第6話 退院

「おっ、イチゴジョアがやってきたかー。」


退院の日の朝食を見ての一言。病院の食事は消化器内科に入院しているせいか、凄く胃腸に配慮されているもので美味しかったです。茄子や冬瓜、大根などを柔らかく煮たものとか青菜のおひたしとかゴボウとか海藻の汁物やきのこご飯とかね。おかげで運動できなくても便秘しませんでした。


 そしてアレルギーなのか不耐症なのか下痢をするので食べられなくなった乳製品と毎朝戦ってました。牛乳、ヨーグルト、ヤクルトときて全部残していたら最後にとうとうジョアがやってきました。これはご馳走じゃないかー。入院食を見るのが好きな家族に写真を送りつつジョアきたーと言うと


「持って帰ってきて。しかもイチゴ味じゃない!」


ときました。んーまあ、午前中退院だし大丈夫か。そっと取り置きました。


 さて退院を朝の回診で許可され、退院して2週間後、診察を受けにくるようにと言われました。薬も2週間分でました。薬剤師さんが薬について質問はありますか?と言うので

そろそろ花粉症の季節。飲み合わせについて聞いてみました。


「あ、この薬は全然そういうのは無いです。一応、お薬手帳は持ち歩いて下さいね。」


なんかこの説明のせいで、この大層な名前がついている眩暈めまい薬は家族からきっと酔い止め薬みたいなものとか、飲んでるって安心感のためだけの薬では?とか推察されラムネと以降呼ばれるようになってしまいました。調べたらちゃんと眩暈用でしたよ!ごめんなさい。


 さて、実はここまで頑張ってきたペーパードライバーの亜理子ちゃん(仮名)が昨晩36.9分から徐々に発熱と連絡を寄越しました。彼女のための発熱外来と私の退院のお迎えで相棒がまたもやパニック。何時が退院かしつこく聞いてくるので、仕方なくナースコールを。


 やってきたメガネイケメン男性看護師は


「聞いてきますね。」


頼もしいです。彼が戻ってきた時はちょうど私が退院指導を別の看護師さんから受けている所。息を切らせながら、


「10時でいけるそうです。事務の人が来てから家族に連絡した方が良いですね。」


家が病院から車で10分と告げてあったので(僻地だけど車があればそんなもんな田舎暮らしです。)そう教えてくれました。


「あら聞いてきてくれたの、ありがとうね。やっぱり混んでた?」


「はい、今日は凄いみたいです。」


同僚を労ったねぎらった後の退院指導の看護師さんによれば、今日退院の患者さんが沢山いるそうで、


「なんだか寂しくなっちゃう。」


沢山迷惑をかけたのにさらっとそんな風に言えちゃう看護師さんっていいですね。そして退院後は体力が弱っているから無理をしないように等、生活指導されました。


 会計の方は白いワイシャツにネクタイを締め、黒いスラックスで現れました。なるほど服によって事務の人だと分かりやすい。計算間違えたりしてなさそう。うんうんうなづくとクラっと眩暈。ありがとうございました〜も頭下げられません。決して金額に不満があってこんな態度なわけではありません許して。


 さて、いよいよ退院です。ナースステーションで名前とバーコードが印刷された腕輪を切ってもらい点滴スタンドとサヨナラをしていると、看護師さんが、


「結構、うちのナース達に眩暈めまい持ちがいるのよ。無理すると再発したりするから気をつけてね。あとね、眩暈さんは決して後ろを振り返っちゃダメよ。クラっときちゃうからね。あ、迎えの方?この人ね、まだ、真っ直ぐ歩けないみたいなの。手引いてあげてね。ほらっ」


荷物を先に車に置いて戻ってきた相棒は看護師さんに手繋ぎを強要されてました。点滴スタンドと別れを惜しむ私に家族を頼りなさいよなんて諭してさとしてましたからね。


 連日、家族連絡で、相棒がいかにピリピリして壊れているか聞いていたものですから、「いや〜無理かも。」と看護師さんに答えていました。ところが、躊躇うためらう私に対して当の本人はなんのてらいもなく、


「ほら」


と手を出してきました。手を繋いで人前で歩くなんてねぇ。久方ぶりです。お互いの手はしばらく子どもを捕まえておく手でしたからね。


 それから大層親切な相棒は外出時は手を差し出してくれてましたが、実際は手繋ぐより腕を掴んだが歩きやすいんだな。しかし。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

突然、入院してきました。 柴チョコ雅 @sibachoko8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ