第一話 バナナの皮でツルッと滑って死にました。
目を覚ますと、ドアがあった。まるで小学校の教室に設置されている様な、無機質な引き戸で、そのドアの周囲には何もない。
どうしたものかな…と思っていると、ドアの向こうから声をかけられた。
「あ、次の方。どうぞお入りください〜」
まるで役所の受付窓口の様な、事務的な男性の声に、思わず「あ、はい、失礼します」と答え、引き戸を引いて中に入ると、そこにはまさに役所の窓口の様なカウンター式の受付があり、ジャケットにカッターシャツでネーム札を首からぶら下げた中肉中背、平凡顔の男性が立っていた。
「どうぞこちらへ、椅子におかけになって少々お待ちください」
促されるままに、案内された椅子に腰掛けた私。今更だが、ふとある疑問が頭に浮かんできた。
-あれ?そもそも私なんでここにいるんだろう?てかここはどこ?私は普通に会社行って仕事終わって帰る途中だったはずだが…どうも会社を出てからの記憶がない…たしか、家に帰ってから今ハマってる異世界ファンタジー(ハーレム系じゃないやつ)の録画を見るのを楽しみにしていて、ワクワクしながら帰路に着いたはずなのだが…と、考え事をしていたところ、先ほどのお役所系平凡男性が奥の棚から取り出したA4サイズ(どうやら私の方が書いてあるらしい)の紙を手に持ってやって来て、カウンター越しに設置された椅子に腰掛けた。
「お待たせしました。では順番にご説明させていただきますね」
物腰の柔らかい口調で話し始める。
「まず、あなたは死にました。バナナの皮で」
ーん?
「そして、この後は死亡確認サインを記入していただいた後、とある世界に転生していただきます」
ーんんんっ?
「なお、転生時の姿とルートについては、転生ガチャを回していただき、ガチャで出てきたお姿、そしてルート選択者として転生していただきます。それではガチャコーナーへ参りましょう」
ーんんんんん、ちょ
「ちょっとすみません‼︎ 待ってください。私って死んだんですか?じゃあこれは漫画やアニメでよくある異世界転生的な⁉︎ いやそれより、バ…バナナの皮でってどういう事ですか⁉︎私全然覚えてないんですけど…というかガチャで姿決めるってなんじゃそれっ⁉︎」
焦って思わずすごい勢いで言ってしまったが、それに動じる事もなくお役所系平凡男性は、事務的平坦な語り口調で、私が道端に落ちていたバナナの皮を踏んで滑って転んで、頭を打った際に急性硬膜下血腫になって亡くなった事を説明してくれた。一言も笑う事なく…。
そして、何ということか…希少性の高い死に方をした事により、得点として転生ガチャ(そもそもガチャってなんだよ‼︎)は通常のガチャに追加してチートガチャのオプションが付く事を教えてくれた。
と、言うことで…その後、お役所系平凡男性に案内されてガチャコーナーに行き…自分の転生姿とルートを決める(てか考えれば考えるほど、ガチャで決めるなんておかしいだろ⁉︎)ガチャを引いた。
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レア度5
・イケメン魔王
・ハーレムルート
(巨乳美女出会い系)
オプション:美しい胸筋&モテフェロモン
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「な、ななななななんじゃこりゃ〜‼︎‼︎‼︎‼︎」
私の雄叫びと共に、視界がグニャッと曲がり始め、それと共に私の意識は闇の中に吸い込まれて行った。
(薄れゆく意識の中…遠く聞こえてきたのは案内業務の終了とともに、堪えていた笑いを爆発させた男性の笑い声だった…『ぶぁっはっはっはっは〜ば、バナナの皮って、バナナの皮って…あ、あははは』)
異世界ハーレム系が嫌いな女(貧乳)が、異世界転生したら…どうなった? ヘタコグサ @hetakogusa
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