第9話

「やだよ! 哲司が子供の頃のわたしと頭の中で会話して、楽しんで、癒されているように、わたしだって、頭の中でいつもお話してる大事な人がいるんだよ。それを、現実の哲司に、邪魔されたくないの」

 がーんとした哲司の顔。仕方ないじゃん。もう、それぞれの時間を生きてしまってるんだよ。

「ま、まじか。だ、誰だよ? その頭の中で会話してる相手って?」

「誰にも言わないって約束できる?」

「ああ」

 よし、同じ状況下のわたしたちなら、きっと、わかりあうことができるよね。

「ベートーヴェンだよ!」

「……運命の?」

「そおだよ」

 あれ? 思った以上に、哲司は驚いた顔してる。なんでだろ、同じなのに。

「おま、頭、おかしいんじゃないの?」

 わかりあえるって思ったわたしが、馬鹿だったのかな?





                 【了】

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わたしの好きなベートーヴェン 雲のポテト @kumonoteinei

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