78 お前が後悔する事になる
母を使者として
はじめ、
結果はまさかの即断であった。
母と酷似した容姿に育った食国を、素戔嗚はひどく喜んだ。
食国の祖父に当たるこの男神は、非常に
異物には警戒と恐怖が
しかし、彼は母を使者に立てる事を一先ず許し、その為の同行の護衛をいくら使っても構わないと言った。いくら母に似ていたとは言え、こうも
素戔嗚に対して
彼の姿は、
「俺が勝手に行きたいと志願してヘマしただけだ」
事態が急転直下に
またしても白浪に激震が走った。濡れ衣を着せられたと理解した白浪が真っ先に疑ったのは矢張り
その報せの意味を
実際のところ、白浪が使者を送り込んでまで最終的に
『環』で繋いだ
急ぎ使者を飛ばしたが、伊庭と母の安否不明が長く続いた。
白浪は急ぎ仙山大本営の状態を確認に走らせた。これは
完全なる破壊である。
またしても白浪は出し抜かれたのだ。誰しもがそう悟った。
食国は血相を変え、宮廷内の確認をしようとした。しかし、食国が契約をした「神域眼」の者とどうしても繋がらない。つまり、その者の安否も不明だったのだ。母達の無事は確認できない。不穏を
食国は荒れに荒れた。
広間で叫ぶ食国を見兼ねた臥雷が、その身体を担ぎ上げて己の自室に放り込んだ。なるべく使うつもりはなかった『環』をこの時だけは使わざるをえなかった。これ以上の
その瞬間、食国の中で限界の糸がぷつり、と途切れる音がした。
臥雷の目に映ったのは、自身の体を
馴染みの薄いその行為の意味を、臥雷も話しの上でだけは聞いていた。が、実際にそれを目の当たりにし、ようやく生物としての性質の違いを理解する。
食国は、
目指した事の
また、目の前にあると信じてきた
臥雷の手が食国の髪を静かに撫でた。その手と胸にただ縋った。泣いても泣いても涙が枯れない。こんなに全身が重いのに、どれだけ泣いても重苦しさは
きつく抱き留められる事でしか、体の輪郭を保てない。
耐えられる限界を超えていた。
今ここに生きている事を確かめたかった。
臥雷の首に両腕を絡ませる。その時確かに食国は他者の肌を求めていた。臥雷は、苦し気に眉間を歪めると、微かに震えながら首を横に振った。
「――お前が後悔する事になる」
臥雷は食国の頭の上から薄布を被せた。一枚を介して額に、瞼に、耳元に、幾つもの口付けが落とされる。布がするりと引き下ろされた後、臥雷は苦し気に、静かに食国の額に自身の額を合わせた。
「まだだ、まだ何も分かってないだろう。
臥雷の右手首で『環』の
部屋に辿り着くと、食国は、静かに後ろ手で扉を閉めた。
母達の一先ずの無事は
その目は、ただ静かに近く迫りくる
もう崩れている
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