急章
序文
序文 壱 火山湖
――その夜、浜に降りる人影があった。
白砂に足を取られながら、静かに影は進んでいく。無言で歩む素足の下では薄い貝殻が割れ、ぱきり、と小さな悲鳴を上げた。
その
少し離れた場所から、長い白髪の主が自身の名を呼ぶのが聞こえた。振り返った。
葬送の許可をくれたが、一人では行かせられないと言って付いてきてくれた。貴方が悪い訳ではないでしょうと、二人でそう声を掛けてくれた。二人に小さく
彼等もまた、本当に、愛しい大切な子達だ。
素足で、水の中にちゃぷりと踏み入る。少しだけ息を
静かに、ゆっくりと、その生温かい水の中を進みゆく。膝までがすっかり
ゆっくりと、視線を下に落とす。
見下ろす湖の底深くには、青い
だが――とも思う。
だが、こちらの天は青くない。
だから、あれは別天地なのだろう。
恐らくは、あの天に浮かぶ青い大き星のような。
吐息を漏らす。――視線を、手元に戻す。
じっと
ふわり、ふわりと、波の狭間に紛れていく。
――ごめんね。
ごめん。ごめんなさい。
ちゃんとこの世に送り出してあげられなくて、本当に本当にごめんなさい。
どうして。どうしてかな。
どうして駄目なんだろう。何がいけなかったのかな。
教えて。お願いだから、誰か。
誰か、僕に教えて。
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