第23話、ずっと一緒

「ん、んぅ…………?」

 目をます。其処は山の頂上にある祭壇さいだんの傍だった。そうだ、僕は確か長老の出した試練にいどんで……

 えっと、僕は結局試練を合格出来たんだろうか?

 傍に居るレインが、僕が目を覚ましたのに気付きづいた。

「あ、目を覚ました?」

「……レイン?僕は試練しれんに」

「うん、合格したよ!私達、ドラゴン達にみとめられたんだ!」

「そう、それは良かった……」

 良かった。僕、試練に合格したんだ……

 けど、どうしてだろう?他のみんなが何故かくらい雰囲気なのは?試練に合格した筈なのにそんな空気くうきじゃない。

「その話だが、レイよ。貴様はレインとずっと一緒いっしょに居ると言ったそうだな?」

「はい、僕はレインとずっと一緒に居たいです。だから、この一件がわったら僕達は結婚けっこんしようと考えてました」

 そう、僕はこの一件が終わったらレインと結婚するつもりだった。レインと一緒に幸せな家庭をきずこうと考えていた。

 けど、どうやら他の皆はそれに何か感じているようで。まだ何かあるんだろうか?

「……ふむ、その件だが。貴様とレインがずっと一緒に居るのは不可能ふかのうだ。そして、その果てに必ずレインは深い絶望ぜつぼうを味わう事になる」

「……それは、どういう?」

 僕とレインは同時に首をかしげた。長老は頷き、言った。

「神の子とはいえ、貴様はただの人間だ。ただ何処にでも居る平凡へいぼんな人間だ。故に、竜種の血を引き永遠えいえんにも等しい寿命じゅみょうを持つハイブリットたるレインとは根本的にずっと一緒に居る事が出来んのだ」

「……………………」

「レインよ、お前は愛する男の死を前にえられるのか?レイよ、お前は愛する女を置いて先に死ぬ覚悟かくごはあるのか?」

「……………………」

「……そ、それは」

 長老の言葉に僕は黙り込み、レインは目を伏せかなしげな表情になる。

 確かに、その言葉は最もだ。僕はただ何処どこにでもいる平凡な人間。そして、レインは竜種の血を引くハイブリットだ。その寿命のちがいが後に大きく響いてくる。それは確かに大きいだろう。

 けど、其処であきらめるようなら僕はそもそもレインと一緒に居たいと思っていない。

 其処で諦めるくらいなら、僕は試練に受けてなんかいない。

「でも、僕は諦めません。かぎられた寿命があるなら、僕はそれをのこされた時間の中で必ず克服こくふくしてみせます。そして、必ずレインを幸せにしてみせます」

「れー……」

「僕は諦めません。絶対に、最後はレインと幸せをつかんでみせます」

「……………………」

 絶対に、レインをかせない。

 僕の言葉に、長老と他のドラゴン達が一斉に黙り込む。誰もが苦々にがにがしい表情をして僕とレインを見ている。

 しかし、次の瞬間空が眩い輝きを放ち空をって一人の男性が現れた。その男性を僕は知っている。僕を転生てんせいさせた神様、ケテル=アインだ。

 突然の神の降臨こうりんに全員が愕然と目を見開いている。

「神様……」

「よく言った、それでこそ俺が神の子として見込みこんだだけはある」

「至高神ケテル、か……」

 神様の降臨に、長老は苦々しい表情になる。だけど、対する神様は気にした様子は一切ない。彼等はどういう関係かんけいなのだろうか?

「竜種の長老、ハール=メギドよ。お前の言う懸念事項、解決かいけつする方法が一つある」

「……それは何だ?」

「レイが、俺の眷属けんぞくとして本格的な力をさずかれば良い」

 その言葉に、全員が愕然とした表情を浮かべた。ただ、長老であるハールさんだけが苦々しい表情をしている。

 一体どういう話だろうか?イマイチみ込めない。ただ、一つだけ理解出来るとすれば僕が寿命を乗り越えるのに必要なかぎを神様が持っている事だけだろう。

「神様、僕が寿命を乗り越えられる方法を知っているの?」

「うむ……ただし、必ずお前が乗り越えられるという保証ほしょうはせん。それに、その為にお前には最低でも一年以上は神の国である中枢世界にもってもらう」

「それは……」

「決めるのはお前だ。後は、お前の覚悟次第だ。出来できるか?」

「……分かりました。それでレインとずっと一緒に居られるなら」

 僕は神様の手をった。その横から、もう一つの手がせられる。

 僕と神様が驚いて横を見る、其処にはレインが居た。

「私も……私もれーと一緒に行きます。私もれーと一緒に居させて下さい」

「……良いのだな?一年以上は家族とえなくなるのだぞ?」

「はい、分かっています。お母さん、お父さん、ごめんなさい。私……」

 レインの謝罪しゃざいに、ドラコさんとクインさんは共に首をよこに振った。

 謝罪の必要は無いと、そう言った。

「お前は俺達のほこりだ、それはずっと変わらない。好きに生きろ」

「レイン、離れていてもずっとあいしているわ」

「はい」

 僕の傍にも、ミィとクロ、ハクが近付いてくる。少し、かなしげな表情だ。

「レイ、私も本当は一緒に行きたい。でも、きっと私達は此処からさきは行くべきではない」

「……それは」

 否定ひていしようとした僕に、ミィは首を横に振った。

「私はずっとっている。レイとレインが帰ってくるのを。あのもりの家で」

「……うん、必ず帰ってくるよ。クロとハクも、元気げんきでね」

「うむ」

「はい」

 そうして、僕達は互いに最後の挨拶あいさつを終えた。いや、最後じゃない。必ず帰ってくるから。そう決意けついを籠めて。

「じゃあね、バイバイ!」

 そうして、僕とレインは共に中枢世界へと旅立たびだった。

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