最終話 勇者になる日まで
気が付くと、僕は銀色のお兄さんの胸の中にいた。
銀色の長髪と銀色の瞳……青白い肌は、ほんのりと銀色に光っているようにも見えた。
「大丈夫か?少年よ」
え!?ええっ!?誰?
僕は、涙で良く顔が見えなかった。
「世界を救ってくれて礼を言う。有難う。闇に落ちし者の心に共鳴しなかったそなたの勇敢な心にも感謝する」
「マークは、死んだの!?」
「あの者は、無に返ったのだ」
「「「良く分からないよ!!」」」
僕は、思い切り泣き叫んだ。
「分からなくても良い。このまま我が森へ帰るぞ。目を閉じてるが良い」
銀色の人は優しく言った。
我が森……?
誰、この人?
次に目を開けた時には、2か月近く時が流れていた。
しかも全く、知らない場所にいた。
すべてが銀色に輝く土地。
木々の葉っぱも銀色だった。
「大丈夫?」
茶色の髪のお姉さんが、僕の顔を覗き込んできた。
「イリアス様が言うには、あなたは精神的ダメージが大きかったという事よ」
「イリアス?」
「滅多に姿を見せない方だけど、あなたとアンナ様を連れてお戻りになったわ」
「!?」
僕は、ますます分からない。
「そんな言い方で、タクトに分かる訳ないだろう、サヤ」
後ろから、アンナの声が聞こえた。
良かった、元気そうだ。
「神剣が、神の姿に戻って、我らを回収した後に自ら神殿に戻ったんだ。」
「???」
アンナの言う事の方が分からないよ。
そう言うとアンナは、僕の近くに寄って来て言った。
「本当に良かった。あのまま闇に飲み込まれるのではないかとな・・・お前がマークウェルの方に行ってしまわなくて・・・」
「アンナ・・・」
「お前は、マークが大好きだったからな。」
アンナの顔は、大真面目だった。
「お前が大丈夫そうなら、出発するぞ!!」
「えっ!?」
「冒険者ギルドの、契約はまだ切れてないぞ。Bランク!!行くぞ!!」
「待って!!アンナ!!」
「ギルドで泣くなよ。」
僕、泣いてないモン!!
(完)
勇者になる日まで 月杜円香 @erisax
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