第6話 君は僕で僕は君(6)


0:月日が経ったある日のこと


銀河:……また落選か


銀河:全然上手くいかないじゃん…


銀河:うるはは東京で舞台を中心に活躍している


銀河:近々、ちょっとした役でドラマにも出るらしい


銀河:うるはは確実に成果を上げて頑張ってるのに…僕は何をしてるんだろう


銀河:うるはに送ったラインはまだ帰ってこない


銀河:舞台の稽古か、打ち合わせをしているんだろう


銀河:最近毎日こんな調子だ


銀河:月に1回、うるはと会ってる。毎日電話もしてる。それでも毎日君を思ってしまう


銀河:うるはに対しての好きな思いは募るばかりなのに、辛い思いも募ってく


銀河:どうしてこんなに余裕がないんだろ




うるは:銀河君のラインはいつも稽古が終わったあとに返すことにしてる


うるは:今返すと、私は稽古どころじゃなくなってしまいそうだから


うるは:私は毎日、それなりに充実してる


うるは:バイトして、稽古して、家に帰って銀河君と電話をする


うるは:そんな日々でも少しは寂しさは紛れてくれる


うるは:小さな幸せでも、噛み締められるような。そんな人になりたいと思う




0:銀河のスマホが鳴る


銀河:うるは!?


銀河:……ふぅー


0:銀河は電話に出る


うるは:君は僕で


銀河:僕は君


うるは:稽古終わったよ


銀河:うん、遅くまでお疲れ様


うるは:ありがとう


銀河:……


うるは:ん?どうしたの?


銀河:え?何が?


うるは:なんか元気ない?


銀河:そんなことないよ


うるは:……そう?


銀河:うん


うるは:……


銀河:話すことないなら切ってもいい?


うるは:え?


銀河:じゃあね


うるは:待って、何その言い方


銀河:何って何?


うるは:何か変だよ


銀河:……そうかな?


うるは:銀河君が毎日連絡してくれるって言ってたじゃん。確かに連絡してくれるけど


うるは:話すことないなら切るなんて言ったことなかったよね?


銀河:……毎日連絡してるからもういいかなって


うるは:それが変だって言ってるの!


銀河:もう、君のこと考えるのが苦しいんだ


うるは:……え?


銀河:君のことは好きなはずなのに、会えない日が続く


銀河:君が女優として活躍すると嬉しいはずなのに、何もしてない僕に嫌気がさす


銀河:二人とも少しは成長して、似たもの同士だったはずの心はズレていくばかりだよ


うるは:……それは私も同じこと思ってた


うるは:私は銀河君のことは好きなのに、なんで遠くなっちゃったんだろうって


うるは:あの時、銀河君のために地元に残るって言えば、この気持ちにはならなかったのかなって


銀河:……僕もそれは思ってたよ


うるは:ほら、似たもの同士じゃん


銀河:でももう戻れないだろ!


うるは:……うん、戻れないよ。私、東京まで来て自分の夢を追いかけてるんだもん


うるは:今更、銀河君のために戻ろうとは思わない


銀河:……そうだよな


銀河:なら、もういっそ別れるか


うるは:……どうしてそんなこと言うの?


銀河:うるはが全力で夢を叶えるためだよ


銀河:今こうして電話してる時間だって、うるはは舞台のセリフを覚えたり出来る


銀河:それでいいと思わない?


うるは:………そうだね


銀河:……うん


うるは:私たちはお互い別の道に進もうね


うるは:銀河君の小説が全国に渡るようになったら絶対読むから


銀河:……ありがとう




銀河:僕とうるはが別れてから2年が経つ


銀河:あれから連絡もしてないし会うこともなかった


銀河:それでも、どこかしらでうるはの姿は見かける


銀河:雑誌の表紙、テレビのバラエティ、SNS、ドラマ、舞台


銀河:彼女を見かけない日なんてなかった


銀河:うるははこの2年で躍進を遂げていた


銀河:自分の夢に真っ直ぐだったうるはは自分の夢を叶えていたんだ


銀河:写真で見るうるはは美しい。


銀河:メガネを外した姿はどこの誰より綺麗だ


銀河:僕はこんな彼女と共に過ごせた事を誇りに思う


銀河:僕は筆を走らせる


銀河:君への思いも、君への後悔も、全部物語になる


銀河:僕が言葉に出来なかった代わりに、物語が言葉にしてくれる


銀河:愛した日々も、名残惜しい別れも、嘘をついた自分も


銀河:僕とうるはが過ごした日々は決して無駄なんかじゃない


銀河:この物語の二人も、自分の気持ちに嘘は付かず、ずっとそばにいて欲しかった


銀河:痛みを半分に幸せを2倍に出来る関係


銀河:この関係では、僕とうるはのように離れてしまう


銀河:この物語のタイトルはなんて付けよう?


7話に続く

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