第39話 忍び寄る暗雲
「嘘…だろ……」
散らばった数珠を見つめる自分の口から漏れた声は情けないほど弱々しかった。
師匠が気まぐれだと言って作ってくれた守りの数珠。今まで何度もこの命を助けてくれたその数珠がこんな風に弾け飛ぶなんて…
「茂さん…?」
まだ幼い弟子が心配そうに私を見上げている。赤い瞳に浮かんだ深い恐怖の色を見て私は考えた。
本当なら今すぐにでもこの村から連れ出して安全な所に置いてやりたいが、山の神から役目を引き受けている彼を勝手に連れ出せば私も彼もどうなるか分からない。だが敷地の結界をいともたやすく超えてきた奴をまともに相手して生き残れる可能性はるかに低い。今回もこの数珠があったから運良く助かっただけだ。おそらく次はないだろう。
ならどうする?師匠を頼るか?
いや、だが師匠は……。となれば
私は弟子の後ろで丸まっている小豆に目を向ける。
小豆や私よりももっと力の強い存在を見つけるしかあるまい。
大きくため息をついて私は眉間に皺を寄せた。
小豆ですら十七年前に力を持つ存在を探し始めてやっとの思いでつい先日、初めて見つけたのだ。
小豆は今五歳。残された時間があと五年だとして…
それまでに…私に探し出せるのか?あんな奴らを相手にできるような力を持つ存在を
いや、
私はこちらを見つめる少年へ目をやる。
できるかできないかではないのだ。必ず探し出して私が…私が何としても彼を守らなくては。だから
「大丈夫ですよ」
そう言って彼の頭をそっと撫でた。
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