82 無花果
*
いっそ
二次性徴を
そして、この交を決定するのが「識」である。どちらか一方でも「識」が拒否をしていれば交は成立しない。これは種の拒絶と
しかし
種に
そして、五邑の交が成った時に「識」に現れるのは色彩などではなく、より具現化された映像になる。
真っ直ぐに伸びる大木に、ぎっちりと
食国の目は、絡みついている方の木を
俗に
いたたまれず、食国は奥歯を噛み締める。
「識」、それ即ち魂が支える個の意志と同義。そして魂とは心気だ。
夜見は、魂で相手を定め、それが核に反映される。
五邑は、脳で相手を定め、それが魂に反映される。
食国は、実際に五邑の交が成っているのをこれまでに見た事がない。二次性徴前には見てもその判別が付かないからだ。だから、この二人が他と比べてどれ程に強く結びついているのかの比較は出来ない。しかしそれでも尋常の物ではないというのは分かる。
そして、それを目の当たりにした
「食国」
「――なに」
悟堂を真っすぐに見据えたまま名を呼ばわってきた梶火に、食国もまた視線を向けずに応えた。
「
「……それも知っているんだな」
「だから言っただろうが。お前等も悠長な事を言っていられる事態じゃねぇって事は先刻承知しとると」
「――交渉事は皆無だなんて生温い事をいう気もない、とも言っていたな」
「よく聞いてるじゃねぇか」
ふっと笑うと、梶火は腕を組んだ。
「八年だ」
「――ああ」
「八年かけて俺達は外堀は
ぎろりと、鋭い眼が食国のそれを射る。
「――だがな、もう事はそれじゃ済まねぇ」
低く静かな声が、ゆっくりと語り上げて行く。
「各集ごとにその
梶火は両の拳をぐっと握った。
「問われるのは誰が玉座にいるかではなく、実質の天意を掌握できた者が誰か、だ。そいつこそが本当の覇者になる。――それが誰になるのか、誰が覇権を握れるのか、それを決められるのは実際に動いた奴だけだ。そいつだけが本当の意味での本懐達成に至れる。俺は――」
「――それはつまり、僕に
食国の、その静かな問いかけを、梶火はただ静かに聞き、そして「そうだ」と肯定した。
「お前に真にそれがあったなら、八年前に全てを利用する覚悟で事を決していたはずだ。それこそ、
厳しい断言に、食国はふっと
「そうだな」
「公⁉」
食国の
「僕はもう、己が
梶火は、大きく息を吸い込み、吐いた。
「分かってる。民の命を守りたいのは俺も一緒だ」
ややあってから、梶火は食国の方へ向きを変えた。
「――交渉事があると、俺は先に言っておいたな」
「ああ」
「なあ食国。相手がお前だからこそ、俺はもう腹芸はせん。俺は――
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