8 赤心
62 腹を括れ
眼を眇めるのは陽光の為ばかりではない。海上の風は
衣服の風に
全ての決着が
一羽の鳥が視界の
知るべきでありながら知れず、
彼は自身の任に
そう。八咫が既に帝壼宮にいる。
梶火の頬に皮肉な笑みが浮かぶ。
禁軍大将軍様の
「――ほんとうにな」
我知らず、小声が漏れた。
何時の間にか
白玉の継承に付随する懸念は、当然熊掌にも付きまとっていた。
何故か。
それは、
かつて
この帰還のためには黄泉比良坂を繋ぎ、道を開く必要がある。繋ぎに必要なのはあくまでも「天照の命令とその受諾」でこれは達せられた。瓊瓊杵の顕現は必要ない。これを欲しているのは
と、梶火の隣を、一羽の鳥が高速ですり抜けて行く。名も知らぬ鳥だ。一瞬の動揺が走った。
「大丈夫か?」
右隣から問うてきた
大きく息を吸い込む。
――今までは思考の
身を切るような思いだが、皮肉にも
白玉を繋ぐ五つの『
そう。あと知るべきは、如何にして黄泉比良坂を開くか。この一点なのだ。
そして得るべきは、瓊瓊杵の関与なしに素戔嗚を引きずり出し、これを捕縛する手段だ。これこそ正に、今回梶火が
つまり、熊掌に関わる事は全て終わっている。白玉の継承はもう不要な事となった。八重は無論の事、熊掌も白玉に獲られる事はないはずなのだ。
未だ五邑に把握されていない情報が残るのは、
そうすれば、黄泉比良坂の開け方もどちらかで必ず分かる。
梶火は自らの師の顔を思い出し、密かに歯噛みした。
あれが本当に方丈の四方津なのであれば、そこにある文書に何が記されていたのか知っていたはず。であれば黄泉比良坂の開き方も知っていたに違いない。七年の眠りは確かに大きく影響したが、そもそもあれは四百を生きた人間のはず。つまりは知っていて沈黙を守ってきたという事だ。
これを問い質さぬままではいられない。
梶火はもう、熊掌を失わずに済むならば他の多少の事には目を
――そのはずだ。
微かに口の端を曲げる。しかしそれでも、ついてゆかぬ感情がある事もまた否定できない。あの二人の再会が近いという事実が、理性で
いい加減、
そう己に
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