第二話『予測不能な』
放課後になり、いつも通りに本屋へ向かう。ただいつもと違うのはこれまで以上に緊張しているという事だ。告白を決意した昨日も緊張はしていたが、今日ほどではなかった。心子は心臓が飛び出してきそうな程の緊張感を持ちながら本屋に近づくと突然「あの」という声が耳に響く。そしてすぐに声の主が島風のものであることを理解する。そのまま振り返ると確かにそこに島風の姿があった。
「すみません、待ち伏せさせていただきました」
島風は自身の首筋に手を当てながら申し訳なさそうに小さくお辞儀をする。彼はいつもの本屋のエプロンを身につけておらず、私服姿だった。今日はシフトがない日だったようだ。心子は緊張で「いいいイエッ!!!」と変な声を上げるとそのまま彼は言葉を続けた。
「あの、昨日はありがとうございました」
「い、イエッ!!」
どうしても声がうわずってしまう心子だったが、彼はその反応に笑うことも引くこともしなかった。そして島風は思わず耳を疑ってしまうようなとんでもない言葉を繰り出してきた。
「良ければ今度、どこかへ出かけませんか」
「え、っ……」
「俺の連絡先はこちらです」
「ええっ……え」
「ああ、唐突すぎますよね、早まったかな」
「あ、え、えとっと……」
夢でも見ているのだろうかと疑うほどに、予想もしない展開が広がっていた。デートのお誘いに喉から手が出るほど欲していた連絡先、そして何より島風とこんなにも長く会話が出来ている。夢の三点セットだ。なんてついている日であろうか。心子は混乱しながらも喜びを噛み締めると「是非お願いします!」と勢いよく頭を下げた。一度も言葉をつっかえずに発せられた事を自分で褒めてあげたいと思うくらいに自然に声が出ていた。すると島風は「良かった」と安心したような笑みを向けてきた。かっこいい。そして島風は急に目を伏せながらこんな事を打ち明けてくる。
「昨日、あなたにファンだと言われてから気になってしまって……昨日からもうただのお客さんだと思えないんです」
そう言って彼は後頭部を掻いて僅かに顔を赤く染めている。心子は思いもよらぬ事態にただただ顔の熱が上がっていく。すると島風はそのまま言葉を続けてきた。
「だから、今度二人で出掛けたいんです。追ってまた、連絡しますね」
そこまで言うと島風は再び小さく会釈をしてからその場を立ち去った。心子は曲がり角を曲がって見えなくなった島風の残像を見つめながらその場に立ち尽くしていた。
(デート……デートってことだよね!?)
告白をして翌日。衝撃的な展開に胸を躍らさずにはいられなかった。
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