序文 弐 巡行
乾いた
頭上に広がる
その先では、
今、璋璞は高台にいる。数名の
五千の歩兵に三千の騎馬。それが、現在の璋璞が率いている自軍の総数である。対する敵兵は、多く見積もっても二千に満たないだろう。はじめから相手になっていない。
――なんだろうな。
内心そう独り
今正に、天地がそれを分けて璋璞の眼前に突き付けているのだ。
間抜け
ぐっと唇を引き結ぶ。
囲いは永劫不滅の術ではない。故に、
朝が代わり、黄師の役務は五邑の監視へと変化した。後に、再び璋璞が如艶近くに
ちらと一瞬、璋璞は自身の背後へ
今正に、その背後でこの施術が行われているのだ。
禁軍と一言で言うが、本朝におけるその役割は大きく二分される。その性格の大半は国軍だ。五百万の内、凡そ四百五十は国家の守りとして機能している。これを指揮するのが禁軍大将軍
一方、その残数を預かり、本来の禁軍的在り様を残すものを任されているのが、右将軍たる璋璞だ。故にこの巡行に従っている。
その最中で、襲撃を受けているのだ。
戦況は――無論
だらしはないが、破れはせぬ。
如艶のための退路は担保されている。施術が終わるまで待てる程度には。璋璞自らが刀を抜かずにいられる程度には。
現在、
本来、
無論、連中は
その内に、一人尋常ならざる剛の者の率いる衆があった。
衆自体の強さはそれなりだったが、この頭目が
当然、将軍たる
この者は、一騎単独で後方にいる指揮官の元にまで飛び込んでくるのだ。
黄師も禁軍も腑抜けの衆ではないが、馬の上を飛んで渡るような鬼神の如きものには対応ができぬ。
左腕一本で大刀を振り下ろされたあの剣戟の重さは、他に経験した事がない。あれが散華刀であったなら、如何に
今対峙している反乱民の中にあれがいたならば、こうも悠長にはしていられなかったろう。
ふと
この名を
これの父親は
――
それは
そしてその子
結果、不死石の安置は絶対の義務となった。
――が、無論そう上手くいくものではない。
――そして、
天空を、一羽の黒い影が
それに視線を移す璋璞の胸に、もう一人の人物の影が去来する。
恐らくは、あの瀛洲邑長も同じなのだろう。
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