第36話 機械仕掛けの再契約

『マスター、本気…ですか?』


「本気だ」


『でもマスターには理由が無いですよ?』


「理由ならある。俺はもうお前達にとっくに魅了された」


『魅了?』


「お前達の強さに、能力に、可能性に、俺は惹かれた。だから俺がお前達を最強にしてやる!」


真っ直ぐ彼等を見つめる。


「返事は!?」


『…はい』


玄野が答えた。その声はどこか嬉しそうで、どこか照れくさそうだった。


『マスター、なら我々からマスターにお願いがあります』


後ろから声をかけられる。振り向くとそこには丸みを帯びたフォルムの白い機体が立っていた。


『私は"機械仕掛けの防御機ジム・エクスマキナ"よろしくお願いします』


「よろしく。で、お願いっていうのは?」


『クロノス様の身体を奪い返して欲しいのです』


『ジム!』


玄野が声を上げる。


『クロノス様、これは眷属全員の意見でもあります』


「それで?」


『1000年前、我らは戦争をしていました。戦争は激化しましたがクロノス様の力で何とか優位に立っていました。しかし、途中で参戦して来た異界神に不意を突かれクロノス様は身体を奪われてしまったのです。どうにかマギアはどうにか逃げられたようですが…。しかし、その戦争で主戦力であったクロノス様が戦えなくなってしまった状況で我らは各種族の長である鎖の者達に封印されていってしまったのです』


なるほど。それで今の状況って訳ね。


「じゃあ、お願いっていうのはその異界神って奴から玄野の身体を取り返せば良いって事ね?」


『その通りです』


「分かった。引き受けるよ」


『マスター!異界神は危険です!いくら我々の封印が解けたとはいえ、危険過ぎます!』


「いや、まだ封印は解け切って無いだろ。お前の身体が戻って来てやっと機械仕掛けエクスマキナの封印が解けるんだよ」


『…分かりました。でも知りませんよ?危険な目に遭っても』


「じゃあ、そん時は助けてよ。俺チェインしかできないし」


この時機械仕掛けエクスマキナ達は思った…お前戦えないのかよ!


『はぁー、分かりましたよ。分かりました』


いやー頼りになるねーこの相棒は。


話がひと段落した後、ゴゴゴゴ…という地響きが起こる。


うっお、何これ。


『ようやく起動しましたね』


「何が起動したの?」


『"機械仕掛けの街ブルーノート・エクスマキナ"です。この街自体が身体の金属生命種ですよ』


いや街全体ってデカすぎだろ!


そう思っていると何と街自体が宙に浮き出した。


どんどんと高度を上げていく。いやこれこの街の住人どうするのよ。急に空に上げられて…。


『そんな事は私の知った事ではありません』


玄野はツーンと答えた。一応まだ根に持ってるのね。


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とある森にて、鎖の称号を持つ者は一様にその力の解放に気づいていた。


三つの影が揺らめく。


「今の感覚、気づきましたか?花鎖」


「はい。封印が解けた…」


「龍鎖がいながら何をやっているんだ!」


「怒ってはいけません、蟲鎖。今は龍鎖の安否を確認しましょう」


「でもよう…霊鎖…」


「そうですね。今は状況の確認が最優先です」


「早急に各種族の長と連絡を取らなくては」


==================================


暗い城内の一室にて玉座に座る者はグラスを傾ける。


「ほう…遂に封印が解けたか」


その者は扉を開けテラスに出ると月を眺める。


「これから楽しくなりそうだ…」


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機械仕掛けエクスマキナ達が自我を取り戻した為、奴隷から解放され、この街の住民は混乱していた。


「おい!何処へ行く!」


『…』


街の金属生命種は皆、機械仕掛けの街ブルーノート・エクスマキナの指示に従いこの街の人間達をバレッサへと送る。


機械仕掛けエクスマキナは空を飛べるやつが多くすぐに作業は終わった。


時には「降ろせ!この街はワシらの街だぞ!」と騒ぐ輩がいたが、そういう奴らは地上では無く海に落としてやったら静かになった。


分かるよ…紐無しバンジーは怖すぎて声出ないよね…。


そんなこんなでこの街から人間が居なくなったので開発を始める。昔はこんな古くさい感じではなく、もっと近未来的な街だったらしい。


皆んなが作業してる間暇だなーと空を眺める。


手伝おうとすると俺はマスターだから座ってて良いって。それに俺がやるより彼等が自分でやる方が圧倒的に作業効率が良い。一目で長さを測定できないし計算もコンピューターなみだ。それに俺の手にペンチはついてないからね。


『マスターはどうして居るんですか?』


『え?俺いたらダメなの?』


こいつ無意識に心を抉る言い回しをして来た。


『マスターとの契約は既に解消されています』


「言ったでしょ。俺はお前達と居たいって」


『そんな事は言ってません』


「言ったじゃん!言葉の意味を理解してよ!」


『私は機械なので人間の感情は分かりません』


「嘘じゃん。めっちゃ感情豊かじゃん」


『これでも昔はもっと機械的だったんですよ』


「へー。どんな感じだったの?」


『例えば…』


「うん」


『森を焼き払ったり』


「え?」


『戦争中、相手の武器を奪って改造したり』


「…」


『世界を滅ぼすぞって脅したり…』


「やばお前」


俺もしかしてやべー集団解放させちゃった?


『今はもうしませんよ。あの子達の声を聞いて目が覚めましたから…』


「そっか」


あぶねー!これでまた戦争起きてたら俺まで巻き込まれる!


『マスター。嬉しかったです』


「何が?」


『これからも一緒に居てくれると言ってくれて』


「何だ?デレ期か?」


『そういうところは病気だと思うので治してください』


酷い…。ご主人様に向かって言う言葉じゃない…。


『マスター…もう一度、私と…契約をして下さい』


「いいよ」


『契約を…締結します。依然、リアン・ミーサークをマスターと定め我等金属生命種はリアン・ミーサークの指揮下に入る事を宣言、契約内容は機械仕掛けの歯車時計クロノマギア・エクスマキナの体を取り戻すこと』


「じゃ、これからもよろしくー」


『よろしくお願いします。マスター』

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チェイン 旅人 @tabibito1

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