第7話② 22歳、唯奈の恋(2)

「ゆいな、唯奈ぁ・・・」

ヒロシが、めくりあげたTシャツから晒したバストに顔を押し付けてくる。


「あっ・・・やんっ・・・」

抵抗する私の両手を片手で掴んで、エッチな愛撫を続けていく。


夏休みの遅い朝。

私達は戯れながら、白い海を漂っていた。


※※※※※※※※※※※※※※※


興奮が静まった後。

ヒロシは服を着ながら、ポツリと呟いた。


「明日のオーディション、もし、受かったら・・・」

「えっ・・・・?」


私が聞き返したのを聞こえない振りをして、ヒロシは部屋を出ていった。

その日、ヒロシが戻らない部屋で私はジッと、待っていた。


※※※※※※※※※※※※※※※


「夢は夢のまま・・・」

ヒロシが引きつった笑みを浮かべて呟いた。


私が卒業して、就職した後も付き合っていたけど。

ヒロシは学生のままだった。


大手のオーディションに受かるまで、留年を続けていた。


「だから、さよならだ・・・」

キザに放ったセリフは陳腐過ぎて、私は笑ってしまった。


「そう・・・頑張ってね」

私は作りようのないセリフをなぞるように呟くと、背中を向けて離れていった。


頬を流れる涙をヒロシに見られないように。


さようなら。

シンプルなフレーズなのに、声に出せなかった。


※※※※※※※※※※※※※※※


テレビの画面に小気味よく身体を弾ませるヒロシが写っていた。


「良かった・・・頑張ってね」

決して言葉が返ってこない男に向かって、私は呟いていた。


ようやく、メジャーデビューした。

かつての彼に向かって。


でも。

それで、いいじゃん。


ヒロシ。

カッコ、いいよ・・・。


私の想い。

届いたかな?


まぁ、いっか・・・。(笑)



※※※※※※※※※※※※※※※


お終い。

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恋!(プロット集)♯02 進藤 進 @0035toto

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