エピローグ

 あれから五年の月日つきひが流れた。僕とレインももう十五歳になる。結局、予定していた年月を大幅にしてしまったけど。

 それ件に関して、神様からは何処までも平凡へいぼんな僕と神様の力は相性が悪いからと返された。なるほどと納得なっとくする半面、僕はあきらめるわけにはいかなかったから必死に頑張って神様の試練を合格ごうかくした。

 神様曰く、その努力どりょくするという事も僕の平凡なところの現れらしいけど。やっぱり僕はどこまでも平凡らしい。

 けど、ようやく僕は合格した。皆の許へかえるんだ。

「れー、準備じゅんびは出来た?」

「うん、もう準備は万端ばんたんだよ!」

 帰る準備が出来た僕達のそばに、唐突に神様があらわれる。

「レイよ、よく頑張った。神として試練に無事合格したお前に何か褒美ほうびをやろうと思うのだが……」

「それは、僕が手に入れた永遠えいえんの寿命とは別に?」

「うむ」

 どうやら、神様はかなりご機嫌きげんなようだ。かなり気前きまえがいい。

 けど、とはいえ僕は特に神様に貰いたい褒美がある訳じゃないし。そもそもその為に努力をしていた訳でもない。えっと……あ!

「そうだ、この際だからいておこうと思うんだけど。神様が僕を気に入った理由って結局何だったの?」

「俺がお前を気に入った理由りゆう、か……」

「……………………」

 僕の質問には、レインも興味きょうみがあるのか傍でだまって聞いている。

 やがて、神様は考えをまとめたのか一つ頷いて口をひらく。

「まあ、理由はある。それはお前が平凡だからこそだ」

「平凡だから?」

「うむ、どこまでも平凡にもかかわらずお前の周りには人があつまる。最初はそのような才能か或いは特殊な能力があるのかと思ったが違う。お前は何処どこまでも平凡だ」

「それが、神様が僕に興味きょうみを持った理由ですか?」

「うむ、結局その理由は分からずじまいだったがな」

 なるほど?けど……

「その理由は簡単かんたんですよ?」

「何?」

 僕の返答に、神様は思わずといった様子で怪訝けげんな表情をした。どうやらレインも理由は分かっているみたいでうなずいている。

「僕が平凡だったからですよ。平凡だったからこそ、僕の周りに個性的こせいてきな人達が集まったんだとおもいます」

「……つまり、お前のまわりに人が集まったのはあくまでお前が平凡だったからと?」

「はい」

 そう、僕は凡人ぼんじんだ。そして、凡人だからこそ僕のまわりに人が集まった。その平凡さにかれて個性的な人達が集まってきたんだと思う。

 結局のところ、それしかないのだと思うから。

 しかし、神様としては何かひっかかりをおぼえているみたいで。少し考え込む仕種しぐさをして僕に問う。

「…………いやしかし、だとすればお前は良いのか?」

「何がです?」

「今回の試練で、お前は永遠の寿命を得た。それは一つの異常性いじょうせいだろう。とすれば、お前のアイデンティティである平凡性がうすれるのでは?」

「いえ、それはちがいますよ」

 僕の言葉に、神様は首をかしげた。どうやらまだ僕の事を理解出来ていない様子。

 或いは、最初から全てをる事が出来る神様たちばだからこそ理解しようとする能力が発達しなかったのかもしれないけれど。思わず苦笑をらす。

「例え、異常いじょうな能力や才能を手に入れようと僕は何処までも平凡です。根っこのところは何一つ変わりませんよ。何処どこまで行っても僕は僕ですから、人はそう簡単に自分の性質ほんしつを変える事なんて出来ませんよ」

「……なるほど?それも、そうか」

「じゃあ、そろそろ僕達はかえります。ありがとうございました」

「うむ、では帰りはあのいえで良いな?」

「「はい」」

 そうして、僕とレインを眩いばかりの光がみ込んで……

 ・・・ ・・・ ・・・

 気付けば、僕とレインは森の家のそばに立っていた。なつかしさを感じる暇はない。

 次の瞬間には、どたどたと家の中で走り回る音がこえ……

「レイ‼レイン‼」

 僕とレインに向けて、一人の少女がび出してきた。五年の間で色々と成長したようだけど、すぐに僕達は彼女が誰かを理解りかいした。ミィだ。

「ミィ、ただいま」

「ただいま、ミィ」

 僕とレインが言うと、心底からうれしそうに笑みをこぼしながら涙を流し一言。

「おかえりなさい」

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最強な彼女と平凡な僕と kuro @kuro091196

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