24 天之尾羽張
この
保食は顔を上げると、真っ直ぐに
「大師長におかれましては、一点確認させていただきたい
つ、と月桃の眼が細められる。
「はい。なんでしょう」
「現在、
「何?」
隣で
「このような重大事、貴殿が大将軍より報せを受けていないはずがないと考えますが、
月桃は袖元で口元を隠すと、くすり、と一つ笑った。
「聞かれませんでしたので」
「そんな……!」
「でも、そんな
さしもの
「些末とは……! 月桃殿、万が一にも
麻硝は尚も言葉を
「そんなこと、貴方方が知ろうが知るまいが、今回の手筈と策に干渉するものではなかったでしょう?
「しかし!」
「疑念があれど
つい、と、口元を
「――貴方達だって、我々に全てを語っているわけではないでしょうに」
静かで冷たい眼差しが
「月桃大師長。貴方の所まででその話は伏せておけ、と言うのが、大将軍の思し召しなのですか」
「ふ」と月桃は笑う。
「まさか。彼は余計なおしゃべりが多いけれど文面では
保食は溜息を落とすと「
「お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。急ぎ
月桃は、心底愉快そうにくすくすと笑った。
「いいですよ。分かりました。お貸しいたしましょう」
月桃の手がぱん、と打ち合わされる。その掌が離れると共に、その間に
その全長は、
かちゃ、と物悲しい音を立てて、その剣は彼の手の上に舞い降りた。
「さあ、お待たせいたしました。これが唯一にして「
それは、予想に反して思いのほか特徴のない剣だった。
一見して細い
長らく
実際にそれを目の当たりにして、ようやく理解する。
ざわりと全身の毛が
と、月桃がするり、とその
「さあ、腕を出してください。お約束の『
何でもない事の様に言ってのける月桃に、麻硝が口を開きかけたのを保食は視線で制した。
「左腕でなければどこでも」
「よいお覚悟です」
にっこり、と表現できそうな笑みを浮かべて、月桃は満足そうに剣を下ろすと、ゆったり腰を曲げて保食の顔を
「先にお話しした通りですが、『
虜囚――と月桃は断じる。よくもまあいけしゃあしゃあと、と思わぬはずもなし。これからその『環』を使って保食を繋ぐというのだ。……
「
「大切な大切な、この世に一振りしか存在しない「真」の寶刀、
ぐ、と鼻と鼻がぶつかる程の近くに、
「貴女が死ぬのはどうでもいいですが、
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