帰巣本能

星雷はやと

帰巣本能


「うわぁ……ずぶ濡れだ……」


 マンションのエントランスホールに着くと、濡れてしまった背広を脱ぐ。今日は朝から雨天だったが、昼過ぎに止んだ。すっかり傘の存在を忘れ、最寄り駅に降り立つと再び雨が降っていた。

 唯一の傘を会社に置き忘れ、コンビニで傘を買う気にもならず。一人暮らしである俺には、傘を持って来てくれる人も居ない。俺は鞄を頭に乗せ、濡れて帰宅したのだ。


「ただいま……」


 エレベーターに乗り、自宅のドアを開けた。


 カタッ。


 会社に置き忘れた筈の傘が、俺を出迎えた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰巣本能 星雷はやと @hosirai-hayato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ