:こいつはミネピオポリフィティカ系ラトルロ・カルパニスの呪い的アボスが、オルオーナ・クロプレ・ル・カンバイトした神秘に迫るきっかけになるかも。
勇者:なんか知りませんがすごい発見なんですね!
店主:あぁ、私の身体が、このリシュリペ・ガリム・デロ・アパルパトゥ・ノーリヴの放つアルペナ・ヴィヴィロ・レスラーパ波にパステロ・パスフェートされてしまいそうで! あぁ、とてもエモノルティカピオです!
勇者:何がどうなるというのですか!? 分かるように言って下さい!
店主:そうですね、要約すると、うひゃあ、エルト様、これはついてますね! ってことですよ。
勇者:いや、全然ついてませんし、絶対そんなことこと言ってませんでしたよね!?
店主:ええ? いや、めっちゃついてますよ? 私とかこの界隈のアボストレペカの間では。
勇者:いや、知りませんよ! こいつが僕の手から離れなくなってから、もう散々なんですよ?! 信じられないほどの不運に襲われるし、仲間には見限られるし、なんか朝めっちゃだるいし、なんかよく分からんけどデッドリー・カオス・ドラゴンに懐かれるし!
店主:へぇ。デッドリー・カオス・ドラゴンに。珍しいですね敵意じゃなくて好意を? それはとてもエモノルティカピオな体験ですね。
勇者:全身を舐め回されましたよ。
店主:もしや、カオス・ドラゴン属特有のセテーレ・アリヴィラが何らかのアボスでリシュリペ・ガリム・デロ・アパルパトゥ・ノーリヴの放つアルペナ・ヴィヴィロ・レスラーパ波にパステロ・パスフェート・カニスされているのかも知れませんね、実に興味深い。
勇者:何言ってるかは全く分からないのですが、なんとなく言ってることが分かろうとしてる感じが嫌なのですが。
店主:ほう。あなたにはアルペナ・トゥ・リキュロの才能があるかも知れませんね。実にエモノルティカピオです。
勇者:とりあえず、エモノルティカピオが精神的な高揚を示す意味なのはなんとなく察しました。
店主:そうですかそうですか。まぁ、呪われちゃってるのは本当に御愁傷様ですけどね。
勇者:いや絶対、羨ましいとか思ってますよね?
店主:思ってますねぇ。よくお分かりで。
勇者:はぁ。……あ、ところで、相談なんですけど。
店主:何ですか? 弟子入りですか? 良いですよ、もちろん。それはエモノルティカピオですから。
勇者:いや、違いますよ!
店主:違うんですか、それはメレノルティカピオ。
勇者:逆の意味ですね、それ。
店主:アポルク。
勇者:多分同意なんでしょうけど、普通に喋ってくれませんかね。
店主:ああ、失礼、ついエモノルティカピオしちゃって。それで、相談とは?
勇者:お代の件で……。
店主:お代?
勇者:あ、あの、実はこの剣を持ってからというもの気が付いたら財布からお金がなくなってたりして、持ち合わせがないんですよ。
店主:あー、シピナオ・リチェ・サトリカのフランベートがメレノーシュ・アボシズにカムビラン・ベリット効果したアクルファー・ロビットにアビスト収束した副次的アボスのせいですね。
勇者:解説が必要になる説明はもういいですから。
店主:リシュリペのもたらすアボスのことになるとついエモノルティカピオしちゃって。すみませんねぇ。
勇者:この剣の大分類がリシュリペ、アボスは呪いとか効果のことですね?
店主:ア・メラポルクと言ったところでしょうか?
勇者:アポルクが正解、否定形のメラがついたからメラポルクは不正解、アが付くと正解寄りの惜しい不正解って感じですね……?
店主:アポルク! エモノルティカピオ!
勇者:いや、そうじゃなくてお金のことなんですけど!
店主:ああ、そんなのどうでもいいのですよ。
勇者:え?
店主:これは商売じゃなくてあくまで趣味ですからねぇ。お代なんていりませんよぉ。
勇者:あ、ありがとうございます。
店主:いえいえ、私こそこの巡り会いに感謝したいくらいですよぉ。むしろこれを買い取るとするならば全然お釣りが来ますねぇ?
勇者:そ、そうなんですか?!
店主:そうなんですよぉ。とても貴重な呪具です。たぶん勇者さまの他の装備全部売ったものより全然高いと思います。
勇者:え、この伝説の盾とか鎧とかよりですか?
店主:ええ。
勇者:王家に伝わるやつですよ? めちゃくちゃすごいんですよ? 頑丈で軽いですし。
店主:軽い? いえいえ、それめっちゃ重いですよ。勇者さまが気付いてないだけで。それに世の中にはもっと良い装備がいっぱいありますからねぇ。
勇者:そ、そうなんですか?
店主:ええ、たとえ呪われていなくてもですが。
勇者:呪いが基準なんですね。
店主:もちろん。
勇者:あ、あと手に入れるのも難しかったんですよ! だから、きっと貴重な物だと思うんですよ。
店主:へぇ、そうなんですねぇ。まぁでも、王家なんて死ぬほどたくさんありますからね、実はそんなに貴重でもないんですよねぇ。
勇者:え!?
店主:貴重さで言えば呪いの装備はその非じゃありませんよ?
勇者:そうなんですか?
店主:ええ。現存する呪いの装備の殆どが、二千年から以前の古代に作られたものなんですよぉ。しかも大抵が時代を超越した最高峰の技術で作られたオンリーワンにしてナンバーワン。おまけに素材も超一級です。
勇者:そ、そうなんですか!?
店主:勇者さんの持っている剣もその一つですねぇ。だから、とても価値があるんですよ。呪いを抜きにしても。
勇者:そ、そんな!? 王さまに認めて貰うために倒したエルダー・ドラゴンめっちゃ強かったんですよ! 安いはずがないと思うんです。
店主:まぁそれは大変ですね。でも……それ勇者の適正ないと使えないですよね。
勇者:あ。
店主:一般人の感覚からすると実用性のないゴミですし。
勇者:っご、ゴミ……?!
店主:良くて玄関に置く意識高そうなインテリアですね。
勇者:い、インテリア……。
店主:でも、見た目超ダサいですし、本業のお店の方にもちょっと置けませんね。
勇者:客引きくらいにはなりませんか?
店主:あー。たまにリサイクルショップの入り口に置いてある1/12スケールのガン○ムみたいな感じですねぇ。
勇者:ガン……!?
店主:RXー78ー2なら置いても良いですけど、それはちょっとうちではお引き取りしたくないですねぇ。趣味じゃないです。
勇者:趣味で置くんですね……。
店主:どこのお店もきっと趣味でしか置きたがらないでしょうね。
勇者:そんな、でも王家の貴重な……!
店主:不良在庫の処分ですね。きっと王家の皆さん清々してると思います。捨てることができて。
勇者:そ、そんな扱いなんですか!? 捨てたいほどなんですか!?
店主:ええ、だってその鎧捨てられないでしょう?
勇者:いや、試したことないので……。というか、そんな呪いの装備みたいなことありますか?
店主:呪いの装備なら嬉しいんですけどねぇ。もっとタチが悪いと武具屋の間では評判です。
勇者:でも、呪いの装備と違って外せますよ? ほら。……。右手塞がってるから鎧はめっちゃ脱ぎにくいですけど。
店主:ふうん? じゃあ、試しにその盾捨てると念じながら投げ捨ててみて下さい。窓開けるんで。
勇者:そ、そんな罰当たりなことして良いんですか!? 一応神様が作った神具だって聞いてるんですけど……。
店主:ま、やってみて下さい。責任は私が取りますよぉ。
勇者:えぇー……。
店主:気になりませんか?
勇者:なりますけど……。
店主:レッツトライです。
勇者:じゃあ、捨てる――ッ!
勇者、盾をぶん投げる。
勇者:はは、思ったよりも飛んでいっちゃいましたよ。
店主:ふふ、どうでしょうね。
勇者:いや笑ってる場合じゃないですね、取りに行かないと。
店主:そろそろ聞こえる筈ですよ。
勇者:聞こえる? 何が?
店主:声ですよ。
勇者:声? …………っぐぁ!? 頭に何か、直接! 『この盾は捨てられない?!』って!
店主:ええ。そして、返ってきます。
勇者:返って……くる?
外壁に何かが突っ込んでくる。
勇者:わ、何だ?!
店主:窓の外を見て下さい。
勇者:え? ……うわ、刺さってるー。
店主:そのように勇者専用装備は捨てようとしてもあなたの手元に返ってくるんですよぉ。
勇者:ほ、ほんとに返ってきた……。
店主:それは捨てようと思っても絶対に捨てられません。
勇者:なんですか、その機能。
店主:まぁ、一説では神様の戯れか単なるバグらしいです。
勇者:バグなんですね。
店主:それを逆手にとってブーメランとして使った勇者がいるとかいないとか。上手くやると、通り過ぎてから相手の背中に刺さるらしいです。
勇者:えげつな!
店主:ええ、でも剣をぶん投げて、返ってきた自分の剣に殺された勇者も知ってます。
勇者:怖っ!
店主:良いやつでしたよ。
勇者:そして、知り合いなんですね!? だから詳しいんですか?
店主:ええ。もう随分昔の話ですが。
勇者:そんな厄介な装備なのか、これ。何も知らずに貰っちゃったよ。どうすれば良いんですか?
店主:うーん、私の知る限り、譲渡する以外に手放す手段はありませんね。鋳熔かすことも出来ませんし。
勇者:試した人いるんですね。
店主:ええ、その知人の故勇者もそうですが何人も試してますよ。その結果ゴミと断定されてるんですよねぇ。
勇者:なら、いらなくなれば人にあげれば良いんじゃないんですか。
店主:まぁその結果行き着くのが大抵の場合王家な訳ですけどねぇ。
勇者:あ。
店主:巡り巡って献上品として王家に流れつき、王城の蔵の片隅を陣取るわけですよ。誰も欲しがらないし使い道もないですからねぇ。だから、たまにやってくる何も知らない勇者に押しつけるんです。
勇者:嫌すぎる……。
店主:ま、それでも勇者が死んだらまた王家に戻っていくらしいですけどね。
勇者:……マジですか?
店主:ええ。さっき流れ着くっていいましたけど、これにも諸説あって、そもそも王家の中にはいつぞやの勇者の血が薄ら混ざっているから、なんて話もあってですね、その匂いを嗅ぎつけてやってくるそうです。使えるほどの勇者の血の濃さではないというのにですよ。
勇者:そんな、タチの悪いストーカーみたいな。
店主:まぁ実際その通りなんですよね。
勇者:……さっきの重いってそういう意味ですか。
店主:さぁ。どうでしょうねぇ。ただ、王家界隈では、
勇者:王家界隈て。
店主:勇者の装備を持ってると近いうちに国が滅ぶってジンクスがあるそうですよ。だからさっさと捨てたいんです。
勇者:そ、そうなんですか? まるで呪いですね。
店主:それが本当ならなかなか大した呪いだと思うのですが。我々の界隈では、それら仮定リシュリペにはいかなるアボスもコペルトージュ出来ませんから一切省みられてませんけどねぇ。まぁ世の中にはそういう奇特なコレクターもいるんでしょうけれど。
勇者:へぇ。
店主:ちなみに、お気をつけを?
勇者:え?
店主:その装備を持っていると勇者の死亡率も統計的に爆上がりですので。
勇者:へ!?
店主:まぁ、そんな燃えないゴミのことはさておき。
勇者:燃えないゴミ!?
店主:勇者さま。この剣に宿るのは実は未解明の呪い的アボスなんです。
勇者:そ、それがどうしたんですか?
店主:もちろん名前もありません。
勇者:名前? 剣のですか?
店主:ええ、この剣にもリシュリペのスティリファも、それを構築するアルペナにも、複合的アボスにもです!
勇者:え、いや、言われてもやっぱりよく分からないですけどつまりどういうことなんですか?
店主:名前が残りますねぇ。
勇者:は?
店主:あなたの名前が超古代呪学史の新たな……いえ、この場合は古きですかね? とにかくどこかの1ページ或いはかなりのページに刻まれることになるわけですよぉ。
勇者:僕の、名前がですか?
店主:ね、すごいでしょう?
勇者:すごいですけど、別に興味なんて……、僕はこれをどうにか外したいだけなんです。
店主:しかも、研究に協力してくださるならもっとすごいんですよ? エモノルティカピオなんですよ?
勇者:あの、聞いてますかアスカ殿? 僕は全然興味ないんですなんですが! 早くなんとかして欲しいのですが!
店主:こうした呪いの場合、勿論そうする義務が生じるので強制なのですが、国家予算並みの研究費が付きます。
勇者:国家予算!? そして強制!? どういうことですか!
店主:つまり、あなたの生存に関わるすべての経済活動は経費で落ちるということですよ。さっき財布の話をされてましたが、財布がいらなくなっちゃいますねぇ。エモノルティカピオですねぇ。
勇者:うるせぇ! メレノルティカピオだわ!
店主:まぁまぁ、そう仰らずに。きっと王家から感謝状貰えますよ。そんな廃品回収よりも遙かに評価して貰えますよ?
勇者:この盾と鎧のことをそんな表現しないで貰えますか!?
店主:事実ですしねぇ。
勇者:それさっき初めて知りましたけど! とにかく、この呪いきっついんですよ、お金だけじゃなくて、色々失ってる気がします。これ、具体的にどんな呪いなんですか? シピナオ・リチェ・サトリカのフランベートがメレノーシュ・アボシズにカムビラン・ベリット効果したアクルファー・ロビットにアビスト収束した副次的アボスのせいですね。とか言ってましたけど。
店主:おお、よく覚えてましたねぇ。
勇者:自分でもビックリですよ。
店主:まぁ、そうですね、リシュリペ・ガリム・デロ・アパルパトゥ・ノーリヴ全域のラヴェンシヴァを軽くトリテンプーフした感じの呪い的アボスは……、金運最低化、印象悪化、頭頂部の軽い脱毛、運動時の動悸息切れ、慢性的な肩こり腰痛、あと、尿のキレが悪くなる。
勇者:何ですか、そのクソみたいなアボス。
店主:結石も出来やすいそうです。
勇者:嫌すぎる!
店主:あーそうそう、副次的アボスととしてはですね、
勇者:セテーレ・アリヴィラが何らかのアボスでリシュリペ・ガリム・デロ・アパルパトゥ・ノーリヴの放つアルペナ・ヴィヴィロ・レスラーパ波にパステロ・パスフェート・カニスされているんでしたっけ?
店主:ですね。ええ。加えて、精神力及び筋力及び知力のの飛躍的な向上と成長限界の突破、あと寿命も延びるかも知れませんね。
勇者:……筋力と知力ってもしかして。
店主:ええ、さっき盾ぶん投げた時とアルペナ・トゥ・リキュロ適正に顕著ですねぇ。
勇者:……ちょっと、迷いますね。
店主:でしょう、えーと、他には……あ。
勇者:何ですか、あ。って。
店主:何でもありませんよ。さ、歴史的発見に協力して時の人にカラポロ・ルヘインしましょう!
勇者:誤魔化すなよアスカ殿。聞かせたくないレヴァニロ・アボスがあるんでしょう?
店主:そ、その語彙は、まだ言ってない筈なんですけど私……まさか、呪言体系をアリキュロ・シパリエ・ノルティカピオしたんですか!?
勇者:ア・メラポルク。僕はアスカさんの語彙から仮でコペルトージュしただけですよ。何を隠してるんですか? アボスを教えて下さい。
店主:え、えっとですねぇ。
勇者:早く。盾ぶん投げてここにあるリシュリペを強制的にアフェアンドーポしますよ?
店主:そ、それだけはやめて! わ、分かりましたよぉ……。
勇者:それでヴァニロ・アボスは何ですかアスカ殿?
店主:メロ・サウペレ・リキュマリアです。
勇者:は?
店主:メロ・サウペレ・リキュマリアなんですよ。
勇者:つまり?
店主:一生、異性にモテません。
勇者:今すぐアフェアンドーポして下さい。
店主:いや、アフェアンドーポって、これ、歴史的発見ですよ!? それを、勇者さま! リステルをアフェアンドーポするというのですか、そんなのもったいない!!
勇者:リステルですか?
店主:あ……。だ、だめですよぉ! コペルトージュした程度のアルペナ・トゥ・リキュロじゃ出来るはずありません!
勇者:試してみましょうか? 盾ぶん投げた時みたいに。
店主:や、やめて! 待って! それはあんまりにもメレノルティカピオですよ!
勇者:知ったことかぁ!
店主:そんな、勝手すぎる!
勇者:あんたも勝手だろうが!
店主:せ、せめてアルペナだけでもランファル・ゲラーさせて!
勇者:世話になったな、アスカ・ゲパルム・テリオレ・オーゾ・クラヘム。
店主:あ、待って! セポレイカンパしようとしないでぇ! 勇者さま!
勇者、窓から飛び出していく。
勇者:あばよ。
店主:え、エルト・アレクリッド様ぁ! 考え直して! ロローン! ロローン!
◆◇◇◆
呪いの装備。 音佐りんご。 @ringo_otosa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます