第7話 君は僕で僕は君(7)
うるは:仕事と帰宅を繰り返す毎日を送っている私は今日も家のベットで、メイクも落とさず倒れ込む
うるは:お盆休みは貰えたからそれまでの辛抱だと思って乗り切ろう。実家にも帰らないとだし
うるは:……銀河君はまだ、地元にいるのかな?
うるは:もう2年経つのに、私の中の最後の恋は銀河君だけだった
うるは:未練とかはないはず。それでもふとした時に何してるのか気になる時がある
うるは:もしかしたら、少しずつテレビに出れるようになった私を、彼もどこかで見ているのかもしれない
うるは:私は何となく、彼が小説サイトで投稿していた小説を見る
うるは:……この小説
うるは:小説のタイトルだけで何のことなのか、誰のことなのかがわかった
うるは:その小説のセリフから、妙に心に残る言葉があった
うるは:痛みも幸せも半分にするんじゃない
うるは:痛みも幸せも二人で分かち合うこと
うるは:自分の気持ちを素直に話すと、痛みと幸せの分だけ、相手を好きになれること
うるは:この言葉は紛れもなく私と銀河君が分かち合えなかった事だった
うるは:あなたの言葉をもう一度聞かせて欲しい
うるは:分かち合えた上でこのタイトルになった理由を聞かせて欲しい
銀河:この日はあの日と同じように、照りつける夏の暑さでじんわりと汗をかいていた
銀河:この公園でうるはを見つけた時の事を思い出す
銀河:あの時、メガネかけてたのにキョロキョロしても僕に気づかなかったのはおかしいよ
銀河:今思えばあのジャングルジムから飛び降りても死ねるわけがない
銀河:スマホの充電器で首を絞めるのはアドリブだったのかな?
銀河:僕が叫んだ後にびっくりして叫ぶのも面白いね
銀河:あの時の君の演技は……今でも素敵だったと思うよ
銀河:ああ、だめだ。この公園に来ると君を思い出してしまう
銀河:君を思い出すと…涙が勝手に出てしまう
銀河:どうして…こんなに愛おしいんだろう……
銀河:君を好きでいた日々が今でも、僕の胸を締め付けていた
銀河:……電話だ
銀河:……もしもし?はい。はい。
銀河:……え?書籍化ですか?
銀河:はい!もう少し待ってもらえればゆっくりお話出来ます!
銀河:(僕は急いで家に帰る)
うるは:………
うるは:居るわけないよね。私との思い出をわざわざ振り返るわけないか
うるは:似たもの同士…………やっぱり違うんだ
銀河:僕の書いた小説が全国の書店で販売されることになった
銀河:本格的に小説家になれる日が来るなんて思いもよらなかったけど本当によかった
銀河:うるはと別れたというのに、うるはと過ごした経験の小説が書籍化なんてどこまでもうるはに頭が上がらない
銀河:そんな街の中を歩く。20数年居たこの街の中で、一際輝くオーラをまとった人を見つけた
うるは:この育った街の中で平凡そうなあなたを私は遠くの方からすぐに見つける
うるは:メガネ姿の私に気づける人なんて一人しか居ない
銀河:遠くの方にはうるはが居た
銀河:紛れもない、あのメガネ姿はうるはだ
銀河:仕事で忙しいはずの君がなんでここにいるんだ
うるは:あなたに会いに来たわけではないけど、どこかで会えると思っていた
うるは:どこかで会えたら話したいことが沢山あった
銀河:どこかで会えたら君の出てるドラマの話をしようと思っていた
うるは:1歩ずつ確実にあなたに近づいていく
銀河:遠くなった心が少しずつ近づいていく
うるは:あなたの今の気持ちが知りたい
銀河:君の今の気持ちが知りたい
うるは:私はスマホを取り出して小説サイトを見る
うるは:あなたが書いた小説を開いて、このタイトルの意味も知りたかい
うるは:あなたが書いた小説のタイトルは
うるは:君は僕で僕は君
銀河:君のおかげで書籍化することが出来た
銀河:君には感謝してる
銀河:あと数メートルで君に近づくと襲いかかるものがあった
銀河:それは恐怖だった
うるは:あなたに近づく度に私自身が遠くなる気がした
うるは:女優としてのうるはが居なくなる気がした
銀河:僕の夢はまだまだこれからだ。だからこそ君と離れておくべきだと思う
銀河:うるはと僕はすれ違う
うるは:あなたの懐かしい香りがする
うるは:あなたも同じ気持ちでいるのかな?
うるは:あなたの香りで私は泣いている
銀河:君の懐かしい香りで僕は泣いている
銀河:君も泣いているのだろうか?
うるは:あなたも泣いているのかな?
銀河:僕は…君に会えなくなったんだ
うるは:私は…君に会うと今の私が居なくなってしまうの
銀河:君ともっと話したいのに
うるは:今の私を見て欲しいのに
銀河:心はすれ違うばかり
うるは:似たもの同士のはずなのに
銀河:僕達はいつも考え方が同じだった
うるは:私たちは思いが通じあっていた
銀河:だから、二人の合言葉を使うようにした
うるは:特別だから合言葉を使うようにした
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:気持ちは分かり合えない
0:君は僕で僕は君
0:〜END〜
【声劇台本】君は僕で僕は君【サシ劇】 ゆる男 @yuruo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます