25 蔡浩宇
*
「ふぅむ」
と、疲労交じりの吐息が、男の口――いや、鼻から漏れ出た。
浩宇は、
壊れているのは家屋ばかりではない。壁の向こうに横たわる
ただ、臭かった。
今倒壊を
その事実に、ほんの
――ずっと、高熱に溶けた赤い鉄泥を飲み込まされているような、そんな心地で生きてきた。
浩宇は――顔立ち性格共に、一癖も二癖もある人物だと思われていたし、自身にもその自覚があった。彼は、彼の父親に非常によく似ていたし、父もまた祖父によく似ていたらしいから、家系なのだろう。年の離れた妹である
義弟に当たった
彼が
梨雪と寝棲の二人が出会ってから思い合う仲になるまでには
寝棲が親友である
それは重大な秘密であった。梨雪と寝棲以上に、口にする事を
しかし、彼等は事前にそれを
果たして、寝棲の帰投後、梨雪は彼の妻とする事を認められたが、事前に交渉を経ていた訳ではないそれは、却って二人の重荷となった。
保食の犠牲なしに彼等の婚姻は成立し得なかったし、また、結ばれる事のなかったもう一つの恋が己等の影で
結果、寝棲は『
契約を前提とせずに与えられた
そして、そのそもそもの種を
土埃と血腥さの中で、浩宇は懐かしい子守歌を
蓬莱の民は、既に逃走を済ませている。
だから、浩宇はずっと一人で邑にいた。
その後に舞い戻った
爆薬の作り方は保食から教わった。仙山にかつていた一人の少年から作り方を教わったのだと言う。そしてそれを文書の形で伝えてきたのだ。文字自体も彼から学んだのだという。保食が文書にして伝えてきた戦闘、戦略、武器に関する情報は膨大だった。彼女の中にあった
文書には、この火薬というものに
どうにもならなかったのは、浩宇が致命的なまでに手先が不器用だった事である。
どうやっても調合が上手くいかない。
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