7 上邪
1 狐
蓬莱が
だだっ広い平地の中央を、一本の太く長い河が
蓬莱は、月朝の立場からすれば、
その在り様が――静かすぎるから、なのかもしれない。
どういった因果か、蓬莱からは
平穏と言えばそうなのだろう。不穏の気配を内包していても、そうだと言えるのならば、であるが。
そんな蓬莱の地に、この日、白髪
身に
「しばらくぶりだったな、
「
口上を述べつつ
ざわり、と、璋璞の背中と腹に寒気が走った。
思わず「うん」と咳払いした。
五邑の中で一早く風俗を
浩宇の
「
問いかけに、璋璞は首肯して見せた。
半年に一度、禁軍右将軍である
今は、弥生だ。
彼は本来、
蓬莱を流れる河川の上流域で大きな決壊が発生し、土石流が
蓬莱を監視する役の禁軍はその時近くになく、
宮城に呼び立てられ、久方ぶりに間近に相対面した
邸の内に通されるのは璋璞一人だけだ。浩宇は、門の外で拱手したまま動かない。狐の
邸の回廊には木の板が張られている。姮娥の多くの住居は
ちらと庭へ眼を向けると、
邸付の男の案内で、そのまま回廊を進む。目的の離れの目前に至ると、男もまたその場で拱手し、下がった。
その離れは、ここまで以上に五邑の風俗が色濃く残されている。ここにこそ『
璋璞は小さく息を吸い込んでから、眼を開くと
「
名を呼ぶと、
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