二、逢花謳歌
「
昇り始めた太陽が空を
「覚えてるかい、初めて会った日のこと」
老齢の嘉兵衛は夢と
「オレの元で死なれちゃあ何とも寝覚めが悪いじゃねえかと思って、首を括ろうとしていたアンタを止めたが、本当に止めて良かったよ」
昔を懐かしむように目を細める男の整った横顔が、朝日に照らされる。同じく照らされた嘉兵衛の顔には、幾つもの深い
「だって、アンタは咲き誇るオレを見事だと言い、
桜を見上げる人々の感嘆の声、宴席を彩る三味線や
「アンタと出会えて良かったよ」
嘉兵衛の老いた口元が、ほんの僅かに上がったように思えた。まどろみの中で男の言葉が届いたのだろうか。それとも陽光がみせた幻か。
「もう
男は手折った桜の枝を嘉兵衛の枕元に添えると、まるで桜吹雪に紛れるように消え失せた。
嘉兵衛は麗らかな春の日差しの中で、美しく咲いた桜と共に眠っている。
横禍負うか桜花追うか逢花謳歌 十余一 @0hm1t0y01
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