第35話 機械仕掛けの鍵
はーまた負けたわ。
サリアは少し落ち込んでいた。
そこにリアンが近づいて来る。
「めっちゃ楽しかった!」
リアンは純粋な感想を言った。
その言葉にサリアは一瞬目を瞬かせ「そうね」と返した。
「お前めっちゃ成長してるな。あそこ攻撃しないのはびびった」
「結局正解は攻撃するだったみたいだけどね…」
「いやでもあそこで"アリシア協定"使わなかったのは騙された。使ってくれる読みで俺も相打ち取らなかったのに」
「そ、そう?」
サリアは照れるように聞き返す。
「うん」
私も少しはリアンに近づけてるのかな?そう思うと私の気持ちは高揚するのを感じた。
私はリアンに褒められて嬉しかったのだ。そう思うと自然と笑みが溢れていた。
「はい、じゃあ俺が勝ったから鍵ちょうだい」
そう言うとサリアのデッキからカルナが出て来る。
「チッ約束は約束だ。王として反故にする訳にはいかない」
カルナはそう言ってコネクトを集めると一つの鍵を生成していく。
出来上がった鍵は白く、持ち手に球体が付いていた。玄野と同じように青い光のラインが入っている。
俺は鍵を受け取る。
するとカルナと同じようにクオンタムが外に出てきた。
『マスターお見事です』
俺のチェインを見て俺を認めたのか?チョロい奴め。
『ここにもう用はありません。早急にボルムトに帰りましょう』
「そうだな」
クオンタムが差し出した手のひらに登る。
「リアン!私も連れて行きなさいよ!」
「ごめん。俺やりたい事できたんだ。だから連れて行けない」
「それは私が居たらできない事なの?」
よくよく考えるとそうでもないな。
「駄目だサリア・コンティノール。お前を危険な場所に行かせるわけにはいかない。それに
酷い言われようね。金属生命種と過去に何かあったみたいだけど…相当深そうな因縁ね。
『では、我々はこれで失礼する』
クオンタムがそう言うと背からブースターを噴射しながら山を下る。
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リアンが去った後、別動隊がようやく到着したらしい。
「はぁーはぁーはぁ」
そこにはサリアの父が荒い呼吸をしていた。
「大丈夫かサリア!?襲撃を受けたと聞いたが!?」
「ええ。大丈夫」
「しかし何があったんだ?急に襲撃だなんて」
「それは我が説明しよう。襲撃者は
「戦ったのか!?」
「戦ったわ」
「大丈夫だったのか!?怪我とかしてないか!?」
「だから大丈夫だって!」
サリアの語気が少し強くなった。少し鬱陶しかったのだろう。
「幸い、チェイナーなどの類は使っていなかったのでな」
「しかし、その少年というのは一体誰なんだ…。ここに来ていた軍人も皆やられている」
「知らないわ」
「ぬっ…?」
カルナが訝しむようにサリアを見ると物凄い形相でカルナを睨んでいた。
「顔は見えなかったのか?」
「見えなかったわ。フードを被っていたから。ね?」
「う、うむ」
カルナはサリアの迫力に少し気圧されていた。
「そうか…。目的は何だったんだ?」
「封印の鍵を奪われた」
「封印の鍵?」
「
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俺達はボルムトに戻って来ていた。
鉄の墓場に到着するとクオンタムは鉄屑をどかしていく。地面が見えるまで時間は掛からなかった。出て来たのは地面に備え付けてある地下室の扉だった。扉はかなり古いのか錆び付いており開けるのが大変そうだったがクオンタムの力で一発で開けた。
扉の先は螺旋階段になっておりかなり深くまで繋がっているみたいだ。
クオンタムは体がでか過ぎるためここで待機だ。
「玄野、これ何処に向かってんの?」
『この街の中心部です』
それからはただ下に降り続けた。途中から暗くて見えなくなって来たので玄野が灯りを付けてくれる。
頼れる相棒だ。
どれくらい降ったか分からないが、かなり深い所まで降りて来た。
『こっちです』
玄野が鎖で方向を示す。俺はそれに従い平らな地面を進んでいく。
少し歩くと行き止まりにたどり着いた。
『ここです』
どうやら目的地はここらしい。何も無いみたいだが…。そう思い壁にライトを当てる。
壁には電線のようなものや回路みたいなものが張り巡らされていたがもう使えなそうだ。
『壁の中心を見て下さい』
玄野の言う通りにライトを当てると鍵穴のような穴が空いていた。
『そこに鍵を』
白く機械的な鍵を差し込み…捻る。
…。
静かだ。
「何も変わってなくない?」
『地上に戻りましょう』
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地上に上がると…何と鉄屑の山が動いていた。
『マスター、ありがとうございます。これで
玄野の声は震えているように感じた。
ガシャン…ガシャンという音が周囲に鳴り響く。
変形していく鉄屑は体を再構成するように見えた。
殆どの鉄屑達は形が安定してきたがどうやら一部が欠損している者は体が安定していなかった。
俺はそいつらに鞄を開け使えそうな物を探す。するとそいつらは一気に鞄の中に入っていくと俺の未来の便利アイテム達を根こそぎ持っていってしまった。
「あ!俺の万能ペンチ!」
あー!あれめちゃくちゃ気に入ってたのに…。
『元気を出して下さい。また作ってあげますから』
玄野が慰めてくれる。また作ってくれんならいっか。
すると一体目の
砂埃が舞う中、青い一つ目が光る。
『よお!あんたが封印を解いてくれたマスターかい?』
玄野やクオンタムとは違い軽い口調で話しかけて来る。
「一応」
『俺は"
喋りは軽いが電子音だ。
「おう、よろしく」
俺はその異様さに驚きを隠せないでいた。
クオンタムと同じくらいの大きさ。青く光るレンズのような一つ目。体というより機体というべき骨格。頭は鷹の装飾と口の中に目があるようなデザイン。そして…白く美しい。
それは正しく白いロボットであった。
これが本来の
一機目を境にどんどんと機体が俺を囲むように立ち上がる。
その中にはあの日地に倒れ伏していた"バイコード"の姿もあった。
『マスター、"
"
「俺の万能ペンチ!」
『そうでございます。足りない部品を分け与えて頂きありがたく存じます』
「いやペンチが有効活用されて俺も嬉しいよ」
"
『よし、ここにいる者は全員封印は解けたか?』
クオンタムが声を上げるとそれぞれが一様に返事をする。
『我が眷属達よ体と自我の復活おめでとう。私も嬉しく思う』
玄野が声を出すと
『顔を上げ、立ち上がれ。再び戦う時が来た。我らはこの3000年間、辛酸をなめて来た。しかし、今、封印は解けた。』
玄野から深い怒りを感じる。
『──復讐だ!この世の種族全てを滅ぼす』
──しかし、その言葉に賛同する者は誰一人としていなかった。
『お言葉ですが、クロノス様。もう戦争は…よろしいのでは?』
『何を言っている。ガンホーク!』
『我らはあの戦争で知ったのです…。戦争では何も手に入らないと』
『バイコード…。しかし、それは戦争に、負けたからで…』
『いえ、勝ったとしても我々の未来には滅びしか無かった…。クロノス様は分かっておられたのでしょう?』
『…』
玄野は黙ってしまった。
『我々は貴方様が生きているだけで充分幸せなのです。異界神との戦いでは皆、クロノス様が死んでしまわれたと思ったのです』
『…』
玄野は何も答えない。
「玄野…」
『…なら…なら!私のこの怒りはどうすればいいのですか!?』
玄野が初めて怒りの感情を見せた。今までも怒ったりした事はあったがあれは会話の範疇だった。
『1000年も…1000年も我が子らが奴隷として扱われる事に、私が!私がどれだけ耐えて来たと思っているのですか!』
それは悲しみだった。
『いくらあの人間共を殺してやりたいと思ったことか…!いくらこの世界を呪ったことか!』
それは怒りだった。
『なのに…貴方達は!戦争はもういい?ふざけないで下さい!なら、私のこの1000年間は…何だったと…言うんですか…』
玄野の語尾が小さくなる。
『私は…私はこれからどうしたら…』
「じゃあ俺について来れば?」
『え?』
「俺、やりたい事あるって言ったでしょ?俺はお前達が何でこんな状況になったのかも知らないしあんまり気になん無い。でもお前達が馬鹿にされてるのは頭に来た。どいつもこいつも金属生命種は弱いだの使えないだの。俺はそれを変える。」
それは決意だった。
「俺が世界に示す」
それは俺の夢になった。
「
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