第一章 - その十
その十
「……ダーリン……」
「マサキ様……」
「……ゆ、勇者殿……」
ウッ、ウーン……ンッ? お俺は寝ていたのか、そんじゃあ、俺が見ていたのは夢? そうだよな、なにせ賢者のじいさんが最初低い声のように
「マサキ様、話はまだ先があるのですが……」
ほらやっぱり、そうだ。まだ話は始まったばかり、それなのになんで寝てんねん、て俺を起こしたんだ。
「マサキ様、天魔の女王ヴォーナと勇者キール様に四人の妖精様のお話の途中ではございますが、私どもの賢者様のご容態が……」
エッ、なに? ヴォーナにキールと妖精たちって俺の夢に出てきたやつらじゃん……って、俺はいつ寝てしまったんだ?。
「賢者様の様態が、ってどうしたの?」
目の前で俺を見る賢者のじいさんはなんだか辛そうに肩で息をしていて目も
「賢者様は日頃お使いになられない
賢者のじいさんを見れば、本当に辛そうで、見ている俺もなんだか責任めいた負を感じる。
どうしていいのか分からず、とりあえず、賢者のじいさんには早めに休んでくれ、と言い、それから俺とメルはその場に残され少し気まずい空気が流れ、その雰囲気にのまれそうになった時にチビの妖精候補たちが現れた。
「オイ、メル様の勇者らしきダーリン野郎、何を勝手に傷心ずらしてんだよ。メル様は久しく目に見えたメージュ様を見ることが出来て感無量って感じでその頃の想いに
そうか、あの夢のような出来事を見たのは俺だけじゃあなかったんだ? そうなんだ、メルも俺と同じようにあの場を見ていたんだ。それりゃ久々に目に映るメージュというメルの師を見るからには想いもひとしおなのだろうな。メルを見ると頬には涙がながれたあとがあって、目には涙が残っていて、まだ頬を濡らしそうだ。
「メル、なんだよ。女神になる前のメージュの姿を見れてうれしいんじゃないのかよ」
「もう……ダーリンはなんにも知らないからそういう風にいえるのよ……」
メルはそう言い、少し言い
「マサキ様、ここは薄暗いでしょうから、このホタルたちをのこしておきます。それとよくお休みになられるようヌチ水もおいておきますから、のどが渇いたときにお飲みになって下さい。これは酒ではないですが、誘眠作用があるのと体の異常を整えることの出来る飲みものです。疲れた体を今日はこの飲みものをお飲みになって、どうぞお休みなって下さい・・・・・・アッ、それと多分マサキ様の住む世界にはこのホタルというものはなく、初めてお目にかかるものだと思いますが、このホタルは私の飼っているもので、人の心情を感じとり光をつよめたり、眠りに就く頃には光を閉じ邪魔にはなりませんし、何かあって目を覚ました時にはその人の思考に合わせまた光を出します」
そう言うと俺に手のひらを見せ、その手のひらには俺の知っている蛍とは違い、以上に大きいサイズはカブト虫くらはあるものを見せ、俺の顔を見て少し顔を緩め手のひらのホタルを宙に解放した。ホタルたち三匹は各々壁へと向かい、そこに定着すると光を出したが、結構な光源でいたが、それほど目には刺激はなく、やさしく部屋を照らし出している。それを見て、ミールシュバッツは床に置いていた
俺は手にあるものを鼻先に持ってきて匂いを嗅いでみた。水と言っていた、だけに匂いなどはない。少しだけ口をつけてみると、やはり水だ。しかし、のど越しの
「ダーリン、それ美味しいわよね。まだ飲みたかったら、その籠に急須があるから、自分で注いでのんだら?」
足元の籠をのぞいたら、メルの言ったとおり急須があって、それを俺はコップに注だ。
「フ~ン、なんで分かったの? 籠に水が入っているって?」
「なに言ってるのよ。私はこれでも水属性の妖精で、これから女神になるっていってるに、水の在りかを知らないなんて、おかしいでしょう?」
俺は、半分くらい口含みながらメルにお前も飲むか? と急須の口を向けると、メルはやばいことを言い出した。
「私は飲まないわ。私の分もダーリンにあげる。気にしないで、私の分も美味しく頂いて……」
そう言いながら、手元のコップを俺のほうに差し出した。やばい、こいつ寝ないつもりだ。ってことは、こいつ俺が寝たあと好き放題するつもりだ。
「そうか、それならそれはいらないな?」
そう言い、俺はメルから水を奪うようにとり、シェリーにその水を携帯していたバッグから皮の皿を取り出し、コップから水を移し飲ませた。。
それから数十分の無言の時間が流れ、俺の視野が暗くなったのを感じた。ウッ、やばい。俺の心を読み壁のホタルたちが明るさを絞り暗くしようとしていったんだ。ってことは、俺はもうすぐ寝るとこだったんだ。メルのほうを見ると、彼女はベッドに腰かけうつらうつらとし眠そうにしている。ただ、俺にはひとつ疑問があった。それはメルは俺が目を覚ました時、彼女はなぜか目に涙をため悲しそうな表情をしていた。妖精時代のメージュを見て懐かしそうになるはずが、なぜ?……なぜメルは悲しい表情を俺に見せていたのだろうか、それが今どうしても訊きたくてメルに声をかけた。
「ネエ、メル。ちょっと訊いてもいいかな? どうしてメルはメージュを見て悲しそうにしていたんだ」
「ええ、ダーリンには分からないかもしれないけど、メージュ様は今日見たあの戦いの後、メージュ様は女神となられ、そのあと、女神になられたのがいけなかったのか……メージュ様だけお命をおとされたの。それはもう酷い最後で、キール様を一生懸命に
そう言い、メルは寄りかかっていたベッドに顔を押しつけ俺に涙を見せたくないのか、肩をふるわせしくしくと泣いていた。
メルが泣きだし数分が過ぎ、俺はどういう風にメルに声をかければいいのか分からず彼女の背中を見ていたが、やはり
「ダーリン、もう大丈夫よ。ほんとはこれまでたくさんメージュ様を思うたびに涙を流したから、もう大丈夫なはずよ。心配しないで……っね」
「ああ、そうなのか? これからまたメージュのことで悲しくなったら、いつでも俺は胸を貸してやるよ……まあ、俺の胸でよければな」
「ウッ、ウン、ダーリン、ありがとう。今日はとても優しいのね。ねえ、ダーリン、今日はダーリンのとなりで寝てもいい? とりあえず、今日はその胸を貸してもらえないかな」
「なに言ってんだよ。お前、俺が寝て、起きたらいつも俺の胸に顔をのっけて寝てるんだろうが」
「アッ、そうだったわね……なら仕方ないわね。ホラ、チィーにヒュー、それにキャラーにみんな出てきてー。あなたたち、さぞお腹空いたわよね? さぁ、お食事の時間よー」
そう言われ、俺の胸ポケットから次々にチィーたち精霊が出てきて、俺の前で背中の羽を蜂みたいにブンブン唸らせてメルの声を待っているようだった。
「おう、メル様のダーリン野郎、久しぶりだな。今日もおめぇが寝たあとやっと食事の時間と思っていたが、思っていたより早くその時間になっちまった……よろしくな」
「だめよ、チィー、そんな乱暴な言葉をダーリン様に言ったりなんかしたら……わたしね、今日は前々から気になっていたとこからダーリン様の精気をいただくのよ。だからダーリン様には気持ちよくしていただかないと、美味しい精気をもらえないわよ」
「なんだよ、キャラー、その気になるとこって、おめぇ、この前もダーリン野郎のズボンの中に入ろうとしてメル様に怒られたんじゃないかよ。もしかして他にもあんのかそんなとこが、あんなら俺っちにも教えてくれよ」
「どうしようかな~。どうせならわたしひとりの秘密にして独り占めしちゃおうかな、って思っていたんだけ……そこはね。わたしたちの胸にはダーリン様のようにあのポッチとした突起がないじゃあない。だから多分たくさんの精気が、ってね」
「えっ、あのポッチってしたとこ? それならあたいはいつもそこからダーリンのものをいただいてんだけど?」
「エ、エェー、なんだよー、ヒュー、おめぇいつもダーリン野郎のそこからその精気を頂いていんのかよ……ってどうだよ。そこの精気の味は? もう元気バリバリって感じか? っていうか、おめぇそういやー最近まえよりの更に太った感じっていうか……って言うよりやっぱ太ったんじゃねぇ」
「エ、エエェー、いやだー、あたい太ってなんかないよー。チィーの目の錯覚だよ~……きっと」
「ねぇ、ヒューちゃん、ところで、ダーリン様のあそこのお味どうだった?……やはり
そう言ってキャラーは、先に俺の首元を狙って一気に飛んできた。キャラーは、俺のシャツの首元から最短距離でお目当ての俺の乳首を目指すつもりだ。だが、それをメルが手のひらで
「だめよ。キャラー、あなた、そんな
それを聞いた瞬間、精霊たちはいっせいに壁に向かい、着くなりメルの合図を待った。目はやはり俺の首元をやつらは狙っているようで、目がいつもの感じではない。
「ハイ、いいわよ」
メルの合図を聞いた刹那、いっせいに飛んでく来るのは、やはり怖い。思わず俺は、体を
「フンッ、いい気味よ。そこは今夜わたしのものだから……エッ、やだ~ダーリン、なにをそんな目でこっちを見てるのよ……ハイ、もうチィーたちー、もうダーリンからのお食事は終わりよ。出てきなさい」
メルが言うと、チィーたち妖精がめり込んでいたベッドから不満たらたらで出てきた。
「なんですかー メル様、メル様がいい、って言ったから飛び込んでダーリン野郎の精気を吸い尽くしてメル様が今夜は
「エッ、そうだったの? それならなんで早く私に教えてくれなかったの?……でもね、それはもいいわ。しかし、そのプラン頂くわ。でも、また今度ね。今夜はあなたたちあの窓の外が見えないの? あの窓の外にはあなたたちの好きな木々や花々が咲き誇っていって、あなたたちを待っているわ」
それを聞いた瞬間、精霊たちの歓喜の声が響いた。
「なんだよー、オラッちの大好物があんなにたくさんあんじゃあねぇかよ~。そんじゃな、オラっちの大事なダーリン野郎、今夜は大事なメル様をやさしくしてあげなよ」
そう言って、他の精霊たちと外へ飛んでゆく。だがひとりキャラーが俺の頬にキスしてきた。
「ダーリン様、名残惜しいです。ですが今夜はメル様にそこはお譲りいたしますわ……くれぐれもメル様にはジェントルマンとしてのやさしい手ほどきでのお誘いを、メル様はなにせそのようなことは初めてのこと……アッ、そうだわ。わたしがダーリン様とメル様の絶頂にいたすまでのわたくしめが今夜は……アッ、ガ~」
次の刹那、言葉の途中にメルが「あなたが一番邪魔よ」と言い、指で外へと弾き飛ばされてしまった。
「さぁ、ダーリン、寝る? もう寝る? ねぇ、寝るわよね?」
「ああ、寝るけど、メルは先に寝ていてくれないか? 俺はもう少ししてから寝るから」
「ウ~ン、もう早くきてね。私の傍に……」
ああ~、なんだろう? 俺の貞操の危機が、男である俺がなんで? メルはリンに引けを取らない程のいい女だ、というのに……嫌々、これにはどうしても俺が男としてのケジメを果たさなくてならない宿命というものを背中に
何気に メルを見れば、アイツはベッドの上で横になり肩肘に顔を乗せ、左手で俺に早く来いと手招きしている。そんなアイツを見るとなぜか反抗したくなってくる。
「シェリー、俺はもうすぐ寝るから先にベッドに入っていて……」
シェリーにそう言うと、シェリーは俺の言葉を理解したのか軽く返事してベッドに飛び乗りメルの傍に体を横たえた。
「ああぁ~、もう、くさい。もうシェリー、あなたすごく臭いんですけど……アッ、私はね、あなたが嫌いで言っているんじゃなくて、ここに来るまであなたがお風呂に入らず体をきれいにしてない、って言うか……」
メルはシェリーに思わず言ったことを分かってもらおうと一生懸命に弁明の言葉を探してしまいには俺に助けを求めているのか、俺をチラチラ見ている。それにシェリーの方もメルの言ったことを分かっているのか、下を
俺は、のどが渇きコップに水をいれ飲んだ。そして、シェリーが落ち着いて眠れるようにと頭などを撫で、やがてシェリーはゆっくりと目を閉じ眠りに
人の感情を感じとり光を調節するホタルの光がだんだんと暗くなってきたころ、俺も眠りに就こうとしたころメルが急に体を起こしだした。
やはり来た……俺はどうすればいいの分からず寝たふりをしてメルの動きを夜空の見える天井から
メルを引き寄せたのはいいが、俺はどうしていいのか分からず、ただ泣いている彼女の髪を撫で、早くメルの気が落ち着くのを待つしかなく、やがてメルは泣き疲れたのかそのまま眠りに落ちた。そして気を張っていた俺も誘われように眠りに就いた。
ドラゴンズ・アンド・フェアリーズ 村上 雅 @miyabick23
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