2 飴
「
「ありがとうございます」
額に玉のような汗を浮かべながら
「熱が高いな。
「いえ、そんなことは……」
「こんな状態であったならば、儂の来訪など断ってくれてよいのだ、保食。――顔だけでも見られて良かった。
そう言って立ち上がりかけた璋璞の袖を、保食の華奢な指先が
「そんな事を
上気した頬と
「無理を押して苦しませるのは儂の本意ではない。お主は朝にとって他に変えが利かぬ命なのだ。それに負担を
璋璞の言葉に、保食は切なげな眼差しを向ける。
「皇の為だけのわたくしなのですか?」
璋璞の唇が、微かに引き結ばれる。
「――保食」
その声音に含むものを何と受け取ったか、保食は苦し気に
「分かっております。愚かな女の
「保食」
「
自身の肩にしどけなく
自身がいつか、
――貴殿方の命はあまりに
共に生きられる生まれでも立場でもない。自身からすれば、この娘が生まれてからここまで育つのに有した時は
多くは
――
璋璞は保食の体をゆっくりと放すと、柔らかく微笑みながら
「以前、約束したものだ」
保食が受け取り包みを開くと、内からは個別に紙に包まれたいくつかの小さなものが
保食の瞳に、
「これが、あの時
「
璋璞の言葉の裏には、保食の身に何かあれば、
互いに想いを込めて
そんな事は、わかっている。
重ねた二十五年というのは、決して短い時間ではないのだ。
保食は
「ありがとうございます。大切にいただきますね」
「あまり長くは置いておかないように。溶けてしまう前に食べるんだよ」
「はい」
小首をかしげて、華やいだ笑みを浮かべた娘が――璋璞にはまぶしかった。
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