ウルトラな男
柴田 恭太朗
第1話
なんてこったって思ったね、その時は。
オレの苦手な旅行が大切な仕事のルーティンになったときのことだよ。
地球で聞き分けのないヤンチャな怪獣が派手に暴れだすたび、オレははるばる地球までの出張旅行をしなければならないワケ。
宇宙空間には迷ったとき飛び込めるフレンドリーな交番はないし、腹が減ったりノドが渇いたりしたときにフラッと立ち寄れるコンビニもない。旅の退屈をまぎらわすBGMもない。ヒマつぶしに自分で歌ったこともあるけど、ほら「ジュワッ」としか言えないからオレ。「ジュワワワ~」ってドゥワップのバックコーラスかっつーの。
なんてグチはこぼすけど、苦手な出張旅行は何度もした。だってそれがオレの大切な任務ってヤツだから。
怪獣をやっつけるのは爽快なんだぜ。いっとくけど、あの光線は快感だ。怪獣とくんずほぐれつ汗だくのレスリングをして、絶頂に達したときしかでないし。もちろん感情という意味においてだ。
それだけを楽しみに胸に抱いて旅行へ出かけたものさ。最後まで苦手だったけど。
そんなオレにも終わりの日がきた。
あれな、二本角が地球に来たときだよ。
生命のフィナーレを迎えたオレのところに、オレが一番大切にしている兄弟が花束を持って迎えにやって来た。
あのときは嬉しかった、ああこれでもう苦手な旅行をしなくて済むのかって思ってさ。
ウルトラな男 柴田 恭太朗 @sofia_2020
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