石原慎太郎——汚染都市東京に青空を取り戻した男。批判も多いが結果も出した元都知事・石原慎太郎の一周忌によせて

たけや屋

【1話完結短編】今では綺麗な東京の青空も、かつては薄暗く濁っていました。

 今では綺麗な東京の青空も、かつては薄暗く濁っていました。昭和のハナシではありません。21世紀の平成中期まで、東京の空は本当に汚かったのです。


 ディーゼル車から吐き出される黒いスス——残留硫黄分のせいで東京の空は薄曇っていました。お天気の『曇り』ではなく、汚染物質だらけなので空が『濁って』いたのです。なので当時の東京の空は薄暗く、臭く、どことなく陰気な雰囲気でした。


 ではなぜ今、東京の空は綺麗なのか? 東京オリンピックのときに海外客から澄んだ空気を絶賛されたのか?


 都市環境が自然に良くなるなどあり得ません。

 人が汚した環境を、人の手で改善したのです。


 故・石原いしはら慎太郎しんたろう都知事のリーダーシップによって、東京に青空を取り戻したのです。


 ◆ ◆ ◆


【東京都のディーゼル車規制は、平成15年10月から実施され、平成18年4月に規制の基準値が強化されました。

 東京都環境確保条例で定める粒子状物質排出基準を満たさないディーゼル車は、東京都内の走行を禁止しています。


 規制の対象となる車種及び型式

 規制の対象は、ディーゼル車です。】


 ——東京環境局公式サイトより引用


 ◆ ◆ ◆


 関連業界となぁなぁのヌルい規制ではなく【排出基準を満たさないディーゼル車は、東京都内の走行を禁止しています】という、自動車業界と真っ向勝負の対決姿勢。


 なぜディーゼル車だけなのか? ガソリン車も規制しないで環境が良くなるのか?


 これには確固とした理由がありました。たしかにガソリン車も排ガスを出しますが、明確な事実ファクトに基づいて行われた政策です。都知事の個人的な感情でディーゼル車いじめをしていたわけではありません。


 当時(平成中期まで)日本の軽油は汚染物質が多く含まれていたのです。

 日本の軽油に含まれている残留硫黄分はおよそ欧米の10倍とも言われていました。当時を知る人なら、ディーゼル車から吐き出される黒い煙を覚えているのではないでしょうか。


 日本の軽油はそれくらい質が悪かったのです。だってその方が安く生産できるから。


 それに加えて『不正軽油』というものもありました。


 これは、軽油に混ぜ物をして量をかさ増しするというものです。当然不純物まみれなので、有害物質であるPM(粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)もマシマシ。不正軽油の製造販売は違法ですが、結構な量が流通していました。カネになるからです。


 なので石原都政のディーゼル車規制は主にふたつの柱がありました。


 ひとつ。ディーゼル車を強烈に規制することで、国や自動車業界、石油業界に圧力をかけ、改革を迫る。

 ふたつ。不正軽油を徹底的に取り締まる。


 石原都政は根気強く政策を進めました。


 当時、石原都知事はペットボトルの中に入った真っ黒なススを振り、

『1台のトラックが毎日これだけの量のススを吐き出しているのです!』

 そう言うと、中身を記者会見場にバラ撒いたのです。


 このニュース映像は世間に強いインパクトを与えました。


 圧力と交渉を織り交ぜ、国と業界と都民を動かし、ついには大気汚染を根本から解決したのです。


 自動車業界はディーゼル車のマフラーに排ガス抑制装置【DPF(ディーゼル・パテキュレート・フィルター)】を取り付けました。さらにディーゼルエンジン自体が改良されたことで、排ガスが出にくいものになりました。


 石油業界は軽油を改良し、汚染物質である残留硫黄分を徹底的に減らしました。根本から排ガスが出にくいものになったのです。


 やりゃあデキるんですよ。今までは金がかかるし面倒だからやらなかったってだけで。

 リーダーシップさえあれば環境すら変えられるんですよ。


 こうして現代人は都内で普通に青空を拝めるようになったのです。


 ◆ ◆ ◆


 当時の東京は空だけじゃなく、川もヒドいものでした。


 昼過ぎなどは、ご家庭からの排水によって川全体が泡立っていたのを覚えています。当然、近くを歩けば異様な悪臭。川沿いに住んでいた人などは窓を開けられなかったといいます。


 管理が行き届いていないような、個人が勝手に掘った用水路じゃありません。

 新宿区内を流れる一級河川・神田川での話です。


 今では魚やかもが遊ぶ神田川も、当時はこんな感じのドブ川でした。


 ◆ ◆ ◆


 昔の方が良かったというのは老害の代名詞ではありますが、しかし知事が実際に現場を見て、批判を覚悟で必要な規制をして、それで国や業界を動かして、実際東京の環境を改善した——というのは客観的にみて間違いなく『良かったこと』でしょう。


 自分は政治に対してそこまで潔癖症じゃありません。お利口さんだけど結果を出せない政治家よりは、多少カネ遣いが荒くてもきちんと結果を出している政治家の方がマシだという考えです。


 その点でいえば、石原都知事は毀誉褒貶ありましたが、間違いなく【結果】を出しました。


 東京都排ガス規制は、都知事がリーダーシップを発揮して国や業界を動かした。その結果東京に青空を取り戻したのは、紛れもない事実。


 一周忌にあたり、改めて故・石原慎太郎氏のご冥福をお祈りします。


 ※ちなみに、不正軽油の取り締まりは令和4年度の現在でも続けられています。

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