84 八咫とお前とで話を着けて欲しい
重苦しい。そして、苦い。きつく閉じた
「――
間のどこかで、がちゃり、と
「お前等が知っているかどうかは知らんが、
どこかで、誰かの吐息が落ちる。息を詰めていたものが、そこで零れ落ちたのだろう。
「「識」が入れ替われば、その肉体は神の領域のものとなる。だから、「真」の寶刀で肉体を切り分ける事が可能になるんだ。そうして分割された肉体を、各邑の参拝によって邑人に削り取らせて増殖による破綻を遅らせる。あれはそういう仕組みだったんだ。――そして今現在、否、この八年、青は、その三日三晩かけて行うような莫大な力の譲渡と同等程度の力を、その身に引き受け続けている状態なんだよ」
「梶火」
名を呼ぶ
「なんだ」
「それは、
「今はな。だが、この先は分からねぇ」
「この先って、白玉の継承が起こったら、と言う意味?」
梶火は背筋を
「破砕牙を顕現している奴がもう一人いる」
「は⁉」
叫んだのは
「そんな馬鹿な話があるか⁉」
「――どうしてそう思う」
「決まっているだろうが⁉ それは――っ」
叫びかけて、悟堂ははっと引いた。
「それは?」
梶火は、静かに悟堂の目を見た。悟堂の
それはまるで、
「師範。なぜ決まっている?」
「お前、それは――」
「それは、破砕牙を顕現できるのは、四方津と
悟堂の目が――泳いだ。
迷いのない梶火の目が、悟堂の内に例えようもない嫌悪と不安を掻き立てる。強制的に
「
「――――――なに」
「八咫だよ。あいつの中にも破砕牙がある」
「そんな――そんな、馬鹿な話が」
「本当です」
横から小さな声が届いた。悟堂が目を向ける。声を発したのは
「お話に割って入る事をお許しください。
微かに、その手に
「この結果、
「そんな、ことは、有り得ない」
口元を
「仙鸞とわたくし共が
騎久瑠の断言に、悟堂は震えた。
これは――己の知る事をあまりに多く越え過ぎている。こんな事は、こんな事態はありえない。
ありえないはずだ。
「師範。八咫になんで破砕牙が顕現したのかはわからねぇ。だがな、それが事実なんだ。そしてあいつは方丈の『真名』の贄になる。それが実行された時に――青と二分して顕現していた破砕牙がどうなるか――」
食国の喉が、高い音を立てて息を呑んだ。
「梶火っ――まさか」
「絶対にそうなるとは断言できる段階じゃない。だが、白玉に宿った瓊瓊杵を継承した訳でもない現時点で既に、万を超える妣國の民の目覚めの暴走を緩和する程の力が八咫一人に顕現している。ここから推して知るべしだろうが」
梶火の言葉には頷けるだけの物があった。だから――食国は言葉を失った。
「なあ食国。お前が玉座に
苦しい声が、懇願の形となって押し出された。
そこで
「八咫と、って、梶火」
「今のあいつの立場なら、寧ろあいつの麾下達に聞かせた方が賛同を得やすいかもしれねぇ。恐らく八咫は自分が贄になるって事を麾下達にも隠してる。じゃなきゃ今頃禁軍はもっと混乱しているはずだ」
「ちょ、ちょっと待って梶火。お前何言ってるんだ? 八咫の麾下って、それは何の話だ?」
そこで――
「食国、お前何言ってんだ?」
「なにって……」
話が
「玉座の簒奪を為した大将軍が贄になるってんだぞ? その下に就いた禁軍全軍が黙ってはいそうですかって受け入れる訳がないだろうが。下手に事が逆転したら、奴等まとめて逆賊だぞ」
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