末文
末文 三つ脚の烏 1
*
初夏の頃、
こつり、こつりと
宮を囲む城壁の最北に位置する
右後方には禁軍の兵舎、左後方には文官の官舎、更にその背後には、
玉座の間があるのは、その
それは、巨大な
その宮の内にこそ、白玉の
名を、
簒奪という大政変が起きたのは卯月。今から二ヵ月前の事になる。
本来、在籍年数も浅い新参の一武人に過ぎない彼が、ここまでの偉業を成し遂げるなど到底あり得ぬことだ。何故こうも
更にその心象を強めるのが彼の両眼だ。
一直線に刃で
こつこつと剣先が石床を叩くのはこの為であった。
――
中の様子を聞く。異常はない。
鸞成皃は警備兵に少し下がるよう
扉の前で、鸞の頭が三度下げられる。次いで三拍手が打たれる。
柏手を打った右手首には、血の赤黒く凝り固まったような色をした数珠が巻かれていた。その手が打たれる
すると、ちりん――と鈴が鳴る。
鸞は両開きの扉に手を掛けた。僅かに、ぴり、と痺れが走る。
「白い玉様、白い玉様、白い玉様。本日のお参りを申し上げます」
言い終わるや否や、鸞成皃の身が飴細工のように引き伸ばされ、その場から姿を消した。警備兵の眼にはそのように映る。しかし彼等は既に何の感慨も
月の宮へ入る方法は二つある。
一つはそのまま開扉する。
この方法でならば、
もう一つが――白玉の参拝作法で開扉する。
この方法でならば、『真名』が繋がれている異空に入る事ができる。
後者の方法で宮に入った
「やあ―――――
直衣姿の青年は
「よぉ、鸞成皃閣下。その様子だと、どうやら順調に進んでるみたいだな」
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